夏休みはまだ終わっちゃいないぜ!『アベンジャーズ』

アベンジャーズ』鑑賞。いわずとしれたスーパーヒーロー大集合の作品。

ぼくはこの手の映画は好きで率先して観にいくけれども、その反面。心の底からおもしろかったぁ!と思ってスクリーンを出ることはそんなになく、逆にいえば、ある程度のおもしろさを分かってて観にいっているみたいなところがどっかにあった。故に、世間的に大絶賛されている『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』や、サム・ライミの『スパイダーマン』シリーズもいうほどテンションが上がったわけではないし、今作の布石となっている『アイアンマン』も『マイティ・ソー』も『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』も、そこそこ楽しんだクチである*1

しかも個々の作品のエンドロール後やエンディングで『アベンジャーズ』への予告ともいうべきボーナストラックがしこたま公開され、否が応でも作品への期待が高まるように仕向けてるというか、自らそんだけハードルを上げといて、おいおい大丈夫かという危惧もあり、ぶっちゃけあまり期待をせずに観にいったわけなんだが……

結果、大満足!今までの「うーん、おもしろいんだけどなぁ……」というのが一気に解消された、最高のお祭り映画だった。

まぁ、なんていうんでしょう、盆と正月とGWが一緒にやってきたかのような高揚感があり、昼から寿司、天ぷら、すき焼き、ピザ、ケンタッキーが夜までぞろぞろ出てくるみたいなサービス精神の塊。これだよ!これが映画なんだよ!というカタルシスの連打に思わず涙腺が緩むなど、エンターテインメントとして、これ以上何を望むか?という決定打のような作品になっていた。なるほど、これだけの映画を作るわけだ、そりゃ、あれだけ前フリもして、「日本よ、これが映画だ」というコピーもつけるわな。納得。

言ってみりゃ、個々のスターは松坂牛と比内地鶏東京Xみたいなもんで、それぞれ三者三様の食し方があり、ヘタにこれですき煮なんて作ろうもんなら、その食材は無駄になるわけだが、それぞれの素材を活かした脚本は実にうまく調理されすっきりしている(もちろん多少の穴もあるが)。特にトニー・スタークのキャラクターがここで完全に活きたといってもいいだろう。笑えるシーンもてんこ盛りであり、ヒロインとの恋愛をバッサリ切り捨てたのも勝利した要因だといえる。

演出でいえば、トラックアップを多用して、奥行きを出し、セットを広く見せたりと、ヒーローの存在感に負けないような空間の作り方を丁寧にしている。さらに感動的なシーンでもあまりウエットにならず、かといってドライにもならないバランスのいいドラマ部分、そしてド派手ながらも、きちんと交通整理したカットバックで盛り上げまくるアクション部分ということなし。『トランスフォーマー』や『ダークナイトライジング』に足りなかったのはこれだったのだ。

というわけで、作品を観るまでの予習に時間がかかるが、これまでの作品を普通に楽しく観て来た人にとってはごちそう以外の何者でもない規格外のエンターテイメント。個人的に『マイティ・ソー』は観ておかないとキツいかなと思うが、基本的にキャラクターの設定や関係性などはある程度セリフで説明されるので、脳内でそれを補完しながら観ても問題ないと思う。もう、夏休みも終わりに近づいているが、絶対にスクリーンで観て欲しい作品だ。

*1:インクレディブル・ハルク』にいたっては未見という体たらくっぷり