ナイナイとダウンタウンが14年ぶりに共演した
『爆笑 大日本アカン警察』という番組でナインティナインとダウンタウンが共演した。なんと14年ぶりだそうだ。
上記でオードリーも「特に、我々世代はスゴイって感じるね」「ベルリンの壁崩壊よりすごいね」と語ってる通り、これはぼくらの世代にとっては大事件である。
方やお笑いを根底から覆したカリスマ。そして方や芸風が違いながらも、ポストダウンタウンと言われ、オールナイトニッポンの歴代最長期間の放送記録を樹立した若手の雄*1の共演――――1番脂の乗ってた時期の二組をほぼリアルタイムで追っかけてきており、互いに若い段階で冠番組を持っていたせいか、共演はほぼなかった。それがここに来て14年ぶりの共演ということで非常に楽しみにしていた。
今までもめちゃイケなどの絡みでちょこちょこは見ていたのだが、ゲーム性の高い番組以外でコンビでがっつし絡むのは恐らくぼくの記憶の中では初である。基本的にナインティナインの方がダウンタウンと絡むと萎縮してしまい、持ち味を発揮出来ないまま終わることが多かったのだが、結論から言って、今回は大成功だったのではないだろうか。
まず『アカン警察』という番組自体がとてつもなく、底抜けにおもしろくない番組であるということだけ前置きさせていただきたい。最初試験的に始まったときからイヤな匂いは感じていたのだが、それが顕著に現れたのがレギュラーで始まることになった第一回目の放送。
ダウンタウンのもとにごっつええ感じのメンバー、今田、東野、板尾が再集結したにも関わらず、しょーもないVTRをひたすら流し続け、それをわーわー言いながら見るだけ――――これだけのメンバーが集まりながら絡みがあまり見られないというのはMOTTAINAIというほかない。大泉洋やAKBが出演しても『もしドラ』があまりヒットしてないのと同じ理由で、その番組が底抜けにつまらなければ、いくら好きな人が出てるとはいえ、見ようとは思わないものだ*2。そもそもガキがピーピー言ったりしてるさまを見せられても全然おもしろくないし、あとなんだ、あの「アカン嫁」とかいう企画は。不愉快極まりないし、虫酸が走る。
企画先行であることは重々承知だが、それであれば、わざわざ彼らを再集結させる意味などない。なので、今回のナイナイとの共演も、まぁどうせつまらないだろうけど、貴重なツーショットが見れるなら見ようかくらいの軽い気持ちだったのだ。
ところがである。さすが共演自体が事件ということもあって、今回はナイナイとダウンタウンが共演する!という部分にフォーカスを当てて、構成した。HDDで編集して、ナイナイがスタジオに入るまでの様子とダウンタウンの絡み以外を切り落としたら、なんと時間は40分。2時間の枠の間、たっぷりとそこに時間を費やしたのも非常によかった。
何故ナイナイとダウンタウンは共演しなくなったのか?という理由を過去の共演VTRから検証するところも、貴重な映像集という感じでよかったし、随所に差し込まれる、共演者たちのいじりもすべて決まりに決まってたように思う。
最初、ナイナイ自体が空回りし、松本人志に「一旦前室に戻ろうか?」と揶揄されるも、そのあとは本調子で、矢部の進行もダウンタウンを「凶悪な芸人」として久々にいじりたおす前フリとして完璧であったし、岡村の言葉のチョイスも絶妙であった。
収録が終わったあとにナイナイの二人がこうつぶやいていた。
「ものすごく優しかった」
「おもしろかった、途中お客さんになってた」
ぼくも最近思っていたのだが、このつぶやきに全てが込められていると思う。そう、ダウンタウンが優しい――――丸くなっているのである。
ぼくのダウンタウンのイメージは圧倒的に尖っているふたりという感じだった。大物にも物怖じせず、あの志村けんに対しても髪の毛が薄いことでいじったり、真っ正面からデコを叩いたりするだけでなく、音楽番組HEY×3が始まった当初も森高千里に「あなたの失恋の歌は説得力ないですよ」と本気で言ってみたり、松田聖子を叩いて本番中にキレさせたり、布袋寅泰に「なんか腹立つんだけど、嫌な感じ?」と言われたり、デビューしたてのhitomiに「(新曲のタイトル)『CANDY GIRL』って、それ何?甘い私を食べてみたいな?私を噛まないでみたいなこと?」と言ってみたり…
さらに西田ひかるには「(スキャンダルがないことに対して)あんただって火照るときあるでしょう、どうすんの?そんなとき、水かぶるわけにはいかんでしょう。」と振り、浜田がそのまま「たぶんね……ひかるは二度と出てくれないと思います。」と言ったりと、とにかくすさまじかった。実際番組で不機嫌になった出演者はその後数年はHEY×3に出演しないくらいだった。
「ミュージシャン?知らんし、そんなん。オレらがおもしろければ、他はどうでもいい」――――そんな雰囲気が二人――――特に松本人志から強く見られたものだった。
ところが松本人志が坊主にしだしたあたりから、どんどん丸くなり、互いにひとりで番組を持つようになってから、嫌悪していたと思われる天然素材出身者ともどんどん仕事をしだした。自分の中でいろいろと考え方が変わったのか、それとも老けたからなのか――――近年のすべらない話やリンカーンもその要因だと思うが、その丸くなった感じがナイナイとの共演に繋がったのだろう。いろもんというウッチャンナンチャン司会の番組に出たときも「ナイナイのチビが来たんですよ」と名前も覚えてなかったくらいだから、彼らにある種の嫌悪感を抱いていたことは想像に難しくない。
番組では特に浜田が怖い/悪いという扱いだったが、本当のところ、実際に怖いのはやはり松本人志の方だったんだと思う。
今回はその丸くなった感じとナイナイのキャラクターが噛み合った形となったが、おもしろかった分、もう尖ったダウンタウンは見られないのかと感慨深くもなったりした――――でも、また機会があれば、ビクビクしているナイナイに対して優しいパスを出して、ゴールを決めるような共演をしてほしいなぁと思う、そんな放送であった。
ちなみにそんな笑いのカリスマの新作は『さや侍』という映画。なんと父親として理想の娘像を描いた作品なんだそうだ。どんだけ丸くなってんだよ!!あういぇ。