愚直なまでに反戦と人間を描く『キャタピラー』

キャタピラー』をレンタルDVDで鑑賞。

恋の罪』にものすごいショックを受け、冷えきっていた映画熱が再びジワジワと燃え上がってきた。そのわりに「ホントに観てぇなぁ!」と思うような映画が公開されてるわけでもなく、『ヒミズ』も遅れてやって来る始末で、久しぶりにレンタル屋さんへと足を運んだ。

そうしたらば知らない間に『スカーフェイス』や『ビッグ・リボウスキ』のBDがあるわ、『劇場版神聖かまってちゃん』や『ハングオーバー!!』や『メカニック』など観たくても観れなかったヤツ、スルーしてたヤツがもうレンタル屋さんに並んでるわで、ホントに映画が公開してからソフト化されるのが早いなぁと改めて思った次第。いや、それよりも一年過ぎるのがあっという間なんじゃないかって話も……しかーし!これらは全部借りられていたのだった!ムキー!

てなわけで寺島しのぶの『キャタピラー』を借りて来た(なぜだ)。

映画は愚直なまでに「戦争」と「人間」を描く。戦争で手足を失い、耳も聞こえず、さらにはちょっとした知的障害になって帰って来た夫を世話することになった妻。映画の冒頭で夫が人間らしからぬ恰好で帰って来るので、夫婦関係や、彼が戦争でどういうことをしていたのかというのは一切明かされない。たくさん勲章をもらって帰って来た夫を村人は「軍神」として讃え、妻はそんな彼を献身的に世話する。

ここまで書くと戦争に巻き込まれてしまった夫婦の悲劇として写るだろう。実際この映画に出て来る村人たちの視点のような、理想の夫婦として内面まで踏み込まないような描き方をしている。

ところが映画はこれだけで終わらない。彼は生きる術をそこに見出したかのように毎晩毎晩妻の身体を求め、さらには彼が戦争でしてきたことがフラッシュバックし始める。そして妻は妻で夫に今までされてきたことを思い出し始め……というのがこの映画のサスペンス性である。

おもしろい主題を持っているなとは思ったが、単純に映画として映像としておもしろくないので結構ダレる。拡声器で「戦争は愚かです!」と大衆に大きな音で言っているかのような演出が続いていき、キモであるセックス描写も献身的な行為として無機質に写しているところで評価も分かれそうではある。特にラストの歌……あれは正直キツかった。

重厚かつ、踏み込むのにも勇気がいるお話なのに画が安っぽいのも致命的で、もうちょっとなんとかならんかったかと勝手な印象を持ったが、84分というランタイムもあってか、大作というよりは小品という感じ。

寺島しのぶは文句なし。舞台調の仰々しい演技でもって、村中を暴れ回ったり、ドアップでわめき散らしたりとさすがである。彼女の切り取り方としては100点満点なんだろう。

というわけで、そこまで感銘を受けなかったが、今までにないタイプの反戦映画であったことは間違いない。戦争に興味を持ったのならばおすすめしてもいいかなと、あういぇ。

キャタピラー [DVD]

キャタピラー [DVD]