枯渇しないイマジネーション『プロメテウス』

『プロメテウス』を3Dの吹替版で鑑賞。

一応ティーザーや宣伝では伏せてるみたいだけども、ハッキリいってしまうと『エイリアン』の前日譚であり、セルフリメイク作品。

リドリー・スコットといえば『エイリアン』と『ブレードランナー』というエポックメイクなSFを二本も作り上げた監督なのだが、その後、そのイメージを払拭したかったのか、それとも『ブレードランナー』が興行的に当たらなかったからなのか(後にカルト作として熱狂的なファンを多く生むことになる)、SFと呼べるジャンルのものを一切撮ってこなかった。

ぼくも含め、ファンとしては「もしリドリー・スコットが今の技術でSFをふたたび撮ったらどんな作品になるだろう」ということを想像するわけだが、だからといって、近年、史劇やギャング映画、戦争映画など、様々なジャンルを生き直し続けている監督がエポックメイクなもんを作ったあとで、ふたたびSFに戻るとは考えられず、まさか『エイリアン』の前日譚をつくるなど予想もしていなかった。

今回「もしリドリー・スコットが今の技術でSFをふたたび撮ったらどんな作品になるだろう」という誰もが待ち望んでいたものに加え、あの『エイリアン』を語り直すという、もう一段階高いハードルが設定された。御大もすでに74歳。SFビジュアリストとしてどのような画を作るのかという部分において、期待と懸念が入り交じりながら鑑賞したのだが、これがこちらの想像を遥かにこえた傑作に仕上がっていた。

確かに登場人物の行動について、意味が分からないところが多々あり、それが伏線だったのかと思うと、そうではなく、中盤の船長の行動や、アンドロイドがアレを指にちょんとつけて飲ませるとか、最後の最後まで謎として残しておいて、観賞後にみんなでディスカッションさせようという意図とは思えないようなものばかりで、ガブの折り紙のような、これ見よがしなものはほとんどない。最後の最後で覚悟を決めるあの人とか、あまりに急すぎて、観ていてずっこけそうになってしまった。それを良い方に解釈するか、悪い方に解釈するかで意見は割れるであろう。

が、そういった部分を吹き飛ばす、圧倒的なセンス・オブ・ワンダーの連打がこの映画の最大の魅力だ。

『プロメテウス』は壮大なイマジネーションとスケールに加え、いわゆる『エイリアン』が持っていたグログロB級テイストとしてのおもしろさがプラスされたド級のエンターテインメントである。今までも過去の名作への目配せはあったが、今作は明らかに『2001年宇宙の旅』と『惑星ソラリス』への挑戦があり、そこに自分が持ってるビジョンを全力で投入。リドリー・スコットの才能は枯渇することなく、未だに湧き水が溢れかえっている。最新技術を使いつつも、その画はまぎれもなくリドリー・スコットのセンスが爆発したものであり、若干のレトロ感も含め、あの世界観にはほとんどの人が満足したのではないか。

何よりも『エイリアン』ファンをニヤリとさせるサービス精神がハンパじゃない。前作のドンデン返し的なキャラクターでさえも、最初からアンドロイドとして分かるようにしたり、展開から何から徹底している。むしろ『エイリアン』を観ていないとついていけない部分すらあるように思える。

というわけで、SFのクラシックとしても、『エイリアン』のセルフリメイクとしても、グログロのB級テイストとしても観れてしまう『プロメテウス』は今公開されてる作品の中ではダントツでおすすめ。個人的には動くHAL9000ってな具合のファスベンダーのアンドロイドっぷりに星三つです!

ちなみにゴーリキーの吹替は最悪でした。