22年ぶりの倍音成分/マイ・ブラッディ・バレンタイン『m b v』

ちょー遅ればせながらマイブラの新譜を聴いた。

これほどまでにみんなに愛されてるバンドも珍しいだろう。というのもTwitterで何気に「みなさんマイブラの新譜どうされますか?」と訪ねたら、結構なリプが来たからだ。この手のバンドはミュージシャンズ・ミュージシャンであって、玄人に好まれることはあっても一般のリスナーがそれと同等に評価するということ自体ありえないが、マイブラに関してはそれを乗り越えているような気はする。とはいえ、ニルヴァーナレディオヘッドほどの知名度があるかというとそれはそれで疑問ではある(実際、マイブラと聞いて反応するロックファンはTwitterにこそ多いが、ぼくの周りではそこまでだったりもする。そこそこ洋楽に詳しいひとでさえ「マイブラ?」という反応を見せたりもしていた)。

ぼくはリアルタイムではなく、後追い聴きでわりと新規なファンなのだけれど、それでも『ラブレス』には圧倒的な衝撃を受けた。

LOVELESS

LOVELESS

LとRを覆いつくす多様な倍音。フィードバックノイズの洪水と評されるギターサウンド。そのわずかなスキマをすり抜けるような甘美/耽美なメロディ。ささやくようなボーカル。BPMこそ遅めだが、パンク/グランジとは違う重厚とも攻撃的ともいえる音楽性には数々のフォロワーが生まれた。『コインロッカー・ベイビーズ』を読んだときに、昨今の物語はこれが元だったか!という感動を覚えたが、『ラブレス』も同様で、このアルバム以降、ロックは新しい次元に突入したといっても過言ではないことは後追いのぼくでさえ理解できる。ハッキリ言ってしまうと同年代でいえばニルヴァーナくらいの影響力があったのではないかなとも思う。実際「クロスビート」の『ミュージシャン100人が選ぶ究極のベストアルバム』では数々の名盤をおしのけて『ラブレス』が6位にランクインされている(ちなみにピクシーズの『ドリトル』も同率6位でランクイン)。

youtubeに全曲あがってるよー」なんてことも言われたりしたが、ぼくはyoutubeで音楽を聴くという行為に抵抗をおぼえているひとなので*1、聴くならしっかりとCDかダウンロード販売で聴こうと思っていた。レンタルされりゃこれ幸いなのだが、すごく良いタイミングで「買おうと思ってるんですよー」という後輩が現われたため、ご相伴にあずかることに(てめーで買えって話だが)。

んで、このマイブラの新譜。詳しい感想を検索してないので、おそらくモロかぶりになるだろうが、まぁおどろくほどに変わっていない。ここまで変わってないのもめずらしいんじゃないだろうか、さきほど書いた『ラブレス』の感想が、そのままこの新譜にも当てはまるくらいだ。あまりの変わらなさに安心したどころか逆にビックリしたくらいである。わけわからんインストがあったり電子音が軽くサンプリングされてる曲もあるが、それもふくめてのマイブラの世界観*2。よく大御所の歌手が過去のヒット曲の節まわしを過剰に変えてうたったりしてるが、過去のヒット作でなく新譜でのマイブラの変わらなさを見習え!といいたい(ちなみに最近のマイブラのライブは「ラブレス」の曲が中心らしく、そこも素敵である)。

はっきりいっちゃうと『ラブレス』ほどの衝撃/革新性はないが、ケヴィン・シールズは最初から天才であり、優秀なサウンドリエーターでもあったことがこれで証明された。奥田民生ユニコーンの再結成について「停止していたカセットテープの再生ボタンを押した感じ」と言っていたが、たとえていうならそういう感じである。興味があるひとは聴いて損なし。おすすめ。とくに“Who Sees You”という曲は2013年版の“Only Shallow”って感じでとてつもなくかっこいいです。

MBV

MBV

*1:それでも聴くときはあるけどね

*2:こうやって書くと某バンドのボーカルが怒りだすかもしれないが、そもそも世界観ということばに疑問を持ったからといって名前につける発想じたい疑問である