全世界のオタク必見!『ガリバー旅行記』

ガリバー旅行記』を3Dの吹替で観て来た。監督は前に巨大な女を主人公にした『モンスターVSエイリアン』のロブ・レターマン。なんと初実写作品。

新聞社のメール係を10年も務めているガリバーは入って来たばかりの後輩に初日で追い抜かれるなど、さえない人生を送っていた。同僚に5年も片思いするほど奥手で、普段はビックマウスなのだが、それは小心な部分を隠すための行為。ある日片思いしてる同僚をデートに誘おうとオフィスに入るのだが、結局勇気が出ず、来たことをごまかすために机の上にあった旅行記者用の資料を持って帰ってしまう。結局それがきっかけでバミューダ海峡の取材に行くことになるのだが、彼がたどり着いたのは小人の国だった……というのがおもなあらすじ。

古典文学を現代的にアレンジして、さらにジャック・ブラックという魅力的な役者を主役にしたことでケミストリーがスパーク。「あの「ガリバー旅行記*1」が現代の技術で蘇った!」という部分よりも、「大口ばかり叩きながら実のところ最初の一歩さえ踏み出せないでいる繊細なオタク*2が、小人の国に行ってその夢をどんどん叶えていく」という感動の方が大きく、『ウォンテッド』や『マトリックス』に燃えたボンクラなら絶対に楽しめるウエルメイドな快作に仕上がっていた。

ミニチュアな街を早回しで映し*3、それをそのままタイトルバックにするなど、凝った映像はこれだけで、あとは全体的に丁寧な仕事っぷり。「小人の街に巨人が来た!」という視点はほとんどなく、あくまで「普通の人間が小人の国に来た!」という画作り。故の箱庭感はハンパじゃなく、箱庭フェチの方には悶絶級の映像がひたすら続く。舞台は中世ヨーロッパ風なのだが、蒸気で動く超巨大なコーヒーメーカーなど、SF的なガジェットが山ほど出てくるので、どこかスチームパンクな雰囲気も漂っている。もちろんぼくらの大好きな例のアレ*4も主人公の最大の敵となって登場するのだが、これは観てからのお楽しみ。

さらに脚本が丁寧で良く出来ている。起承転結はしっかりしていながら情報は最小限で、主人公に降り掛かる問題と通過儀礼もきっちり盛り込んであり、視点が主人公から一切ぶれないため、後半にはその視点を利用したサプライズが二つ用意されており、「ガリバー」であることを想定していると完全にやられる。ジャック・ブラック自身が製作総指揮に関わっているため、彼であることが必然のキャラクターが出来上がり、SWネタやロックネタを巧みに滑り込ませたのも、ぼくらが見たいジャック・ブラック像を分かってるなぁと感じた。

ガリバー旅行記』の世界観を忠実に再現して欲しい!という人にとっては肩すかしを喰らうだろうが、ジャック・ブラックのファンであれば間違いなく観ておくべき作品。85分というランタイムも魅力。ちょ、ちょっとやりすぎじゃないか!?と思う部分も多々あったが楽しかったからいいや!あういぇ。

あ、あとこれハッキリ言って2Dでいいです。3Dである意味がまったくない。

*1:つってもがっつし原作を読んでるわけじゃなくて、なんとなくこんな話だったよなぁ程度の概要しか知らないわけだが

*2:ロックとゲームとSWをこよなく愛する

*3:本当の街をミニチュアっぽく映したらしい、というか今作はホントにどうやって撮ったの!?という映像が連発される

*4:第9地区』でもすっかりおなじみ