おくちぽかんなコメディ『ツーリスト』

『ツーリスト』鑑賞。特大ヒットと言っていいくらいの客の入りだった。さすがジョニデ&ジョリ姐。

マフィアのボスから金を盗み、さらに脱税の容疑で国際指名手配されてるアレキサンダー・ピアースは大金をかけて顔を変え、謎の男としてマフィアと警察から逃げ回っていた。そんな彼の恋人、エリーズのもとに「8時22分、リヨン駅発の列車に乗り、僕の体型に似た男を捜してほしい」という内容の手紙が届く。その頃、傷心旅行でベニスにやってきた数学教師フランクは推理小説オタクのさえない男。そんな彼の前に現われるエリーズ。エリーズに誘われるまま、ベニスの高級ホテルで一夜を過ごすことになったフランクだが、翌朝エリーズは消えていて、ルームサービスと一緒に現れたのはマフィアの殺し屋二人……果たしてただの数学教師フランクの運命は………というのがあらすじ。

ジョニー・デップアンジェリーナ・ジョリーというありそうでなかった二人の共演作。奇を衒わない王道中の王道とも言える演出はベニスの街並とも相まって、ツーリストのタイトルに相応しい映像を提供して、あたかもアンジェリーナ・ジョリーと危険な旅をしてるような感覚にさせてくれる。フランクを餌にして警察とマフィアをかく乱させる悪女アンジェリーナ・ジョリーもこれまでにない妖艶な魅力をふりまき、画面いっぱいに存在感をアピール。さえない男という設定のジョニー・デップはまったくさえないこともなくセクシーで、これだったら『ニック・オブ・タイム』の時の方が役作りとしてよかったじゃないか!と思わせてしまうところが残念だが、まぁヒットさせなければいけないことを考えれば仕方のないことなのかもしれない。

こちらが『ニック・オブ・タイム』のときのジョニー・デップ。さえないでしょう。本来彼はこういう変な役をやってたんだよ。

さて、この『ツーリスト』だが、とにかくずさんな出来である。何もかもが中途半端と言っていいだろう。アクションシーンは少なめで、それもさして盛り上がりもせず、謎解きみたいなものもサスペンドにはなってないし、そもそもマフィアと警察がとにかく無能で、掛け違えたボタンのようにあたふたする二組を見てると「この映画はコメディなのか!?」という錯覚すら覚える。というか、全体的に軽妙で、ハラハラする個所はひとつもなく、映画は最後の最後までツッコミ役がいないコントのようなやりとりを繰り返していく。

そんでね――――いやぁ――――まぁ――――なんともうしましょうか……オチがすごいんだよ!!

オレはあのオチにずっこけたね!イスからずり落ちそうになったよ。

というわけで、すべてが中途半端でオチにずっこける『ツーリスト』は観終わったあとに何も残るものはない作品だったが、それでもなーんか憎めない感じで。「いやぁあの映画とんでもない映画だったんだよ!」という風に話してしまうが、そのときのぼくの顔は何故かニヤついてしまっているのであった。

ぼくは21時からのレイトショーでビール飲みながら見たんだけど、そういう感じでニヤニヤしながら観る分には良いかなと。絶対におすすめ出来ませんが、あういぇ。

前作がやたらと評判良くて、その後に大スター共演の逃避行ものをやってるという意味では『ナイト&デイ』にも似てるね。監督も喰っていくためにはこういう映画も撮らなければいけないってこった。