ジェイクとエルウッドは大人になる『ザ・マペッツ』

『ザ・マペッツ』をレンタルDVDで鑑賞。

田舎町でマペットのウォルターと兄弟同然のように何十年も暮らしてきた男が交際10年の恋人と旅行に出かけることになった。そこにウォルターも同行するのだが、子どもの頃に見つづけてきた番組『マペット・ショー』の熱狂的なファンであるウォルターは聖地巡礼として、LAのマペットスタジオをおとずれる。しかし、そのマペットスタジオはもう廃墟寸前であり、かつてのような華々しい場所ではなくなっていた。好奇心から立ちいり禁止の建物に入ったウォルターは偶然、そのスタジオを買い取りマペット博物館にするという石油王の話しを盗み聞きしてしまう。かつてのマペット復活に大喜びしたのもつかの間。実はそのスタジオの下には石油が眠っており、このスタジオを一刻も早く壊して、石油を掘り出そうというのが彼の考えていることだった。スタジオをふたたび買いとるには1000万ドルもの大金がかかるという……そのためウォルターはかつてのマペット・ショーのメンバーを探しに、LA中をかけまわるのであった……

古巣が資金不足のために取り壊される寸前のため、かつての仲間を集めて、ショーを開催し、金を稼ごう……というプロットはそのまんま『ブルース・ブラザース』であり、それの人形版リメイクといって差し支えないほどであるが、ジェイクとエルウッドが良い意味で子どものままなのに対し、『ザ・マペッツ』では登場人物たちの成長がメインで、大人の階段登るというのはこういうことなんだという良いお手本のよう。

人形劇であることに徹底しており、そのアナログ感がいささか古臭いが、その古臭さも作品内における「マペット・ショーなんて時代遅れなもん誰も見ないよ」という部分とシンクロしており、物語に取り込んでいる。

こちらが思ってることを物語に取り込むといえば、とてもおもしろかったのが、メタ的な視点である。

なぜか、この物語のキャラクターたちは、これが映画だということを作品内で認識しており、「ここは説明的なセリフだな」とか「今の爆破にはそうとう金がかかったに違いないな」とか「ここからは尺を喰うからダイジェストでいこう」など、いちいち映画であることをわかったうえでセルフツッコミをする。物語は王道中の王道であり、かなり都合がよく、全編これ予定調和といえるくらいだが、その予定調和感をすべて笑いに転換するあたり、とても新鮮であったし、かなりうまい。コメディ作品であるからこその荒技だと思うが、それが顕著だったのはパリに車でむかうシーン。いくらなんでものありえなさに唖然とした。ここは映画を観てからのお楽しみとしておきたい。

が、その都合がいいお話をベースに、後半はもちろん思った通りの展開になるわけなのだが、その思った通りが、こちらの予想を遥かに越えるくらい壮大なもので、その壮大さに思わず涙腺が決壊。これにはやられた。映画のカタルシスというのは思わぬところでやってくるんだなと改めて思わされた次第である。

というわけで、笑って泣ける最高のエンターテインメントに心から拍手。おもしろいものはいつまで経ってもおもしろいというディズニーの直球のメッセージにもやられた。大人から子どもまで誰でも楽しめるのが強み。おすすめです*1

*1:ぶっちゃけ、ぼくは元のマペッツをまったく知らなかったので、楽屋オチ的な部分がまったくわからなかったが、それでもすごく楽しんだ。でも、子どもの頃からああいうのを観てる人にとってはおもしろさと感動が50倍だと思うので、その辺の人の感想を知りたい