中期ビートルズの歴史を一曲で表現/ももいろクローバーZ「月と銀紙飛行船」

超遅ればせながらももクロの『5TH DIMENSION』を聴いた。

アイドルのアルバムというのはたくさんの作曲者が関わるため往々にしてさまざまなジャンルのよせ集めになりがちだが、今作は前作の『バトルアンドロマンス』よりトータル性があり、楽曲もメタル風だったり、オルタナだったり、ヒップホップだったり、ベタなロックンロールのクリシェだったりと、ロック寄りに固定されており、そっちの畑のひとも充分たのしめる作品になっていた。よりスマートになっていて聴きやすいというのも特徴である。それでも一曲、一曲はたいへん重厚であるが。

しかし、根底にあるのはクイーンみたいなオペラっぽいプチプログレであり、すべての楽曲の展開がコロコロ変わる。これがももクロのカラーなんだろうなぁと改めてその魅力を再認識した次第である(これはヒャダインが打ち出したカラーでもあるわけだが)。

個性的でたのしい楽曲の中で、特に気に入ったのが「月と銀紙飛行船」という曲。気に入ったというよりも衝撃を受けた。モノノフにしてみたら地味な感じの曲だなーくらいにしか思わないだろうが、これ簡単にいうと中期ビートルズのごった煮である。


実は中期ビートルズからインスパイアされて楽曲を作るアーティストは多い。

ぼくの友人でもあり、東京でミュージシャンをしている小村方駿くんも先日『愛の話』という楽曲をDemo trackとしてyoutubeにアップしていたが、見事なまでに中期ビートルズからの引用である。正確にいうとジェリー・フィッシュに影響を受けて作られたのだが、元々ジェリー・フィッシュ自体が中期ビートルズとクイーンとビーチボーイズを合体させたようなバンドなので、自然とこのアレンジになってしまうのだろう。ぼくは「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」や「Good Morning Good Morning」を彷彿とさせた。

全部動画をリンクしてたらキリがないのでやめるが、それこそELOの「Mr. Blue Sky」ジェリー・フィッシュの「Sebrina, Paste And Plato」オアシスの「Round Are Way」日本でもBUMP OF CHICKENの「かさぶたぶたぶ」なんかは見事に「Getting Better」の換骨奪胎だし、ユニコーンの「デーゲーム」、「いかんともしがたい男」もその部類にあてはまる。

ところが、これらは何かの楽曲からヒントを得て生まれたものだ。サイケな中期ビートルズの歴史を一曲で表現したものは――――少なくともぼくが知る限りはももクロのこの一曲だけである(実際はたくさんあるのかもしれないけど)。「リボルバー」と「サージェント・ペパー」の曲を全部混ぜたらこうなりました的な。

もしやと思い、「月と銀紙飛行船 ビートルズ」で検索をかけたらこれがビンゴ。なんと作曲者の永井ルイという人がビートルズに多大な影響を受けていることがわかった。

永井ルイ - Wikipedia

↑これによるとスパガの曲なんかも手がけていたり、それこそモー娘。絡みの仕事をしていたりとアイドルとのかかわりもあって気になった。

というわけで、それこそビートルマニアはおろか、70年代から90年代のオルタナ的なロック/ポップが好きな人に是非おすすめしたい。ももクロの「月と銀紙飛行船」。他の楽曲も魅力的なので、ももクロって最近売れてるらしいじゃねぇかよーと少しでも引っかかってるなら流し気味でもいいので聴いてみるといいと思う。