オヤジたちの宴『RED/レッド』

RED/レッド』鑑賞。

引退して年金暮らしをしている元CIAのスゴ腕エージェントが、CIAに命を狙われてしまうというお話。

それにしても『エクスペンダブルズ』しかり『特攻野郎Aチーム』しかり、今アメリカはいい面構えのオヤジブームなのだろうか。高齢化に向けて、オヤジも頑張ってるぜ!という流れが来たのかもしれない。かつてのスターが自分の年齢と向き合い、それをさらに魅力にしてイキイキと演じてる映画が矢継ぎ早に公開されて嬉しくなるしだいだ。ホストまがいの気持ち悪いイケメンブームに沸く日本も見習って欲しいものである。あんな前髪をいじくってるバカのどこがいいんだ。スクリーンに向かってキャーキャー言ってろドン百姓どもが。

さて、この『RED』だが、出て来る役者はオヤジばかりなのにもかかわらず、演出自体はかなり若々しい。それもそのはずで原作はコミック。いちいち舞台が変わる度に場所を示すためのギミックがCGによってクリエイトされるあたりがそれっぽく。全体的にハチャメチャでノリ重視。リアリティなどくそくらえ!ファック!と言わんばかりにとにかくやりたい放題やってるあたりが『特攻野郎Aチーム』にも通じるものがある。

予告編を見る限り、引退したオヤジ達が再び結集してチームとして活躍するのかと思ったが、意外とそんなことはなく、実際目立ってるのはブルース・ウィリスだけで、他はそこまで活躍するわけではない。なので、チーム萌えを期待すると肩すかしを喰らうだろうが、脇を固めるのがモーガン・フリーマンジョン・マルコビッチヘレン・ミレンアーネスト・ボーグナインといういずれ劣らぬ名優たちなので、要所要所の決めカットで魅せてくれる。特にヘレン・ミレンがパーティー用の衣装に着替えて、レストランでマシンガンをぶっ放すシーンはクライマックスのひとつだ。ジョン・マルコビッチLSDで脳がクラッシュしたという役なのだが、これが完璧。アーネスト・ボーグナインはまったく変わらないキュートな笑顔を見せてくれるし、モーガン・フリーマンはあいかわらずで、こういうおちゃらけた作品に出ても異常な風格があるのはあの声のせいなのだろうか。

一応映画は観客巻き込み型のサスペンス形式ながら、かなりオフビート。主人公が暗殺の天才という設定ながら、それを殺すために仕掛けて来るCIA側も容赦なく、コミックのようなハチャメチャさの中にプロ対プロのここまでやるか!という対決が随所にあって飽きさせない。プロット上のクリフハンガーは「なぜ、引退したCIAたちが狙われるのか?」だが、意外とその部分も良く出来ていて、オールドスター総出演以前に一本の映画として楽しめた。個人的にはアンジェリーナ・ジョリーの『ソルト』からドンデン返しを抜いたような印象すらある。

というわけで、『エクスペンダブルズ』や『特攻野郎Aチーム』に比べると若干劣る気もするが、元気なオヤジたちのイキイキした演技を見れただけでもサムアップ。メンズデーあたりでビール飲みながら見るといいかもしれない。あういぇ。