『TIGER & BUNNY』を第7話まで観た。 - シン・くりごはんが嫌い

巷で話題の『TIGER & BUNNY』を第7話まで観た。

軽くTwitterでも触れたが、『大日本人』が世の中にたくさんいて、『デスレース』みたいなことをやったら？というお話。ただし、その大日本人同士が殺し合うわけではなく、悪人をやっつけるとポイントがもらえて、それがテレビで放送されてるという設定。主人公は落ち目のヒーローで、思った通りの活動が出来ない！という憂き目にあうのだが、結局、子供を養うために自分の信念を曲げ、体制に迎合し、ヒーローを続ける。

すんごい人気で、熱狂的なファンも多く、いろんな人にすすめられたり、高額でもブルーレイをキッチリ揃えている知人がいたりと、今年を代表する作品であることは承知しているが、表層的なところだけで観た正直な感想は「普通くらいにおもしろい」であった。作品を五角形のグラフで表すなら、すべてが均等に100点満点中49点をキープしているという感じ。なぜ49点なのかというと、とても一長一短な作品だったからである。

少し前に『コクリコ坂から』を観た時にも思ったが、基本的にこの作品もまず「動き」としてのアニメの面白みがまるで感じられなかった。人間ドラマのパートは写実感を出すためにあえてああしたのかもしれないが、それはともかくとして、アクションシーンの演出はお世辞にもうまいとは言えず、板野サーカス的なことをやろうとしていることだけは理解出来ても、ロングショットでのカクカクした動きがメインで、ピョンピョン飛び回るシーンでもまるで盛り上がらず、エレクトしないまま不完全燃焼で終わってしまう。

構図やカット割に関してはセンスや個人的嗜好の問題もあるが、いわゆるコミック的な決め絵がひとつも登場せず、動きという部分に目を瞑ったとしても、やはりいまひとつ燃えないのだ。それこそキリキリの映画を観たときのような、あのヘタさ加減を素直に感じてしまった。正直、ぼくはアニメに関してはホントに片手で数えるくらいしか見てないし、どういうことをしたら、どういうカタルシスが生まれるのか？というのもよく分かってない。ただ、もし、これが予算や時間の問題だというのなら、『サムライチャンプルー』のあのアクションのかっこ良さはなんなんだという話になってしまう……いわゆるヒーローものということで特撮のカメラワークを意識したのかもしれないが、だとしたらそれこそ大問題で、それだったら特撮でいいじゃん！と思ってしまうのも事実なのだ。

さらに第一話で主人公には二つの障害が発し、それが物語の根幹を成すようなものなのに、それが問題点としてあまり活かされてないのも問題だと思った。一つは自分のヒーローとしての信念を曲げてまでヒーローとして活動するというところ。主人公には年頃の娘が居て、生活のために仕方なく、体制に迎合するのだが、そこでの葛藤がまるで描かれない。「じゃあ、この人は自分の考え方に対して柔軟なのかな」と思うとその後の話では、自分なりのヒーロー像があり、そのことで事件がすんなり解決しなかったりして、どちらかというと主人公は『踊る大捜査線』の青島のような信念を曲げない正義感の強い男なのである。ならば、とっかかりになるはずのそのシーンはもっと掘り下げるべきではなかっただろうか？

もう一つは新人とチームを組んで、ポイントを稼ぎなさいと命令される部分。ここでもちゃんとしたチームになるまでのゴタゴタがあってもいいはずだが、あっさり組んで、あっさり活躍してしまう。回がすすめば、それなりにケンカもし、それなりに考え方の相違が出て来るのだが、またこれもとっかかりとして出て来ないのはいかがなものかと思ってしまった。

それもこれも、アニメとしてのカタルシスがあれば何ら問題ない部分であっただろうが、それすらないとなると、そういう細かいところで引っかかってしまうのが関の山なのである。id:doyさんが『カンフーパンダ2』のエントリにて、「挫折のある物語は昨今ウケないんですかね？」と言っていたが、ホントにその通りで、この作品にはヒーローものに必要不可欠な「挫折」がこれっぽっちも出て来ないのである。こちとら『スパイダーマン』や『バットマン』、『ウォッチメン』を観て来てるんだぞ！コノヤロー！という映画好きならではのめんどくさい意見を思わず言ってしまいたくなる。

まぁ、7話しか観てない段階でこういうことをいうのは早計なのかもしれない。ところがこの作品の続きを観たいと今の段階ではまったく思えないので、こうしてエントリにした次第だ。ぼくは映画好きであるが、映画好きな人がすすめるアニメとアニメ好きがすすめるアニメにはやはりなにかしらの決定的な違いがあるように思えた。だからと言って別につまらないわけではないというところも困ったところなのだが――――あういぇ。