変態残酷拷問鬼畜ムービー『セルビアン・フィルム』

セルビアン・フィルム』をUK盤BDにて鑑賞。なんと日本円で1080円だった(送料込み)。

かつて人気を博していたポルノ男優が主人公。引退してキレイな奥さんをもらい、かわいい子供と共に幸せに暮らしていた。ところが収入に困っていた彼は、かつての仕事仲間に誘われ、外国市場向けの芸術的なポルノに出演することになる。大金持ちのクライアントの嗜好を満たすためという監督はいかにも怪しい人物で、さすがに一瞬だけ出演するかどうか迷うも、その巨額な報酬に目がくらみ、彼は契約書にサインをするのであった……というのがおおまかなあらすじ。

様々なところで、残虐的なシーンがカットされただとか、日本版はノーカットながらボカシが入るだとか、公開前から一部でかなりの盛り上がりをみせた作品だが、実は露悪的なシーンが散りばめられながらも、本編は相当まっとうな作り。ニコラス・ケイジの『8mm』のように一人称で物語はゆったりと進み、徐々にアンダーグラウンドの世界へ誘う。印象だけで言えば“残虐な『アイズ・ワイド・シャット』”という感じで、迷宮のように現実とは思えない世界を映画の中で行ったり来たりするというのはデイヴィッド・リンチのようでもある。さらに薬を盛られて数日間の記憶がなく、わずかな断片で自分の行動をさぐるというのは『ハングオーバー』や『メメント』にも通じる観客巻き込み型のサスペンスであり、これを物語の後半に持って来たことで、悪夢的なイメージをインサートしても違和感のない構成になっているところが見事。

物語自体はありがちというか、こういう風に転がっていくだろうなぁという作りなのだが、なんといっても、かつて人気だったポルノ男優という主人公の設定が良い。そして、そんな彼にも家族があり、生活があるという演出もおもしろく、子供がお父さんが現役だった頃の作品を引っ張り出してリビングで勝手に見ているという冒頭のシーンはとてつもなく素晴らしい。

さらに何気ないシーンが後の伏線になっており、セックスとファックは別物であるということを誇示したシーンやあくまでポルノ男優でいられるのはカメラの中だけという風に、主人公がそれ以外のシーンでは優しげな表情を見せているのもポイント。それとは正反対に後半、鬼気迫る表情でファックし続ける主人公の演技は素晴らしく、ここだけでも価値があると断言出来る。

さて、物語の骨格や見せ方、持っていき方などはわりかしオーソドックスであると書いたが、その上に乗っかってるトッピングはやはり強烈で、最低最悪最強の鬼畜映画という触れ込みも伊達じゃないことがよく分かる。しかも、なんとなくこうやってるんだろうなぁという映し方ではなく、スクリーン一杯にその様子を映し出すところが映画ならではの醍醐味というか、なんというか……まぁ、この辺は是非ご自身の目で確認していただきたいものである。

いろんなところで猛議を醸し出してるであろう、赤ん坊のシーンよりもぼくはラストの展開に戦慄を覚えた。正直、こちらの想像を遥かに超えていたよ。そんなことを考えつくなんて!この鬼!悪魔!鬼畜!変態!

というわけで、相当観る人を選んでしまうが、ぼくはハードゴアシーンのつるべ打ちにすっかり参ると同時に、これが見世物小屋だ!これが映画というショックなんだ!と感動してしまった。おすすめはしないが、決してつまらない映画ではない。『アイ・スピッド・オン・ユア・グレイブ』や『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』と一緒に観るとゴアゴアな気分になりますよ、あういぇ。