『インモータルズ ー神々の戦いー』鑑賞。牛を輪切りにするという衝撃的なビジュアルを展開したターセム・シン監督最新作。
全能の神、ゼウスを中心としたオリンポスの神々は敵対する邪悪な神々タイタン族をタルタロス山の奥底に閉じ込めた。時が過ぎ、非道な虐殺を繰り返すイラクリオン国王のハイペリオンが、全世界を支配しようと、タイタン族を解放するための伝説の武器、エピロスの弓を探すべくギリシャを侵攻する。人間の争いに手出しが出来ない神々であったが、さすがにタイタン族を解放されては困るので、ハイペリオンを野望を阻止すべく、ある一人の人間を救世主として鍛え上げるのだが……というのがあらすじのようなもの。
予告編やティーザーなどで『300』っぽいなぁと思ったのだが、フタをあけてみるとビックリ。神々と人間がそれぞれの相手と平行して戦うというギリシャ神話をベースにした設定であった。
幾何学的ともいうべき左右対称のカッチリとした画が続き、カット割は一定のリズムを保っているため、キューブリック作品を観ているような感覚に陥った。ザック・スナイダーがコミックをそのまんま映像に置き換えたとすれば、こちらはアート指向であり、どちらかというと絵画的な雰囲気がある。だからと言って、動く美術館のようだ!というようなことはなく、役者の演技をしっかり捉えた、映画/演劇としての魅力が十二分にあった。特に悪の限りを尽くすハイペリオンを演じたミッキー・ロークは独特の存在感を遺憾なく発揮する。
『300』よろしくクイック/スローを駆使した空間が歪むほどのモーション感覚も当然登場するのだが、今作では残虐度がよりアップ。神々の力は当然人間よりも強いため、彼らがひとたび対象物を殴れば、首が飛ぶどころか、粉々に粉砕されてしまう。しかもそれが超絶なスローモーションの中で行われるので、人間がグチャグチャになって弾け飛ぶ様子が克明に描かれていくのだ。じぶんは2Dで観たのだが、これが3Dであれば、弾けとんだ肉片と血の塊がこちらにまで迫って来るような感じになるのだろう。この作品は「ものすんごいスピードで人間を粉々にしていく神々」のお姿を拝見するだけでも観る価値はある。
ただ、ギリシャ神話をみんなが知っているていで話が進んでいくので、かなり置いてけぼりを喰らうところも多々あり、それを補完するためなのか、日本語字幕でご丁寧に登場する神々の紹介文が出て来るくらいで、何が何だかよく分かってない部分もあった。結局神はどの程度まで人間に姿を見せていいの?とかオラクルの存在とか、あと意外と神々弱くね?とか、それと同時にゼウスがOK出せば、とっとと神の力で終わらせることが出来たんじゃね?とか、そもそも神話をベースにしているわりに、出て来るキャラクターがどの程度まで神の存在を認識しているのかがあいまいで、主人公は信仰してないのに、ゼウスに知らない間に技を叩き込まれ、神なんてクソクラエと思ってるハイペリオンも邪悪な神の存在だけは知っていたり、ギリシャの評議会のおっさんにいたっては神の力なんてまったくないと思っていて、神話なのか人間の話なのかその辺がよく分からなかった。まぁ、あくまでこれはぼくがギリシャ神話に疎いだけで、かなり的外れなことを言っているのかもしれないけど。
というわけで、『300』+ターセム監督のファンならば観て損はないと思われる。もうちょっとアクションシーンがあればよかったかなぁくらいの要望はあるが、それなりにおすすめ、あういぇ。
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