びっくらこきまろ〜『Catfish』

『Catfish』をUS盤BDで鑑賞。異色ドキュメンタリーで日本未公開。

新作映画の情報は入れないようにしているので*1、風の噂でそのような映画があるくらいしか知らなかったんだけど、一部好き者の間でレビューがあがりはじめ、これはホントにおもしろそうだとなんとなく頭の片隅にそのタイトルだけはインプットされた。

しかし、当然ながら日本では公開の気配すらなく(あったとしても東京のごく一部の映画館だろう)、いかんせんUS盤BDには日本語字幕はついてないわ、あげくドキュメンタリーだわで、こりゃ観たとしても内容を把握できないだろうと半ば諦める形で放っておいた。

そんなこんなで月日が流れ、酔った勢いでAmazonを観ていたら、なんとその輸入盤が普通に売ってるではありませんか!「ぼくの知らない間にAmazonは輸入盤を取り扱うようになっていたのですね!」と脳内に響き渡る声。しかも価格が1700円。酒の力とは怖いもので、あれだけ買うのを躊躇していたBDは1-Clickというボタンの手助けもあり、数週間後には自宅に届いていたのであった(もっと早く届くと思った、Amazon.comとかわんねー)。

買って届いたはいいものの、結局、英語字幕なんだよなー……ってのと、買ったことによる安堵感でもって、棚に放り込んだまま数ヶ月。ようやく昨日、この年末にだ。未公開映画を見続けたテンションも手伝って、わかんなくなったら途中でやめたれくらいの気持ちで鑑賞しはじめた。しかし、この映画。途中でやめたれどころかグイグイ引き込まれ、結局最後までそのまんま観てしまった。単純に映像と展開がものすごく分かりやすかったのと、そもそもお話がとてもおもしろかったのである。

前フリだけでひとエントリいってしまいそうなので、あらすじをすごーく雑に書くと、フェイスブックで出会った女の子に恋をした男が主人公。その娘は地元でモデルとミュージシャンをやってるというが、送られてきた曲があまりによく出来ていたため、地元どころか、もしかしたらアメリカではちょっとした有名人なんじゃないかとネットで検索。するとyoutubeにその曲があり、別人の名義で歌っていた……一体どういうことだ?彼女は何者?というお話。

内容などはそれこそ「Catfish ネタバレ」で検索していただくとして(映画の大オチまで書いてあるものもあるので注意が必要)、ネットで知り合ってオフ会が開かれるのが当たり前になり、スマホの普及もあいまってフェイスブックが流行りだした今だからこそ観ておくべき映画なんじゃないかと思った。ある程度話の流れは汲み取れ、途中から展開も読めるが、実はそのあとが問題で。そこにある真実は「生きてれば誰もが思う/願うこと」というのもあって、普遍的かつ残酷であり、描かれているテーマはかなり深い。

抽象的に書かせていただいたが、映画としてはまずデザインがすこぶるかっこいい。フェイスブックのお話なので、頻繁にパソコン画面が登場するが、それを使い、良い意味でスタイリッシュに仕上げた演出はわりと斬新かもしれない(そもそもgoogleが展開してるコンテンツがやたらデザインがいいというのも要因かと)。ユニヴァーサル映画の地球のロゴがGoogle Earthになっているオープニングでいっきに心をわしづかみにされた。

あとドキュメンタリーと銘打っておきながら、展開がものすごく劇映画的であるのも特徴で、当然最初はフェイスブックで知り合ったかわいい女の子に胸をときめかせるので、ほのぼのしているが、次第にこの娘は何者なのだろう……という部分になるとサスペンスやミステリーのように怖くなり、中盤からは悲しくて、残酷で、ほろ苦いが、最終的にはほっこりとした気持ちになる。音楽もそれにあわせておどろおどろしくなったり、ゆったりしたりと場面にあわせて使いわけていて、監督がこのあとに『パラノーマル・アクティビティ3』の監督に起用されたというのも頷ける。

というわけで英語ワカンナイのに最後まで観てしまった『Catfish』はおすすめなんだけど、実際ぼくも細かい部分など把握できてないので、完璧な状態で観たほうがいいなとも思った。それでもびっくらこいたわー。おもしろさと内容に。


あらすじなどはこちらのラジオ音声を参照のこと。本当にこの通り。

*1:なのでリドリー・スコットSF映画を撮ってるというのも映画を観にいったときに予告編で知って驚いた。あ、『プロメテウス』の話ね