ぶっちぎりに「すごい」映画だ!『Evidence』

『Evidence』をUK盤DVDで鑑賞。

ついこないだ2012年のベストムービーを発表したばかりでアレだが、いやはやとてつもない映画をこの年末に観てしまった。見終わったあとにこの映画についてこんなに誰かと語り合いたくなったのは久しぶりのことである。「すっごい映画だった」なんてのはみんなもよく口にしているだろうが、これほど「いやぁ!ホントにすっごい映画だったね!」という言葉が似合う作品もないだろう。それほど圧倒され、衝撃を受けた。いつ発売されたソフトなのかは分からないが、今年の映画としてカウントしてもいいのならば文句なしのベストワンである。

この映画は元々日本で公開されてないような映画を率先して観てブログを書いているナマニクさんとnotld_1968さんに教えてもらった。

Evidence | ナマニクさんの暇つぶし


http://blog.livedoor.jp/notld_1968/archives/4556558.html

今年は例年に比べ、わりとそういう映画をちょこちょこと観ていたのだが、それはすべてこのお二方からの受け売りによるもので、まぁ、このお二方がおもしろい!と太鼓判を押している作品にハズれはなく、『セルビアン・フィルム』なんかは今年のベストに入るくらい素晴らしかったし、『ザ・レイド』や『マーサ、あるいはマーシー・メイ』もnotld_1968さんのブログでその存在を知ったくらいで、ホントにパク……いや、参考にさせてもらっている。

そのお二方が「今年何度も何度も繰り返しDVDで観た!すっごい映画だ!」としきりに推していたのがこの『Evidence』という作品だった。

奇しくも今年のベストにPOVの『Chronicle』と『Project X』を入れたのだが、この『Evidence』もいわゆるそのスタイルであり、今年のPOVベスト3と言われていたので是が非でも観たいと思っていた。

しかし、この作品。ナマニクさんの情報によると、劇場公開を視野にいれてないらしく、DVDか動画配信で見ることを前提に作られており、輸入盤を取り扱うサイトには売っておらず、さらにUS盤も存在しない。つまり観るためにはAmazon.UKから直接買わないといけないのである。

その時点でも結構なハードルなのに、さらにDVDはUK盤。観るためにはリージョンフリーのデッキかMacが必要になるという始末で(ちなみにぼくはMacで観た)、基本的には好き者しか観れないというのが現状である。しかも日本語字幕はおろか、英語字幕すらついてないというのもあって、さすがに躊躇していたが、これはホントに買って大正解だった。

出来れば良い環境で観たいというのはぼくも同じであるが、まず、この作品。動画配信などを前提に作られてるだけあって、パソコンで観た方がよりリアリティが増す。ヘタしたらiPhoneとかで観ても恐らく問題ないくらいである。

さらに字幕の問題だが、なんとこの作品は基本的にセリフがない。冒頭は4人の若者がキャンプしているというシーンなので、それなりに喋るが、キャンプファイヤーをしながらキャッキャ騒いでいるだけであり、まったく気にならない。そして後半はオーマイガー、カモンレッツゴー、ファックしかなく、あとはひたすら叫び続けるだけ。もし字幕がついてないということで観るのをためらってる人がいるならばそこはまったく問題ないということだけは言っておきたい。

さて、冒頭にも書いたようにこの作品、マジでホントにすごかった。ストーリーは4人の若者がキャンプをし、ひとりがそれをドキュメンタリー映画っぽく撮っているところからはじまる(なのでよく映画のメイキングなんかで見る、ひとりひとりが座ってインタビューに答えるなんてのもある)。最初はのほほんとしているが、中盤からキャンプしている森の四方八方から得体のしれないうめき声が聞こえはじめ……というまぁよくあるヤツである。

ベースとなるのは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』であるが、何も起きてないことが怖かった『ブレア〜』とは真逆で『Evidence』はありとあらゆることがこれでもか起こりまくる。「クローバーフィールド」、「28日後」、「ブラックホーク・ダウン」、「死霊のはらわた」が一気に押し寄せてくる感じだが、その分量、スピード感はハンパではなくジェットコースターなんてもんじゃない。考えるヒマもなく次から次に起こるので、それこそ見終わったあとに「いやぁすごかった!」という言葉しかでないのである。

が、あまりに阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるため、さすがにカメラ置いて逃げろよと思わなくもない。基本的に登場人物は全速力で走り続けるが、なんでその状態であんな画を維持出来るんだよ!というのは誰でも思うだろう。あげく車があるのに車を使わないなど(一応その理由は軽くであるが出てくる)、おいおいというところもあって、そのへんドキュメンタリー映画を撮るという設定にした『ブレア・ウィッチ〜』はうまかったんだなと改めて思い知らされた。

そういったあからさまな欠点は否定出来ないものの、それを遥かに上回るパワーは圧巻。構成や展開が『キャビン・イン・ザ・ウッズ』にも似ているなと思ったがもしかしたら影響を与えたのかもしれない。どのようなスタンスで監督がいるのかは不明だが、元々劇場公開を視野に入れてないのならDVDスルーでもいいからすぐに誰にでも観れるようにしてほしいものである。断固支持!


ちなみにタイトルの「ぶっちぎりにすごい映画だ!」というのはタランティーノが『少林サッカー』にたいしていった発言の引用です。