いろいろ気になる個所はあるが高水準なドラマ『サニー 永遠の仲間たち』

『サニー 永遠の仲間たち』をレンタルDVDで鑑賞。

専業主婦として何不自由ない日常を送っていたナミ。アラフォーになり、どこかでポッカリ穴の空いたような感覚を持ちはじめたある日、入院する母を見舞いに行った際に偶然高校時代“サニー”というグループ名でつるんでいた仲間のリーダー格であるチュナを発見する。25年ぶりの再会に驚きと喜びを隠せないナミだったが、なんとチュナは余命2ヵ月のガンに侵されていた。この再会を運命と感じたチュナはナミにひとつだけお願いごとをする。それは死ぬ前に「サニー」のメンバーと再会させてほしいというものだった………

今年、日本で公開された作品のなかでも熱狂的な支持を得ており、ふだんなら「余命いくばくもない友達のために昔の親友を集める」なんて話は絶対に観ないのだが、あまりの好評価に引っ張られるかたちで思わずレンタルした。

のっけからハッキリと言わせてもらうが、ストーリーにはかなり無理があるというか、ご都合主義がやたらと目立つ。

最初のほうで韓国特有の『冬ソナ』的ドラマを揶揄しており、そういうドラマをフォーマットにしつつ、その流れにはさせないぞという意志は感じるのだが、メインとなる“サニー”のメンバーの内、三人が金持ちで、主人公たちにふりかかる困難をすべて金で解決してしまうというのはイヤミも感じられるし、わりと展開的にも一辺倒になってしまう。

それだけじゃなく、唐突に感じられたり、あれ?そのあとどうなったの?というようなシーンもいくつかあり、例えば中盤くらいで“サニー”のメンバーが、あるキャラクターをボコボコにして警察のお世話になるが、ある程度、地位も安定した生活もある人たちが、そういう行動を果たして取るだろうか?とも思ったし、あれだけのことをしたら、その後の処理なんて絶対に大変だったはずで(まず旦那さんにそういうことがありましたという話がいって、おい!もう絶対にお前らつるむなよ!みたいなことはあってもおかしくない)、そういう彼女たちにとって都合が悪いことをドンドンすっ飛ばしていくのがノイズとなり、物語にやや集中できないところがあったことは否めない(もちろん過去にさかのぼって、元々ムチャする人たちだったというのを描いていたとしても、それは別問題)。

しかし、そういった部分がノイズになるというのは、あまりにも他のところが突出してよく出来ているだけに目立つだけであって、基本的に作品の水準は恐ろしいくらい高い。まさにハイ・スタンダードな作品であるといえる。

冒頭、主人公がどのような日常を送り、どのようなことを考えているのか?というのを名曲『タイム・アフター・タイム』をバックに映像だけであらわしていくのだが、食パンを窓際でかじりつつ、女子高生がキャッキャしてるのを見ながら微笑み、そこで「サニー」のタイトルが出てくる……この4分間のつかみは完璧といっていい。

それだけでなく『暗殺の森』よろしく、現在と過去が交錯する展開はデ・パルマのそれのような映像テクニックでもって繋いでいき、ごく自然な流れで時を飛び越える。かっこよさがかなり感じられるがやりすぎておらず、鼻につく感じにまったくなっていない。

ほとんど説明的なセリフを廃し、ささいなシーンがすべて伏線になっているなど複数回の鑑賞にも耐えられる作りであり、リピーターが続出したのも頷ける。

それをすべて体現した役者全員は完璧な演技。それぞれの役割とキャラクターをキッチリ理解しており、これをイヤミのないようにバランスよく振り分けた演出ぶりも洗練されている。この作品に出た人たちはその後、これを超えられるようなキャラに巡りあえるのか?といらん危惧をしてしまうほどであった。

正直いって、地方のなまりや韓国の文化そのものを分からないとついていけない部分もあるが、80年代韓国の風俗描写が素晴らしく、ある程度のところはこの映画でカバーできてしまっているのもこの作品の強み(整形がどれくらいメジャーなものなのか?とか、どういう風に歴史が動いていったのか?とか、地方と都会の格差とか)。

というわけで、苦言も呈したが、やはり評判通りのよく出来た作品であった。個人的にラストは許せないが、セレブの夢物語として描いた『セックス・アンド・ザ・シティ』に比べれば、地に足のついた物語なので、万人におすすめ。


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