確かにこのマンガはすごい!『進撃の巨人』

このマンガがすごい!2011」で1位に輝いた『進撃の巨人』を読んでみた。

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(2) (講談社コミックス)

進撃の巨人(2) (講談社コミックス)

正直、少年マンガは『デスノート』を読んでから手に取っておらず、しかもこういうので1位になったものは基本的に食指が伸びないのだが、たまたまバイトの後輩が貸しますよと言ってくれたので、同ランキングで3位になった『さよならもいわずに』と一緒に借りたのだった。

今まで「『アイアムアヒーロー』がおもしろい!」とか「『GANTZ』がさいこーだ!」とか「『ザ・ワールド・イズ・マイン』がオールタイムベストだ!」と方々で言ってたわけだが、そうしたら必ず「ならば『進撃の巨人』がおすすめですね!」といろんな人に言われた。なるほど、読んでみてその意味がよく分かった。

いつの時代なのか、そしてどこなのか良く分からないが、中世ヨーロッパに似たパラレルワールドとおぼしき世界で、人間を喰らって生きている“巨人”と、その巨人に怯えながら環状の壁でかこった町の中に暮らす人々の話。

巨人といっても7メートルから15メートルほどの大きさで知性はまるでなく、なぜ人を襲ってるのかよく分からない。そのために巨人のことを調査するための兵士がいて、彼らには莫大な税金が投入されるが、町を50メートルの壁で覆ってるので、「がははは!巨人が50メートルの壁を越えられるわけないだろー。だいたいこうやって兵士が門番してるのは平和であるしょーこなんだぞぉ!」と兵士たちは毎日人目もはばからず飲んだくれているのであった。

ところがある日、そんな50メートルもの壁から顔を出すほどの超巨人が出現。「すわ!たいへんだ!」と思ったのもつかの間。一瞬にして壁は破壊され、そこから巨人がゾンビのごとくワラワラと大量に町に入って来る。蹴り壊された壁が隕石のように町に降り注ぎ、その破片の下敷きになってしまった主人公エレンの母は逃げ遅れ、エレンの目の前で見るも無惨に巨人に喰い殺されてしまった。

――――5年後、エレンは巨人を皆殺しにするため町を代表する兵士となった。彼は壁の外が見てみたいという夢を抱えながら、日々仲間たちとトレーニングに励むが、その夢を壊すがごとくさらに新種の巨人が次々と現れ始める。そんな中、エレンは激闘の末、仲間をかばって巨人に食べられてしまうのであった…………というのが大まかなあらすじ。

町が兵士だらけで、そこに巨人が次々理由も分からず襲って来るというのは去年公開されて話題になった『ヒックとドラゴン』に似ているし(と言ってもマンガの方が先なんだが)、ものすごく巨大な敵に対して、数人でピョンピョン跳ね回りながら協力して戦うというのは『GANTZ』っぽくもある。中世ヨーロッパ風の世界観と書いたが、どちらかというと町そのものや得体の知れないモンスターが外の世界にいて人間を襲うという設定は『ドラクエ』を下敷きにしてるかもしれない。理由もなく人間を襲って来る巨人の存在とその動きは『エヴァンゲリオン』の使徒や初号機を彷彿とさせる。

つまりこの『進撃の巨人』というのはありとあらゆるサブカルチャーからサンプリングしまくって出来た次世代の少年冒険マンガなのだ。しかも作者が若いのか取り込まれたものは近年の物ばかり。ゲームや映画、アニメ、マンガなどこれはおもしろいだろうと思ったもんを惜しげもなく投入し、それが隅々までギッシリ詰まっている。さらにこの手のマンガにしては珍しく、連載を引き延ばしてるようなこともない。故にスピード感と展開の早さと情報量が尋常じゃなく、それでいてあっという間に読めてしまうほどセリフの量は少ない。

詰め込み過ぎてしまったがために細かい所で気になる個所が多々あり、町の設定は細かいのに生活感がまるでないなどの弱点もあるが、そのへんも含めた作品の新鮮さはやはり買いたいし、それを吹き飛ばすかのようなバトルシーンの迫力は素晴らしく、巨大な何かと戦う主人公という設定はマンガだからこそよく映えるというのを再認識した。カットの割り方から何から努力の影が見られ、決め絵こそかっこいいが、動きを伝える力がまだ弱いのは仕方がないだろう。絵は確かにヘタだが一生懸命書いてる感じも伝わって、なんやかんや言っても好感を持って読んだ。

展開がおもしろく、特に2巻以降は完全に『エヴァンゲリオン』を意識しており、さらに先がまったく読めず、どんどん伏線も多くなっていくが、正直に言うとこれ中学生の時に読みたかった。よく『アイアムアヒーロー』と比較され、貸してくれた後輩くんも『進撃の巨人』の方がおもしろいと言っていたが、ぼくは『アイアムアヒーロー』の方に軍配が上がる。そもそも対象年齢はグッと『進撃の巨人』の方が低いのだ。もしこれを中学生の時に読んでいたらもっと夢中になっていただろう。小学生だったら『進撃の巨人ごっこなんてのもしてたかもしれない。いや、していたはずである。

これだけ話題になってしまうとどうしても続けざるを得ないだろうが、出来れば引き延ばさずにこのスピードでどんどん書いて、あっという間に終わって欲しいなぁと思うのであった。実際3巻くらいから引き延ばしにかかってる気が……

しかし『進撃の巨人』でググるとブログやTwitterで話題になったマンガと紹介されることが多くて驚いた。そういう売れ方の意味でも新世代の少年マンガと呼べるだろう。今なら巻数出てないからマンガ喫茶でも行って一回読んで、それでおもしろかったら買っても良いかもしれない。あういぇ。

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進撃の巨人(3) (講談社コミックス)

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