『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』をまさかの鑑賞。こういう思いつきを入れたくなる性分なんです。はい。
ホエール・ウォッチングを楽しむために各国から観光客がとある船に乗って来た。ところが不慮の事故により船長が負傷、彼らは海の上で漂流を余儀なくされる。ところがそこにたまたま捕鯨船が通りかかり、全員助かるかと思ったが、それは悪夢の始まりにすぎなかった……というのが主なあらすじ。
オープニングから鯨の解体フィルムが流され、そこに度肝抜かれるが、船の揺れに合わせてスタッフ/キャストのクレジットも同じように揺れるなど、なかなか凝っていて、もうこの出だし一発で掴まされること必至。CGを使った人体破壊も気合いが入っていて、とても初めて制作されたとは思えないくらい、研究されつくされている。
世界三大捕鯨国であるアイスランド初のスプラッタホラーは、なんと捕鯨禁止によって、失職した人々がいるということをバックボーンにした作品になった。その背景があることにより、なんの説明もせずに物語の世界に入って行けるようになっているのが特徴。それが証拠に説明的なセリフは一切登場せず、登場人物が何をやっていて、どんな人間なのかがさっぱり分からない状態で物語が進んでいく。
ストーリーに関してはかなり無理があり、それこそ『悪魔のいけにえ』のごとく、レイキャヴィクはおろか、世界各国にはこういう殺人鬼がうようよいるのか?というような誤解すら生じる勢いである。さらにありえないほどの偶然が重なり、急転直下な展開がものすごいスピードでどんどんやってくるが、それもこれも、こういうことがやりたいんだよ!という志が画面からビシビシ伝わって来て、非常に好感が持てた。
ストーリーというかプロットこそ強引であるが、その強引さの中に光る、説明なしの繊細な演出が小技として効いているので、殺される人も殺す人にも微妙な感情移入をしてしまい、彼らがどうなってしまうのか?というその人間力で最後まで目が離せない。
彼らがどんな人間で、彼らがどういう仕事をしているかというのは最終的に明らかにされないが、たまたま乗り合わせた人々の背景など普通は知ろうともしないので、この演出に妙な説得力があり、彼らに危機が迫ると、その人間性が徐々に明らかになっていくあたりは非常に繊細だ。先ほどまで感情移入してたヤツが実はとてつもなくイヤなヤツであったり、そうでもなかったヤツが実は良いヤツだったりと、キャラクター全員の描き分けはかなり平等である。登場する時間もそこまで大きな差はない。故に、誰がこの中で生き残るのだろうか?という楽しみ方も出来て、この種のジャンルムービーとしては奇を衒いながらもかなり良く出来ている。そう言った意味でもこの作品は同じく今年公開された『ムカデ人間』にも通ずるものがある。
個人的にいいなと思ったのは裕木奈江だ。
いきなり椿鬼奴のようなビジュアルとルックスで現れたので、どうしてくれようかと思ったが、かつて「同性に嫌われる女性」として名高かった彼女に対して、監督がその本質を見抜いていたのか、それを地でいくような冷酷なキャラクターを演じていた。
とてもあんなことする人には見えません!!
かつて嫌われたアイドルがまさかその後にイーストウッドとリンチとアイスランド産のスプラッターホラーに出演することになるとはという感じだろうが、是非とも楽しいフィルモグラフィを築き上げていってほしいものである。
とまぁ、話は軽く脱線したが、正直、かなり楽しい映画だ。限定された空間の中で誰が死ぬか分からないという部分ではまるで『ディープ・ブルー』を観ているような気分であった、ただ、冒頭の鯨解体シーンはかなり衝撃的なので、注意されたし、『カルネ』の馬解体みたいなもんですね。あういぇ。
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