この監督の作る『GODZILLA』なら期待大!『モンスターズ/地球外生命体』
『モンスターズ/地球外生命体』をレンタルDVDで鑑賞。
ストーリーはNASAの無人探査船が地球外生命体を発見した2009年までさかのぼる*1。生命体のサンプルを持ち帰るも、無人探査船が大気圏突入と共にメキシコ上空で大破してしまったからさあ大変。その地球外生命体はものすごいスピードで繁殖し、野生動物のごとくメキシコ/アメリカで大暴れしはじめる――――その付近が危険地域として封鎖されてから6年後。すっかり様変わりしてしまったメキシコに、ある出版社のカメラマンがスクープを撮りに向かう。ところが彼に危険地域付近にいる出版社の社長令嬢をアメリカに連れ戻して欲しいという命令が下ってしまい……
『エル・マリアッチ』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』そして最近の『コリン』に連なる、恐ろしいほどの低予算ムービーであり、ある程度仕方ない部分もあるのかなと思いながら観ていたのだが、これが低予算をまったく感じさせない立派な娯楽SF映画になっていて、けなすところがほぼない、完璧と言っていいくらいの完成度でとにかく参った。正直『コリン』の監督に予算を渡しても次の作品には期待出来ないが、こちらには大いに期待したい。そりゃ『ゴジラ』の新作にも抜擢されるわけである。
ストーリーの概要から『第9地区』や『クローバーフィールド』に似ていると指摘されるだろうが、次から次に襲って来る難関を素人が出来る範囲で突破するという意味で、土台になってるのは『隠し砦の三悪人』であり、さらには危険地域を歩きながら静かに進んでいくというのはタルコフスキーの『ストーカー』でもある。特に長回しがあるわけでもないが、美しい風景を切り取ったり、水を大写しにしたり、引き絵を多用したりと共通点も多々あったりして、この名作に近年の侵略SF/怪獣映画がプラスされていればおもしろくなるに決まっているのだ。
低予算でありながら見せ場も要所要所にあり、とても1億円以下で作ったとは思えない。もしかしたら派手な映画を低予算に抑えてくれるという意味での『GODZILLA』での起用だったのではないかと勘ぐってしまうほどだ。冒頭のPOVでの戦闘シーンはまぎれもなく『クローバーフィールド』だし、ある種壊滅状態になってるメキシコの風景は『宇宙戦争』にも似ている。ほぼCGだろうが、座礁した船が出て来たり、車がモンスターによってぶん投げられたりするなど、とにかく見せ場は派手で、低予算映画というのをまったく感じさせてくれない。
さらにこの作品、驚くほどに無駄がない。物語の持って行き方が不自然じゃなく、自然とそうなるという必然性が感じられる。恐らく、この場面に持って行くためには、この場面を用意して、さらにその場面に至るには、この場面を用意して――――というような逆算でもって脚本を練りあげていったのではないだろうか。しかも説明的なセリフがなく、テンポのいいカット割ですべてを観客に分からせるため、フィクショナルな話に圧倒的なリアリティが加わるのも観てて小気味良い。というか、セリフは圧倒的に少ない。
ラストの展開はあまりにも……という人の意見も分かるが、それは個人的嗜好の問題であり、オープニングとの円還構造も含め、フィクションとして考えれば、ああいうラストは作品の欠点では決して無い。確かにド派手な映画を期待していると肩すかしを喰らうだろうが、ぼくは良く出来た映画という感想の方がどうしても前面に出て来てしまう。
というわけで、そのB級臭いタイトルと低予算映画という触れ込みで敬遠しているならば是非手に取ることをおすすめしたい。その触れ込みとは真逆で金のかかった地味なSF映画という感じで大変おもしろかったです。あういぇ。
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作品の成り立ちや情報はこちらに全部書かれているので、非常に参考になります。
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*1:フィクションです