大島優子は間違いなく吐く『チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット』

ロッキー・ホラー・ショー』もブッ飛ぶ興奮!
レ・ミゼラブル』も驚く感動!
『スリラー』のマイケル・ジャクソンも墓場から蘇るバカバカしさ!!
――――公式サイトより http://dokudoku.net/troma#/chicken

『テッド』より下品で、インド映画より凄いミュージカルがあって、『愛、アムール』を超える感動作! ハネケよりも過激な作家ロイド・カウフマンも体を張って頑張ってます!
――――@TROMADOKUDOKU https://twitter.com/TROMADOKUDOKU/status/316018873730211841

ミュージカルであり、スプラッタであり、ブラックジョークであり、社会風刺であり、SFであり、パロディであり、ラブストーリーでもあり、たぶん、他の何かでもある、ジャンル映画のキマイラだ。
――――禍津ヒノワ「d1953coldsummer」http://d1953coldsummer.blog64.fc2.com/blog-entry-972.html

今、日本の映画関係者が最も重要視し、鑑賞しなければいけない作品です。将来映画関係の仕事に携わりたいと考えている若者は劇場で本作を目撃すべきなのです。
――――侍功夫「ゾンビ、カンフー、ロックンロール」http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/20130330#p1

すでに一部好事家が熱狂している『チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット』を観た。

まったくもって素晴らしい!!!!

ストーリーはタイトルから想像できると思うが、チキンを喰った人がどんどんゾンビになっていってさぁどうしようというシンプルなものに、動物愛護やさまざまな人種によって作られている今のアメリカなどの社会問題もファストフード店に象徴させている。

意外に思うかもしれないが、基本はミュージカルであり『ワイルド・パーティー』や『ファントム・オブ・パラダイス』などを想起させるようなキッチュ感が全体を覆う。アメリカのファンは『ロッキー・ホラー・ショー』や『サウンド・オブ・ミュージック』で流れる歌を下品な替え歌にして劇場でうたうらしいが、本作は替え歌にする必要がないくらい究極的に下品な歌詞をうたってうたってうたいまくる。さらにゾンビ映画でもあり、SFの要素があり、それこそ社会風刺があり、コメディであり、パロディになっていて、おまけ程度のラブストーリーがぶちこまれる。

そして、そこにトッピングされるのはウンコと臓物。これらが文字通りカメラにぶちまけられ、素っ裸の男女が画面を覆いつくし、ゾンビになって血がブシュブシュ噴き出す――――――――AKBの大島優子は『地獄でなぜ悪い』を観て「吐きそうになった…」とブログに書いたが*1、恐らく彼女がこの作品を観たら吐きそうになるどころか間違いなく吐くだろう。

故・淀川長治は映画とは感性が生む娯楽芸術であると語ったが、その一方で映画は不健全なものであり、見世物小屋であり、俗悪/低俗なものでなければならない……というのはこのブログでもさんざっぱら表明しているが、この『チキン・オブ・ザ・デッド』はまさにそれの極北であり、ここにあるのはセックスとバイオレンスと下ネタという映画において必要最低限のものであり、そしてそれしかない。なので他に書きようがないのであった。

たしかに観る人を選ぶ。むしろ嫌悪感を覚えるひとの方が圧倒的に多いのかもしれない。しかし、この『チキン・オブ・ザ・デッド』は普段不健全な映画が観れないことで鬱屈している人を満足させる爽快感にあふれた傑作であり、そもそも映画としておもしろいので、とりあえずめし抜いて観ることをおすすめしたい(というか、そうしたほうがいい)。トロマ社の映画は派生した人の作品も含め*2片手で数えるくらいしか観てないが最高傑作と呼ばれるのも頷けると思った。

*1:ただ実際のブログの感想はネットニュースのそれよりも普通というか、そこまでわーわー言ってるような感じではなかったということだけは記しておく

*2:いわゆるトロマ社出身監督