「ダイ・ハード」は偉大『ホワイトハウス・ダウン』

ホワイトハウス・ダウン』鑑賞。

似たような題材の『エンド・オブ・ホワイトハウス』が同時期に公開されるなど、関係性は『アルマゲドン』と『ディープ・インパクト』のようではあるが、こっちの方は「ぼくたち」のローランド・エメリッヒが監督しているのでその時点でサムズアップ感はある(アントワーン・フークアは『リプレイスメント・キラー』をざんないことにしたのでそこからあまり好感をもってない)。

主人公は落ちこぼれのシークレット・サービス。離婚しており、仕事の忙しさから年頃の娘とコミニュケーションもうまくとれずウザがられてる始末。しかし、政治ヲタクで大統領萌えでもある娘を喜ばそうと、大統領警護の面接がてら、ホワイトハウスに連れていくことに。実戦経験はあるものの、学がないわ、上司のいうことは聞かないわ、あげくへらず口たたくわで面接官の印象は最悪(しかも知り合い)。不合格を覚悟し、ついでにとツアーに参加して帰ろうとしたらさぁ大変。内部に潜入していたテロリストがホワイトハウスの中心を爆破。ちょうどトイレにいってしまった娘と主人公は離ればなれになり、彼は人質となってしまう……というのがざっとしたあらすじ。

セキュリティの甘さはおいといても「もしホワイトハウスが占拠されるとしたら?」というシミュレートがなかなかしっかりしており、犯人側の動機も含め、ある意味アクション映画に寄せた『パトレイバー2』だという印象を受けた。

大統領はもちろんのこと主人公もそこまで頼りにならない感じが軽いドタバタになっていて、その設定によってシリアスながらもギャグを入れる余地があり、そのギャグはすべて小粋なセリフで表現される(一番笑ったのはホワイトハウスのツアーで「ここが『インデペンデンス・デイ』で爆破された場所でーす」と案内するところ)。伏線もバッチリ効いていて、どうでもいい会話がそのまんまラストにつながるなど、観客を喜ばせる仕掛けとしての脚本は王道ながらも練りに練られてる印象があった。

エンド・オブ・ホワイトハウス』では街中に銃弾の雨が降るという強烈なシーンがあったが、こちらも事件が起きてからはこれでもかと見せ場が連続してやってくる。爆破にカーチェイスに銃撃戦は当たり前(2丁拳銃ではないがスローモーションで横っ飛びする)、さらにはステゴロ、ミサイル攻撃、戦車、飛行機墜落とヤサイマシマシニンニクアブラの豚ダブルでアクション映画好きのお腹を一杯にさせてくれる。コストパフォーマンスはかなり高いのでその時点で満足した。

さて、この作品。内容はおろか細部にわたるまで『ダイ・ハード』とほぼ一緒で、そのシリーズを一気に総括したような感じになっている。建物が破壊されまくるというのはもちろんのこと、奥さんとの仲が冷えきってたり、弱音を吐きながらも大統領救出に向かったり、エレベーターの上に乗って犯人の情報を集めたり、敵が対空ミサイルなどを運んでいるさまを見たり、主人公のいうことを信じず、いきなり突入を外部が試みたり、無線で唯一の仲間とやりとりをしたり、敵の一人が主人公に復讐心を抱いていたり、白いタンクトップを着てたり、あげく、人質のなかに身内がいて……など、完全に『ダイ・ハード』のそれを踏襲している。言ってしまえば黒人の大統領が相方になり、バディムービー化するなど、それも『ダイ・ハード3』とおんなじだったりする。

というわけで、見終わって思うのが『ダイ・ハード』は偉大!!になってしまうのだが、それを知らない世代にとっては二時間強の間、ひとつも飽きることなくスクリーンに釘付けになること必至の良作。この夏は個性派な監督による話題作が続々と公開されているが、是非合間をぬってこの作品も観ていただきたいものだ。ローランド・エメリッヒといえば、ややオタク度が低いオタク監督という印象があったが、今作はそのオタクな部分がなくなり、ポップコーンムービー職人に徹した。好き/嫌い、思い入れは別にして彼の最高傑作といってもいいだろう。あと、どうでもいい場面でゾンビがでてきます。どこで出てくるかはお楽しみ。






【最後にネタバレ】

・いくらなんでもホワイトハウス内に裏切り者がふたりいるというのはどうだろう。

・なんでこの手の作品では軍人は頭の悪いものとして描かれるのか?ネタ元は『博士の異常な愛情』か??

・『エンド・オブ・ホワイトハウス』と違って犯人が無慈悲じゃない。途中、こいつら本気で実行しようとしてるのか?と思った。

シークレットサービスのリーダーなのに素人の大統領と互角に戦うというのはどうかと……