ロックンロールしようぜ!『バトルシップ』

バトルシップ』鑑賞。ある日とつぜん空から巨大な物体が……そしてなかからエイリアンが……という、SFではよくあるヤツ。

主人公は映画史上最強なんじゃないかというくらいのボンクラで、底なしのバカ。兄のすすめで海軍に入隊するも、そのガキっぽい性格から海軍をクビになりかける。するとそのタイミングで宇宙から5つの物体が地球に接近し、そのまま海のなかに墜落。調査のために海軍の艦隊が近づくが、きゅうにその物体が艦隊をバリアでかこってしまう……というのがあらすじ。

主人公のキャラ設定同様、映画そのものがボンクラ仕様であり、ハッキリいって見せ場は爆破と破壊と美女のゆれるおっぱいくらいしかない。しかし!!それこそが映画なんだ!というひとにとって『バトルシップ』は最高のごちそうだといえる。徹底的に破壊されるシーンがあるから『スチームボーイ』は素晴らしい!というひとには特におすすめしたい。

監督は『キングダム』で映画ファンのド肝をぬいたピーター・バーグだが、そのあとに撮った『ハンコック』のように、基本的に演出はすべてにおいてわかりやすい。主人公たちの心情や行動はきっちりセリフで説明されるし、細かい表情の変化もクローズアップでしっかりと捉え、こちらにほかの解釈のスキをあたえてくれない。ある場所へ忍びこむときは「ピンクパンサー」のテーマがながれるなど、音楽のつかいかたも幼稚であり、この手の作品ではタブーとされてきたであろう「エイリアンがきただと!?」というセリフをいわせてみたり、これみよがしの固有名詞をバンバン登場させるなど、すべてにおいて対象年齢はかなり低めに設定されている。

ところが、この作品は意外にもセンス・オブ・ワンダーに満ちあふれているのだ。

近年CGの進化により、こちらの想像を遥かにこえる映像が年々更新されているようにおもうが、『バトルシップ』はそれをさらにひとひねりしたような表現がつづいていく。

たしかにパッと見は『トランスフォーマー』のようではあるが、さきほど書いたようにエイリアンは破壊のかぎりをつくしながらも、その破壊のしかたや、行動が、いちいち不可解で、こちらの予想をつねに超えつづけてくれる。ゆえに緊張感があり、こわさもあり、最後まで気がぬけない。ハンバーガーを食べにきたら、予想もしなかった具材がはいってて、それがサプライズ的にうまく、最後まで飽きずに食べれたという感じだ。

それだけでなく、ユニバーサル100周年記念作品ということもあってか、アクションの見せかたも新旧織りまぜた表現が連発され、CG一辺倒になっていないのもポイント。それが顕著になる中盤のコンピューターの画面上での攻防は、元のボードゲームを取りいれた手に汗握るいいシーンであり、さらにそこからベテランからも仕事をまなばなければならないという映画製作のメタファーのようなシーンにつながっていくのだが、このへんはぜひ本編を見て確認していただきたい。

というわけで最近の『バトルロサンゼルス』や『スカイライン』の並びではいちばんゴージャスでおもしろかった。とくに中盤から後半は男心をくすぐるようなもえるシーンが連発され、おとこ泣きは必至。おおきいスクリーンと爆音も必要条件なので、出来ればちいさいスクリーンにうつる前に、ロックンロールしようぜ!*1

*1:本編に登場するセリフ