小野恵令奈の所信表明『えれぴょん』

小野恵令奈のデビューシングル『えれぴょん』を聞いた――――正確にいうとテレビから流れてきたというべきだろうか。

いやぁ、ぶっちゃけナメてました。タイトルが自身の愛称である『えれぴょん』で、さらにアイドル全開のかわいらしい振り付け。あげくのはてにボーカロイドを意識したエフェクトなど、女優になるんじゃなかったんかい!とツッコミをいれたくなる感じだが、驚かされたのは歌詞。自身で作詞したというが、はじめての作詞とは思えない出来で、ものすごいセンスを感じさせる。リアルタイムでSPEEDのhiroのはじめての作詞を見てずっこけたぼくにとっては、おいおい、アイドルってこういう歌詞も書けるようになったのかと感動を覚えたほどだ。だてに秋元康の詞をうたってきたわけではないのだ。

アーティストが自身の心情を吐露するというのはよくあるが「絶望した日々もあったけど、たった一人でも応援してくれるのならば、それでいい」という意味ではthe pillowsの『ストレンジカメレオン』を彷彿とさせる。ハッキリ言ってアイドルのデビュー曲とは思えないほど内省的な歌詞である。

小野恵令奈はAKBの元・人気メンバーだった。

総選挙でも上位にランクインし選抜入りを果たし、あの傑作『さんかく』にヒロインとして出演。この出演をきっかけに女優として開眼し、その演技力に磨きをかけるため、海外留学するために卒業――――という流れだったのだが、卒業したあとに出てきたのが、いわゆるスキャンダルというか、彼氏の存在であり、彼氏を取るか、AKBを取るかで彼氏をとったんじゃないかという噂もまことしやかにささやかれた。

http://akb48matome.com/archives/51761026.html

――――真相はやぶの中ということなのだろうが、実際留学もしておらず、さらに再デビューが女優ではなくアイドルだったことに推しだったファンはずっこけてしまっただろう。

だが、そういった一連の流れを汲んだうえで聴くと、アイドルアイドルした曲に、ああいう歌詞をのせたのもすんなり理解できる。

女優を目指すという“言い訳”の元、AKBを去り、彼氏との生活を堪能したうえで、別れがやってきたかどうかはさだかではないが、恋愛という熱が冷めたことで、再びアイドルになりたいと思ったことは想像に難しくない。なぜならば小野恵令奈は当時からファンを大事にすることで有名で、記者の「ああいうファンってキモくないですか?」という質問にたいしても怒りをあらわにしたくらいだからだ。

今回のデビューシングルは小野恵令奈のアイドルとしての所信表明を感じさせる。しかもそのタイトルがずばり『えれぴょん』これは「小野恵令奈はみんなのアイドル“えれぴょん”という虚像を背負って生きていきます」という決意に他ならない。ただ単に奇を衒っただけのタイトルではなかったということだ。アイドルとして再デビューしたことで、今まで通りの人気が獲得出来るのか?もしかしたらファンの人は離れてしまったのではないか?そういった不安な心情までも歌詞の中に組み込まれており、それを雨と虹という比喩によって表現するなどかなり巧みである。

というわけで、意外な作詞のセンスは棚からぼたもちということだったのだろうが、次の“えれぴょん”のシングルが楽しみになったのは事実。これからもキラキラパワー全開で頑張って欲しいものである。

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