スライとウォルター・ヒルでおもしろい確定『バレット』
新潟で上映してたのかな?それも分からないままスルーしていたが、とりあえずツタヤ限定レンタルというのはやめていただきたい。あれはなんなのか。
『エクスペンダブルズ』以降、かつてのアクションスターがふたたび!という潮流が軽くきていて、今年だけでもシュワちゃんの『ラストスタンド』や『ダイ・ハード』の新作が公開されたりしたが、そういったなかでも頭ひとつ抜けた作品といっていいだろう。
今までも傑作はあったし、十二分に楽しかったんだけど、年間ベストに食い込んでくるような感じではなく、どっちかというと「屋台で喰うじゃがバターは妙にうまい」的なお祭り気分もあって作品そのものの質はどうでもよかったなぁと改めて思ってしまった。もちろん観てるほうはそれを求めているので全然いいんだけど。
そこへいくと『バレット』は『バンク・ジョブ』や『メカニック』 『ブリッツ』などに連なる(全部ジェイソン・ステイサム……)激シブな骨太アクションとして純粋に評価できる。ちょっと前でいえば『RONIN』や『ペイバック』 『フェイク・シティ』な感じといえばいいだろうか。
それもそのはず。なんと監督は現代において漢のなかの漢を描かせたら右に出る者はいないウォルター・ヒル御大。しかも制作はホラー映画を専門に作るダーク・キャッスル*1。そこにシルベスター・スタローンがアクションスターとして帰ってくるのだからその時点でどういう映画になるのかはある程度確定していたわけだ。
ストーリーは相棒を殺された殺し屋がその復讐を果たすべく、なぜか刑事と組んで黒幕を追うというもの。
ストーリーのシンプルさもさることながら、映画はこれ以上ないくらいにミニマムに進んでいく。見せ場はズバリ、人が撃たれてただの肉の塊となるか、弾けるようなおっぱいか、車がひっくり返るような爆破のみ。それをウィットな会話とヒル御大お得意の「濡れた夜の街並」、過剰なライティングによるちょーかっこいい映像で援護射撃する。
ダサめのスタイリッシュというか(もはやスタイリッシュという言葉自体が古臭い感じはする)、一昔まえの「かっこいい」が全体をおおい、それが80年代感を演出する。テンポよくカットは割られ、画面が静止することはほとんどなく、それでいてチャカチャカせずに映画は動きつづける。編集をめぐってジョエル・シルヴァーと一悶着あったらしいが、このへんはお見事というしかない。違う意味での『ドライヴ』だともいえる。
もちろん過度に何かが爆破するとか、人がズタズタになるというのは『エクスペンダブルズ』も同じなのだが、やはり監督の手腕が作品の違いとなって表れたような感じである。それがいわゆる作家性というヤツなのだろうが、スタローンも今回は自身で監督してない分、役者スタローンとしての魅力をふりまき、後半のほうになると、彼が『オーバー・ザ・トップ』や『刑事ジョー ママにお手あげ』に出ていたことなどすっかり忘れていた。トムの『アウトロー』も大変素晴らしい映画だったが、やはりこれを観てしまうとトムには荷が重かったんだなと思ってしまう。
というわけで、わりと世間の評価は低めだが、絶対におすすめ。80分ちょいで本編が終わるのも良い。シュワちゃんもそうだが、スタローンもまだまだ元気で全然老けてないのもすごかった。今年のベストワン候補だ!
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*1:創設者はジョエル・シルヴァーとロバート・ゼメキス。最近では『ニンジャ・アサシン』という血みどろの映画も製作した