ジブリ全作品の一言感想集

最近金曜ロードショージブリ特集をしたり、昨日のMUSIC JAPANでもアーティストが選ぶ好きなジブリ作品というのをやっていて、やたらと目にするようになってきた。こないだも後輩とジブリの話になったし。

ちなみにアーティストが選ぶ好きなジブリ作品の1位は意外にも『千と千尋の神隠し』だった。2位が『となりのトトロ』で3位に『魔女の宅急便』と『天空の城ラピュタ』というベタな結果に。

ロック好きの共通言語として「ビートルズ」が挙げられるだろうが、「ジブリ作品」もそういったもののひとつだと思う。「タルコフスキーはさぁ」とか「ゴダールは……」とかいうとキョトンとされるが、ジブリにはそれがない。年齢を超えてほとんどの人が観ているし、酒を飲むとたいがいはこの話で盛り上がれる。

というわけで、今回はジブリ作品の感想をツラツラあげて行こうと思う。数年前に書いたものに対して今想うこともあったので、改稿しました。

あ、ちなみに珍しく、好き/嫌いの話で書いてますので、反射的にイラっとするかもしれませんが、まぁ、あまり気にせず。


風の谷のナウシカ
「とても嫌い」というとほとんどの人に「信じられない!人間じゃない!」と非国民であるかのような扱いを受けるが、理由は至極単純で説教臭すぎるから。音楽もこれ以上ないくらい完璧で、演出も独特。メビウスの世界観をうまーく換骨奪胎してるようにも思える。もちろん良く出来た映画ではあるし、大変な傑作であると思うんだけど、好きか嫌いかで言われるとやっぱり嫌いだ。


天空の城ラピュタ
大傑作!個人的には『カリオストロの城』のブラッシュアップだと思っている。恐らく宮崎駿はこれとカリオストロを作ったことでこの手のお話には満足していたのではないだろうか。個性溢れるキャラクターに小粋なセリフ、ド派手な見せ場、バカでかい銃や飛行石などガジェットも含めて、とにかく大好きだ。


となりのトトロ
傑作。ノスタルジックで切なくて不思議で妙な気持ちになる。「あの頃の日本はよかったなぁ」という思想はあまり好きではないし、メイちゃんを観るたびにイライラするけど、糸井重里のお父さん役に救われる。『三丁目の夕日』の3億倍はいいよ。


火垂るの墓
一回しか見てないのに、ほとんどのシーンを覚えてるという驚異的な作品。反戦映画があまり好きではない*1が、これは胸を打つものがある。宮崎駿はかなり嫌っていたらしいが、それもよく分かる話。高畑勲って今何やってるの?


魔女の宅急便
昔は大好きだったんだけど、今は卒業した感があり、結果嫌いな作品になる。一人の女の子が巣立って、仕事して、挫折やスランプを乗り越えて、また復活するという体の話だけど、そもそも挫折してないよね?っていうか、昔は魔女って殺されたんだろ?そもそもこの映画は魔女の時点でアイデンティティが確立されてんじゃん!!いや魔女狩りは大変悪いことだけど、魔女であることがとにかくマイナスになってないため、改めて見返すと、最初から苦労してない!ということがよく分かるのだ。やっぱりこの映画はもののけのアシタカのように多少なりとも差別されるシーンが必要だったと思う。魚のパイ持っていって、嫌な気分になるシーンがあるけど、子供はばあちゃんの味なんて望んでないものなの!肉とかお菓子のほうがいいんだよ!んなことで勝手にスネてんじゃねぇ!!この映画で唯一良いのはユーミン。特にオープニングは珠玉。


おもひでぽろぽろ
やりたいことや作品の方向性には共感するし、とてつもなく映像美を追及していて、好きなシーンもあるが、全体的にどういう話だったかまったく覚えていないという脅威の作品。ただ、おもしろくなかったことだけは確か。今観るとおもしろいと思えるのかも。


紅の豚
傑作。宮崎駿の作家性が色濃くでたとてつもなくパーソナルな作品。戦争のショックでそれから逃げ出すために魔法かけてもらい、豚に姿を変えた男の話ということで、物語の発端がいわゆる偶発的でないのだが、実はこの映画において、それはさほど重要ではなく、この映画を貫いているのは底なしの「孤独」である。なのでこの映画は実はとても切ない話なのだ。物語の起伏はさほどなく、各シーンがコラージュとなり、それらが有機的に絡み合うことで、全体的に何かを伝えるという手段をこの作品から発揮させ、宮崎駿はこの作品以降、この手法を使い物語を紡いでいくことになる。後期宮崎駿を語るのに重要な作品。



平成狸合戦ぽんぽこ
説教臭い映画は大嫌いだというのは先ほど表明したばかりだが、この作品はそれらを上回るキャラクターの良さがあり、それを観ているだけで多幸感に包まれるという。特に演者が素晴らしい。


耳をすませば
「大嫌い」というとそれこそ非国民であるかのような扱いを受けるが、『ルールズ・オブ・アトラクション』という映画とは真逆の発想の映画なので、それが大好きなぼくにとってはある種の敵とも言える作品。演出は素晴らしい。


もののけ姫
おもしろいけど、あんまり好きじゃない。理由は『ナウシカ』と一緒だから。説教臭いし、構想十何年とか言われても、そりゃそうだよと言いたくなる。ただし、この映画の根底に流れる「自然を守るためなら人間なんて死んでも構わない」という思想はすごく好きだ。人間なんてゴミクズだ!という部分でいえばスピルバーグの『宇宙戦争』のラストと似ているではないか!


ホーホケキョ となりの山田くん
未見。あまり良い噂を聞かないが…どうなん?この映画は。


千と千尋の神隠し
先ほどの「好きなジブリ作品は?」ではないが、ぼくも実は一番好きだったりする。『トトロ』は親を喜ばせたいというメイちゃんが勝手にいなくなり、それを探すという話だったし、『魔女の宅急便』は自発的にアイデンティティを使って、勝手にすねる話だったので、親の勝手で転校することになってしまい、さらにその好奇心で勝手に豚になってしまった両親を助けるために、見返りを求めずにガムシャラに働くというのが通過儀礼として一番この作品がしっくりくる。湯屋というある種、大人の欲望うずまく世界において、金やごちそうには目もくれず、しおむすびを泣きながらぱくつき、ひたむきに風呂掃除やらなんやらするというのが、ことさらに純粋さを輝かせていて、宮崎駿が描いて来た少女像の集大成であるとも言い切れる。何よりも親を、そしてハクを助けるために命をかけてまで列車に乗って遠くにいくというのがとてもスリリングでそれを旅として描いているところもよかった。惜しむらくはラスト。親が千尋の活躍になんの感謝も示してないというのだけがちょっと……少女はトンネルの向こうで大人になった「だけ」ってのがね。親の世代が好き勝手やってるから下の世代はそれと関係なくしっかりしなきゃいけないということなんだろうけど。


猫の恩返し
大嫌い。意味不明。まったくおもしろくなかった。書くことないくらいつまらん。愚作。つじあやのの主題歌は完璧。


ハウルの動く城
最初観たときはまったく評価出来なかったが、二回目でかなり好きになる。戦争が起こってるという状況の中、他者という絶対に繋がり合えない者が繋がり合おうとなんとかもがいているという映画だということを鈴木敏夫が語っていて、なるほどなと思った。そこにソフィーとハウル恋愛模様が絡むという宮崎駿の中でも人間性が色濃く出ている作品。物語を語るということを放棄し、その部分にスポットをあてたことで深みがあり、個性豊かなキャラクターと動く城などのガジェットも含め、これまた宮崎駿の集大成的な部分が多く見られる。最後に神木きゅんが言う「ぼくたち家族だよね?」がこの映画のすべてであって、そこで号泣してしまう。


ゲド戦記
未見。まぁ観なきゃいけないとは思っております。こないだのオフ会で冒頭だけ観たら、とてもおもしろそうな感じが出てました。


崖の上のポニョ
最初に観たとき、マジフザケンナクソツマンネー!と憤慨していたのだが、夏、激務とあまりの暑さに参ってしまい、そんな時にこの映画のことをふと思い出して、それからは大好きになる。むしろベスト3に喰い込んで来るかもしれない。人間というのは年齢によって好みが変わるものですよねー。津波が押し寄せて、港町が沈んでしまうという3.11と同じような状況の中、住民が元気にしすぎじゃねぇかと思ったのだが、3.11以降のドキュメンタリーで、なんとか助かったおじいちゃんがカメラに向かって飛び切りの笑顔で「だいじょうぶ!復興しますよ!」と語ってたのを見て、あながちそれも間違いじゃないんだと思った。しかし人間であることがイヤになったポルコは豚になることを選択したのに、止めるフジモトを振り切ってまで人間になりたいと願うポニョは対になってておもしろいね。


借りぐらしのアリエッティ
嫌いっすねー。『ポニョ』はまだ子供として動機が純粋だったから、そこに起こした責任はあまりないんだけど、アリエッティの場合は14歳であって、これから大人の階段を登るという段階なのだ。故に先のことを考えたりする力はあってもいいはずなのだが、あまりに自分勝手すぎるのがどうも……『魔女の宅急便』と同じく、自発的に旅をするという出だしであって、そういうのがあまり好きではないのかもしれない。


番外編ルパン三世/カリオストロの城
完璧な映画。技術が発達しなくても、おもしろいアニメは作れるというのを証明したかのような大傑作。みんなが宮崎駿をなんだかんだ言っても追いかけるのはこの作品で受けた恩恵がデカ過ぎるからだと思う。


ちょっと長くなったが、ジブリに関するぼくの勝手な感想だ。みなさんも振り返ってみてはいかがだろうか?あういぇ。

*1:戦争映画は好き