POVが持つ弱点を克服した大傑作!『Chronicle(クロニクル)』


『Chronicle(クロニクル)』をUK盤BDで鑑賞。日本語字幕と日本語吹替もばっちり収録。

のっけから言わせてもらうと大傑作!!

ストーリーはいたってシンプル。いきなり超能力をもってしまった高校生三人組がその力を映像に記録しようと、ビデオカメラやiPhoneを使って、ひたすら録画しつづけるという内容。ランタイムも84分とタイトなつくりで展開も早く、POVとなると若干時間を引き延ばすような演出も多く見られるがこの作品にはいっさいそれがない。

POVの超能力モノということで、かなり奇をてらってる作品と思うかもしれないが、とにかく脚本がよくできている。もし高校生がスーパーパワーを持ってしまったら何をするだろう?というリアルな考察だけでなく、登場人物のバックグラウンドもしっかりと描かれる。物語の流れは流れるべくして、流れ、しっかりといきつくところにいく。映像がかなり特殊なだけに、その辺の骨格は頑丈に構築されているようだ。観客の興味をラストまで引っ張りつつ、全編にセンス・オブ・ワンダーを散りばめ、1秒も飽きさせない。完璧な作品。

この作品がすごいのはPOVが持つ弱点を克服したところだ。

いわゆるこの手の映画でこれをやると、いったい誰が撮影しているの?とかなんでカメラを手放さないの?という疑問が出てくるわけだが、この作品は超能力を持つ男が自身の力をカメラに記録しているという設定なので、カメラを手に持つということを基本的にしておらず、『スーパーマリオ64』のように、つねにカメラが主人公のまわりをプカプカ浮いている。なので時にクレーンショットのように俯瞰したり、360度パンのようにくるくるまわったり、とても映画的なキメカットが連発される。しかもPOVなので全体的にカットは長めで、何気ないシーンでも緊張感が出るという利点もあり、この作品はその設定とPOVの特性が見事にかみ合った唯一の好例といえよう。

あまり詳しくは書けないが後半は逆で、今度は映画的なカットは全部封印し、それこそ『クローバーフィールド』のように、その場にいて、たまたま偶然撮影してしまったというような映像が連発される。もちろんその場で起こってることは思いっきりフィクションなんだけど、やじ馬の携帯カメラや、パトカーの車内カメラ、防犯カメラ、ニュース映像など、ありとあらゆる映像を駆使して、ホントに目の前で起こってるかのようなリアリティを醸しだしている。

童夢』や『AKIRA』から影響があると監督が語っていたようだが、まさにその通りで大友克洋が描いてきたイメージも出てくる。壁が球形に歪むとか、病院服で「オレにかまうなぁぁぁ」と叫んだりとか。両方ともハリウッドで映画化が進んでいるようだが、これが出てきてしまったことでそうとうハードルが上がってしまったんじゃないかなぁ。

というわけで、日本公開はまだ決まってないようだが、是非公開されたら劇場に足を運んでいただきたい。今年のベストワン!ってくらい、とてつもなくおもしろかった!!ちなみにBDにはエクステンデット・バージョンなるものが収録されているが、UK盤を買いたいというかたはこちらを観ることをおすすめする。『マトリックス』みたいに飛んできた弾丸を止めるというちょーかっこいいシーンがあるし、なによりも裸のねーちゃんが映ってるんでね!

予告編には裸が映ってるんだけどなぁ…

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http://blog.livedoor.jp/notld_1968/archives/7108746.html