シリーズ化希望!『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』

タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』を2Dの字幕版で鑑賞。

エルジェによるバンドデシネピーター・ジャクソン制作、スピルバーグ監督、エドガー・ライト脚本、サイモン・ペグ出演という、ある意味超豪華な布陣で映画化。

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』で縦横無尽にカメラが動き回り、飛んだり跳ねたりするキャラクターを3Dゲームのごとく追うというカットを観た時に「CGアニメみたいに撮るなぁ、まだまだ若いなぁスピルバーグ」と思ったのだが、なんとスピルバーグが次の題材に選んだのは3DCGによるアニメであった。というよりも企画自体は水面化で動いていたのかもしれないから、あの演出はそのための布石だったのではないかとも思える。弟子であるロバート・ゼメキスが一足お先にCGアニメを監督していたが、いよいよまんをじして師匠の登場である。

ほぼ原作に忠実であり、基本的には“To Be Continued”な物語にきちんとしたオチを付けるなど、脚本の推敲、取捨選択はうまい。それこそアプローチで言えば、原作を再現しながら、アクション、バイオレンス、セックスを多めにした『ウォッチメン』にかなり似ている。船長がアル中であったり、新聞にベッタリ血が付いたり、徹底的に破壊されつくされる町など、多少なりともスピルバーグの狂ったフレーバーが閉じ込められてるのも特徴的で、絵柄から想像つくように、緊迫しながらものほほんほのぼのとした物語を、畳み掛けるようなジェットコースタームービーに変えたのは正解だったと言える。

スタントアクションと合成を組み合わせ、ハラハラドキドキのシーンを生むという意味で、スピルバーグヒッチコックはスタイルが若干似ていると思っていたが、そういったインディ・ジョーンズ的な演出は封印し、アニメであることを意識したシーンが多々見られる。パルクール的な部分はもちろんのこと、脇役である犬のキャラクターに無茶をさせるというのは実写では恐らくやらないだろうし、アルコールを含んだゲップをガソリンタンクに入れて、エンジンをかけるとか、オペラ歌手の歌声で防弾ガラスを割るとか、基本的には荒唐無稽のドタバタであり、それがスピルバーグなりの「アニメ観/アニメ的演出」なのだと思う。これはかなり新鮮であった。

動きはドタバタでカートゥーンっぽいのにも関わらず、映像それそのものは実写と見紛うほどのクオリティを誇っており、血の色一つとってもぬかりなし、というか実写と組み合わせればよかったのではないか?と思うほどの質感が表現されている。良い意味でカクカクしたコマ割りと構図を持っていた原作から大胆に変更しながらも原作の色合い/雰囲気をキッチリと活かしており、基本的には「あのタンタンが『宇宙戦争』のようなカメラワークと映像の質感で完璧に映画化されてる!」という感じ。その二つを映像の楽しさを最大限にいかした中盤の長回しによるバイクチェイスシーンは久々に映画的興奮を感じさせるスペクタクルでここだけでも観る価値は十二分にある。

しいて言えば、そのリアル指向の映像にアニメ的な表現が噛み合ってないかなとは思うが、個人的にはあの映像をずっと見続けたいと思ったほど。良い意味で緩い部分も含め、安心して子供から大人まで楽しめるエンターテインメントになっていた。恐らくこれで終わりだとは思うが、『インディ・ジョーンズ』のようにシリーズ化してほしい。なるべく原作を読んでから観に行くことをおすすめ。とりあえずBD出たら買おうかなぁというくらいにはおもしろかった。あういぇ。

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