『イップ・マン 誕生』をレンタルDVDにて鑑賞。
ブルース・リーの師匠として映画ファンからは有名なイップ・マンを主人公にした『イップ・マン 序章』と『イップ・マン 葉問』のエピソードゼロ。まだ道場をかまえる前の若き日のイップ・マンを描いた作品。
ドニー・イェンとウィルソン・イップという強力な主演/監督コンビが抜け、代わりにカルト作で名を馳せたハーマン・ヤウがメガホンをとり、詠春拳の使い手であるデニス・トーを主演に迎えたことで、その作品の風格やダイナミズムが欠けるのではないかと危惧したが、結果としては傑作に仕上がったといってもいいのではないだろうか。『序章/葉問』はたしかに天井近くの完成度まで登り詰めた大傑作だが、それにすこし劣るくらいなのだから、充分にその水準は満たしているといえよう。
セットにお金がかかっており、しっかりとした映像がメインなのはあいかわらず。特にカンフーシーンのカメラワークが斬新で、クレーンの俯瞰映像をつかいながら、長回しで次々にそれぞれの組みの戦いを移動しながら映していくというのは衝撃を覚えた。早回しを多用しているのがすごく残念だが、それ以外ではワンカットも長いし、往年のカンフー映画ファンも納得いく仕上がりになっている。
ドニー・イェンは出ていないものの、その他のキャストは豪華なメンツを揃えた。特にサモ・ハンとユン・ピョウの共演は見応えありで、両者が目隠しをしながら一戦交えるシーンは鳥肌もの。主演のデニス・トーやルイス・ファンなど、『序章/葉問』からのキャストも再登場し、ラム・シューといった名バイプレイヤーが脇を固める。イップ・マンの息子も90歳ながらついに映画に登場。その技を存分に見せつけてくれる。
惜しむらくはその『序章/葉問』からのキャストがほとんど変わらない造型で別人を演じているということ。正直、一瞬ここはパラレルワールドなのかとパニクってしまう。元々デニス・トーも『序章/葉問』に出ていて、しかもそれぞれ違う役だったらしいし*1、特にサモ・ハンは『葉問』において、イップ・マンと敵対する師匠役なのに、今作ではまったく変わらない見た目で、イップ・マンの師匠役になっているのだから余計にややこしい。まぁ、それが香港映画のスタイルと言われればそれまでなのだが、ルイス・ファンにしたって、イップ・マンと対決し、その後、慕う役なのに、兄弟子の役だし……
ドラマ部分も恋愛模様のシーンは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズを彷彿とさせるかわいらしさがあるのだが、ラストの取ってつけたようなドンデン返しはわりとどうでもよく、思いつきだったのか、ハーマン・ヤウという監督が映画を壊しにかかったのか、明らかに浮いている。そういった部分において、今ひとつ感があったことは確かに否めない。
が、それを補って余あるパワーに満ちあふれていたのも事実。シリーズを見ているならば見て損はない一作だ。おすすめ。
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- 発売日: 2012/05/02
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*1:正直、その辺まったく覚えてない……10回くらい見ているのに……