堅実な日本、ローンに頼るアメリカ『カンパニー・メン』

『カンパニー・メン』鑑賞。新潟は二週間の限定上映。最近この形態多いな。

GTX社のエリート社員であるボビーは37歳にして大邸宅に住み、ポルシェに乗り、さらにゴルフを趣味とする典型的な出世コースを進んでいたが、世界金融危機によって、ある日突然解雇されてしまう。職探しを始めるも、今までの仕事に対するプライドが邪魔してなかなか新しい職に就けないボビー。さらに今までエリートのコースを進んで来た彼は近所の目もあって生活のレベルを下げるということが出来ず家のローンもゴルフ場の会費も払えなくなる。そんな中、GTX社で再びリストラが行われた。解雇の対象になったフィルはボビーの上司であり、ボビーがクビになった時に声をかけたひとりであった。フィルは、上司であり仕事仲間でもあり、友人でもあるジーンに詰め寄るが、そのジーンも社長に対してたてついてしまったがために解雇されてしまっていたのだった……というのがあらすじ。

『摩天楼を夢みて』のように三者三様の社員の話。37歳のエリート社員、勤続30年の50代の職人、さらに共同経営者の重役と、同じ会社の立場の違う3人の視点で物語が進んで行く。

奇を衒ったカメラワークは皆無であり、フィクションの中に「生活」という圧倒的なリアリティが加わっている。そのため、人物の背景などは一切説明されず、観客そっちのけで話がドンドン進んでいく。それぞれが抱える問題は映像から読み取らないといけないが、かろうじて分かりやすくしてくれているために、「ああ、この人は奥さんに頭があがらないんだな」とか「この人とこの人は不倫しているのか!」というのが見ていてどんどん明らかになっていく。

等身大の目線というか、いわゆる映画的なヒーローは出て来ることはなく、普通の会社に勤める普通の人が主人公なので、これといった見せ場はない。ハッキリ言えば会社をクビになって就職出来ずに日々がすぎていくだけで映画の中には山も谷もない。ところが巧みな編集と地に足のついた演出で一瞬たりとも飽きずに最後まで観ることが出来た。時間経過の表現もわざわざ「何月何日」というテロップを出さずに季節感だけで描き切るなど見事である。

豪華キャストが揃っているのだが、全員がスターのオーラをかき消し演技そのものだけで勝負しているのが衝撃的で、トミー・リー・ジョーンズは年下の社員にもモテて、人望も厚いというカッコイイ役柄だが、それ以外は完全に普通の人という感じに演出されている。特に90年代を代表する男前スターであるケビン・コスナーがなんのオーラもない普通のオッサンとして出て来るのは衝撃的。口数も少なく淡々と仕事をする様はベン・アフレック同様、今の彼の姿を反映させたものなのだろうか。

惜しむらくは徹底的に説明がされないため、伏線が回収されない部分が多々あるのと、背景がハッキリ明かされない部分があることくらいか。堅実に貯金しまくる日本と、ローンに頼るアメリカとの生活の違いに驚く事必至。そう言った意味でもおすすめ、あういぇ。

摩天楼を夢みて [DVD]

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