「GONIN」以降、これを待っていた!『黄金を抱いて翔べ』
『黄金を抱いて翔べ』鑑賞。
石井隆監督の『GONIN』という映画がすごく好きである。
今回『黄金を抱いて翔べ』を観て、改めてDVDで見返したのだが、その想いをさらに強くした。
観ている最中から思ったことではあるが、金塊を強奪するワケあり6人組を描く、いわゆるケイパーものであり、高村薫の原作があるものの、その内容とホモソーシャル感、はたまた、どんずまりの不景気になってしまった現代に設定したことで(『GONIN』は舞台がバブルがはじけて行き場を失ったキャラクターたちがヤクザの金を強奪するというストーリーである、恐らく原作もそのくらいの時代)、奇しくもその『GONIN』とかなり内容がかぶる作品に仕上がった(そもそもこういうストーリーは古今東西たくさん映画化されてはいるのだが)。
つまりである。この『黄金を抱いて翔べ』は井筒流の和製ハードボイルド・ケイパー・ノワールであり、まさにそのもののジャンルムービーが好きな人にとっては間違いなく、待ってましたと言わざるをえない内容で、さらにはそういう映画を知らない新規たちにとっては、入門編と呼ぶにふさわしい出来になっている。
大阪が舞台ということもあり、その土着感を知りつくしてると言っても過言ではない井筒組のロケハンはほぼ完璧で、スケールこそデカい話ではあるが、ハリウッドの二番煎じ感はひとつもなく*1、むしろ、日本を土台にしたアクション・エンターテインメントとしてはサイズ的にピッタリで、そこに井筒監督お得意の唐突なバイオレンスが炸裂。スマートフォンやパソコンも登場するなかで、それが場面に出てこなくても違和感ないような作り(実際、携帯使えよ!っていうつっこみを入れるヒマもなく、ドキドキしっぱなしだった)になっており、物を爆破するというリアル指向の爆破シーンも含め、ホントに古き良き時代の映画を現代で堪能させてもらった。
イケメンを揃えながらも役者たちの演技はほぼ完璧。それまではチャラついたガキくらいにしか思えなかった溝端淳平はこの役で役者としてもう一段階ハネたといってもいいほどの存在感で、桐谷健太はあいかわらずのこまっしゃくれたちょい三枚目を見事に演じきり、その顔に悲壮感を漂わせるチャンミンは映画初出演とは思えない見事な演技を披露し、何よりも、この世のすべてをぶっこわしてやりたいとつねに鬱屈している妻夫木聡とチームを牽引する“アニキ”な感じの浅野忠信もとにかく素晴らしい。
ハッキリ言うと中盤、あまりの情報量を整理しきれてないかなとは思ったが、スピード感だけを重視した展開/編集など、奥山和由が製作したのか?と思うほどの“あの頃”の日本映画の熱量がここにあった。良い意味で中途半端に射精させてもらえなくモヤモヤしっぱなしだった『ヒーローショー』の地続きのような映画であり、それを中盤からラストにかけて一気に発散させるなど、フィルモグラフィ的にもベストな流れ。映像の暗さやモダンな音楽はフランス映画のかほりが漂い、さらに男たちの汗臭さやギラギラした目つきは古きよきアメリカ映画をも思わせるという井筒監督作品を形容するときに使わないような言葉の装飾がパソコンを前にして止まらない!
今、日本でこういう映画ができてしまうのか!という感動と興奮も含めて、盛大におすすめ。チャンミン好きもイケメン好きもそこからの入り口でもいいから是非映画館に観に行こうず!
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*1:『ホワイトアウト』とか『ミッドナイトイーグル』とか