容赦ない“ダイ・ハード”『エンド・オブ・ホワイトハウス』

エンド・オブ・ホワイトハウス』鑑賞。

アメリカ大統領一家を警護するスゴ腕シークレット・サービスのマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)。一家とは友人を越えたような関係性を築くほどだったが、不慮の事故によりファーストレディを死なせてしまう。一年半後、財務省での事務仕事をさせられていたマイクだったが、そこで驚くべき事件が発生。北朝鮮のテロリストがアメリカの首都を攻撃、なんと大統領を人質にとってホワイトハウスを占拠してしまった。職場が近くだったこともあってか、マイクはかつての仲間を殺されながらもなんとかホワイトハウスに潜入。たった一人で大統領救出に挑む………というのが主なあらすじ。

物語の導入部は見事なまでに『クリフ・ハンガー』であり、本編はホワイトハウスを舞台にした『ダイ・ハード』ということで、かつてのアメリカ製マッチョアクションがジェラルド・バトラーの手によってよみがえる(本作を制作している)。無線でのやりとりや、助けにくるつもりで屋上に……実は味方だと思ってた人が……など、随所に『ダイ・ハード』のオマージュが見られ、それをプロ同士のやりとりにブラッシュアップした感じ。監督は『リプレイスメント・キラー』という魂の入ってないジョン・ウー映画を作ったアントワーン・フークアで、これだけの大作を扱えるのか?と危惧していたが、今作ではホワイトハウスが占拠されるまでのシークエンスを見事に調理し、ふぬけたスローモーションなどは封印し、骨太な娯楽作に仕上げた。

今作がおもしろいなと思ったのは『ダイ・ハード』を下敷きにしながらも容赦がない点。

敵も味方も無慈悲であり、大概この手の映画で繰り広げられる「三秒数える間にパスワードを教えないとこいつが死ぬぞ……3………2………1!!!」 「ま、待ってくれ!お、教える!!」というようなやりとりは皆無。思ってもないタイミングで人質は殺され、徹底的にいたぶられ、目的のためなら手段を選ばないという敵の容赦なさをアピール。それは味方も同じことであり、敵を取っ捕まえたら、情報を得るために容赦なく拷問(しかし、その様は映画では描かれない)、敵を殺すときも基本的にはナイフで急所をついて一撃でしとめるか、頭を撃ち抜く。足を撃って動けなくして……というようなことは一切しない。

映画は基本的にはノンストップ。立ち止まることがない。多少なりともアメリカ万歳!アメリカ最高!というシーンも目立つが、その勢いもあって個人的にはかなり楽しめた。


ここからネタバレ!


が、この作品。編集で切り落とされたのか、主人公たちの関係性が曖昧でその背景が描かれないため、ノンストップである分、終わったあとになんかおかしくないか?というのが散見された。一緒に観に行った後輩と話しながら出てきた問題点をいくつかピックアップして箇条書きにする。


・そもそも大統領一家とスゴ腕とはいえ一介のシークレットサービスがあそこまで親密になれるものなのだろうか?ボクシングで殴り合い、奥さんのイヤリングを決め、さらに息子には「これ以上ゲームをするな」と叱る。そもそもボディガードとシークレットサービスの違いが分かってないためにアメリカ人なら理解できるのかもしれないが、例えば、学生時代の友人だったとか、そういうことがひとことでも説明していただけるとありがたかった。

・大統領をパーティー会場へ移動させるためにリムジン数台で行くのだが、その先頭に大統領の車があるのはどうかと…

・その途中で事故に巻き込まれるのだが、なぜ事故が起きたのかが分からない。フロントガラスに何かが当たって、ハンドル操作をあやまり、橋に宙ぶらりんとなるのだが、最初誰かに攻撃されたのか?と思ったくらいで、その辺もしっかり描いてほしかった。

ホワイトハウスのセキュリティが甘い。一年半もパスコードを変えずに拳銃を手に入れるシーンはさすがにどうかと……

シークレットサービスを干されていたマイク・バニングがジェイコブスに言ったコードは財務省のものなのか、それとも過去にシークレットサービスとして働いていたときのものなのか?前者なら財務省で働くジェイコブスが瞬時にマイクだと判断するわけで、末端の財務省のコードまで把握してるのはすごいし、後者ならそのコードを変えずに通用するということで少しばかり問題が(とはいえ、ジェイコブスとマイクは友人関係にあり、そのためにコードを覚えていたという汲み取りも可能)

・バンカーに出入りしすぎ。

・裏切り者のミスがあまりにもすぎて話にならない。

・ちょっと名前忘れたけど、軍用のヘリを撃ち落とす最強の武器を敵側がいつ運んできたのかわからない。

・美人の片腕がいつのまにか消えていた。


ネタバレ終わり!

――――まぁ、こういう部分であーだこーだ言いながらも楽しめる作品であることは間違いない。というわけで、この手のアクション映画が好きな人には激しくおすすめである。スルーする気マンマンだったのだが、映画館で見れてよかった。

あ、そうそう、スクリーンから出るときに『ホワイトハウス・ダウン』という似たような題材の映画のポスターが貼ってあったが、これいいのか?よくこういうことが起こるなー。

見終わったあと無性に肉を喰らいたくなり、肉を喰らいにいった。