『勇者ヨシヒコ』の元ネタ『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』鑑賞。
昨年『勇者ヨシヒコと魔王の城』という楽しい深夜ドラマが放送された。『ドラゴンクエスト』の実写版ともいうべき内容で、勇者が魔王を倒しにいくというだけのあらすじだが、あえてモンスターを表現するのにハリボテを使ったり、低予算であることを逆手にとったコントのようなテイストで、お笑い分かってますよぉ、笑えるでしょという姿勢は鼻についたが、不条理かつシュールな展開は嫌いじゃないし、コンセプトと発想は評価出来る部分があった。何よりもドラクエを元ネタとして使ってるのが今までになかったので、それだけで余計なお笑い要素を入れなくても笑えるのだ。
ところがこのドラマには『ホーリー・グレイル』という元ネタがあることが分かり、すぐにDVDを購入して観たのだった。
ぼくはテリー・ギリアム好きを公言してはいたが、実のところモンティ・パイソンは一作も観たことがなかった。意識的にスルーしていたと言ってもいい。何故かというとTV放送を見ていないからであり、本放送を見ずして映画版を見るというのは『踊る大捜査線』のドラマ版を観ずしてThe Movieを見るような後ろめたさがあったからでもある。日本ではわざわざ吹替をして放送していたというのだから、その人気っぷりが伺える。
さて、この『ホーリー・グレイル』噂には聞いていたがかなり人を喰ったような内容である。なんと言っても始まって早々、いきなりまったく違うモノクロの映画がスタートするのだ。最初何かの間違いなんじゃないかと思ったが、2分ほどその映画を見ていると、「おっとフィルムを間違えた」という言葉と共に本編がスタートする。
とまぁ、一事が万事この調子でとにかく本筋から脱線し続ける。予算の都合なのか移動は徒歩で、そのかわり馬の足音をヤシの実で表現する。立ち寄った城では「馬のかわりにヤシの実を叩いてることはどうでもいい、そんなことよりもなぜ貴様らがヤシの実を持っておるのだ!」と、とにかく不条理なやりとりを延々する。松本人志が「モンティ・パイソンに似ているとよく言われるがそんなの観たことないっちゅうねん!」と発言したことがあるが、なるほど、こうやって見ると、唐突にグロ描写が出て来たり、突如ぷっつんして、キャシー塚本のように破壊の限りをしつくすなど、確かにかなり似ている。
金がかかるであろうシーンはアニメーションやハリボテで切り抜けており、最終的にはかなり強引なオチがつく。だが、このおふざけも“モンティ・パイソン”という冠と低予算であることを逆手にとった表現であり、そのことによって無理を感じさせない。
なによりもこの作品。低予算と銘打っておきながら、そこまで安っぽさがなく、画作りはかなりしっかりしている。細部にわたる小道具や美術まで抜かりがない。そりゃ深夜ドラマと一本の映画を比べたら段違いだろうが、逆にしょぼいセットやハリボテ感を想像していただけに、ちゃんと映画になってるじゃないか!と感動すらした。
というわけで、『勇者ヨシヒコ』好きなら元ネタを探るという意味でおすすめ。笑いということに関しては『ホーリー・グレイル』の方が格段に上だ。職人たちによる日本語吹替版でどうぞ、あういぇ。
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