ウエルメイドなセックス、ドラッグ、ロックンロール『ランナウェイズ』

『ランナウェイズ』をレンタルDVDにて鑑賞。

デビューしてから一年間が最大のピークであり、さらにアメリカでの人気は普通くらいで、どちらかというと日本での人気が高かったというガールズバンド、ザ・ランナウェイズの伝記映画。その中心人物である、ジョーン・ジェットとシェリー・カーリー、そしてプロデューサーのキム・フォーリーの視点で物語は進んでいく。

1975年、ロックが大好きで、ファッションから行動までロックンロールに染まり切った少女:ジョーン・ジェット。ロックバンドをやりたい!ギターを弾きたい!という衝動を抑えられずにいた彼女はある日クラブの前でプロデューサーのキム・フォーリーと出会う。なんとなく自分を売り込もうと話しかけたジョーンだったが、キムはキムで女の子だけのバンドをデビューさせたら、儲かるに違いないと、ジョーンを中心にメンバーを集め始める。そのタイミングで同じようにロックを愛聴しているセクシーなシェリー・カーリーと運命の出会いを果たした彼らは練習とライブを重ね、遂に“ザ・ランナウェイズ”としてデビューにまでこぎ着けるが………というのがあらすじ。

70年代フィルムを彷彿とさせる発色とファッション、小道具により、画面はかなり手堅く作ってあり、内容もその映像に合ったような「ウエルメイドなセックス、ドラッグ、ロックンロール」という感じ。そのバンドの中にいた本人たちは刺激的でロックンロールを地で行くような行動もしていたのだろうが、映像的には冒険もせず、はじけてるわけではないので、それを俯瞰的/冷静に見ていると取れるかどうかで評価は分かれるだろう。

さらにジョーン・ジェットとシェリー・カーリーの二人の視点がメインであり、100分ちょいというランタイムのため、取捨選択が難しく、ハッキリ言ってしまえばバンド史としては中途半端であり、バンドを中心にした歴史を描いてるわけでもない。群像劇にしては人数は少なく、ガールズムービーとしては、シェリー・カーリーに寄りすぎてるきらいがあり、ジョーン・ジェットの内面があまり描かれない分、彼女がいかにしてロックに熱いかという重要な部分も伝わって来なかった。「アイ・ラブ・ロックンロール」に全てを託しているのだろうが、原作がシェリーの書かれたものだから仕方ないのだろう。ただ裏を返せば、それらがたくさんの「要素」として機能しているという言い方も出来るわけで、どうとでも受け取れるように作ってあるあたりも「ウエルメイドなセックス、ドラッグ、ロックンロール」につながっている。

この手の映画はディテールを再現することで手一杯になりがちで、それで圧倒するというパターンがあるわけだが、確かな演技をするキャストを集めたことで、演出は彼らの演技が中心。音楽がどうしたとかバンドがどうしたというよりも、キャストの演技とそのアンサンブルを楽しむような作品になっている。特にシェリー・カーリーを演じたダコタ・ファニングは歌いっぷりも含めてさすがの一言。ノリノリのプロデューサー、キム・フォーリーを演じたマイケル・シャノンのオーバーアクトも見てて楽しかった。

というわけで、この手の映画にしてはそこそこに楽しめるかなというのが正直な感想だ。ダーティーで挫折がある『ローラー・ガールズ・ダイアリー』みたいな気構えで観ることをおすすめしたい。個人的には日本での熱狂を伝えるシーンがおもしろかった。あういぇ。

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