西島秀俊に白シャツというアイデア『僕とスターの99日』

ちょー今更ながら『僕とスターの99日』鑑賞。

星を見ることしか興味がないアラフォーのフリーターがひょんなことから来日した韓流スターのボディガードをつとめることになる……というラブコメ

あらすじを全部紹介するのもはばかれるくらい古今東西何百回と作られたであろうテンプレだが、西島秀俊とキム・テヒというキャスティングがとにかく新鮮で、役者が魅力的に映っていればそれだけで画がもつんだというのを改めて思い知らされた作品。いってしまうと「ノッティングヒルの恋人」+「ボディガード」+「ローマの休日」であり、それ以上でも以下でもないが、『サニー』がメタ視点としてそれを取り入れたように、キム・テヒが出演することで韓流ドラマを日本で語り直すという、ある種の批評性も加わっている――――ような気がする。ま、深読み以外のなにものでもないが………

ハッキリいうと誰が見てもプロットはヒドい(ここからネタバレしますが、まぁ、ストーリーは予測出来る範囲だと思うので何も情報を入れずに見たいという方はそっとウインドウを閉じてください)。

まず、このドラマはトラブルやストーリーを推進させる手段がすべて「偶然」であり、それに頼りすぎている。

キム・テヒの事務所の社長と西島秀俊がバイトをしている警備会社の社長が昔からの知り合いという設定なのだが、それならまだしも、西島秀俊と日本トップの俳優役である佐々木蔵之介が幼なじみという設定、さらに桜庭ななみとキム・テヒの弟がたまたま知り合い、それがまた偶然でもってつながっていくというのがいくらなんでも……と空いた口が塞がらない。それだけじゃ飽き足らず、何かトラブルがあった場合でも、かならず偶然でもってすべてを解決していき、いつの間にかそのトラブルも風化していて……と都合がよすぎる。

そして、キム・テヒだが、自由奔放という性格を履き違えてるような気がする。

幼い頃はなればなれになってしまった弟がいて、それを探しているという設定なのだが、百歩譲って日本にいることを知っていたとしても、なぜそれが東京だと分かるのか?もしかしたら新潟のクソ田舎かもしれないし、そんな偶然に頼るくらいなら、金はあるわけだから、それを誰かに依頼すればいいだけの話であって、わざわざ彼女が「B級グルメを食べ歩きたい」というウソの理由をつかってまでも夜な夜な出歩くのはいくらなんでもやりすぎである。

さらに途中の引退宣言。主人公の西島秀俊とのスキャンダルが発覚。それをもみ消すために演技として共演者とのキスシーンをわざと撮らせ、その会見場でなんの前触れもなく言うわけなのだが、劇中で「たかだかそんなことで引退するんですか?」というツッコミが入るくらいいくらなんでも無理がある。事務所の社長がブチ切れているカットも挿入されていたが、ぼくはここからキム・テヒはこの社長に殺されてしまうんじゃないか?という展開すら想像したくらいで、自由奔放にもほどがあるなとさすがにここは噴飯シーンとして未だに納得がいかない。

アホほど偶然に偶然が重なり、悪人がひとりもいず(要潤がいちおうそのポジションを担っているが、彼も最後には……)、こちら側が見たいものだけを見せてくれるという予定調和な作品であるが、しかし、それを全部ギャグとして処理してしまうのはラブコメとしての強みであり『ザ・マペッツ』がそうであったようにフィクションであることをこちら側も分かってますよーというメタ視点が加わったのは良い意味での逃げだなと思った。テレビドラマにうといので、もしかしたら、この手の作品の常套手段なのかもしれない。

さて、この作品だが、なんといっても一番の魅力は西島秀俊その人である。

かつて黒沢清が「役所広司という役者を使って何か一本作れないだろうか?」という理由から『ドッペルゲンガー』という作品を撮影したと語っていたが、まさにその言葉がこの作品にはあてはまる。

もうプロデューサーから何から、西島秀俊をかっこよく映すことだけしか考えてないんじゃないか?というくらい西島秀俊がかっこよく。逆にいえば、W主演であるはずのキム・テヒの方がそこまで魅力的に映っていないので、完全に全員が西島秀俊に惚れているんじゃないかと邪推してしまうくらいだ。

なんといってもこの作品の西島秀俊。自宅でも外出するときも常に白シャツであり、料理するときは白シャツにエプロン、デートするときも白シャツ、大事な面接があるときも白シャツ、非常事態のときも白シャツ、あげくのはてに寝るときも白シャツという、白シャツのオンパレード。しかも、ボディガードとして仕事しているときは黒スーツに細いタイという『レザボア』仕様であり、その辺も分かっている。ちょうど『サヨナライツカ』の撮影後ということもあいまって、体は絞りに絞っており、髪はボサボサで、白シャツとの相性もバツグン。しかし、加瀬亮といい、なぜこれ系の役者は白シャツ&ボサボサヘアーが似合うのか……

というわけで、話の展開よりも何よりも、ちょーかっこいい西島秀俊が見れるという一点だけでこの作品は観る価値が十二分にある。逆にいえば西島秀俊ファンは絶対必見なので、喰わず嫌いせずにチェックすべし。主題歌はなんとスピッツが歌う『タイム・トラベル』のカバー。その辺の胸キュンポイントもよくわかってらっしゃる。

僕とスターの99日 Blu-ray BOX

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ドラマのOPは曲のPVかよってくらい世界観がマッチ。