違う意味で「テレビでやってくれ」といいたくなる『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』

『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』鑑賞。

今年一番の問題作だと思う。

というのも、この作品。映画なのかテレビなのか、その境界線みたいなものがあやふやで、もちろん映画館でかかってる以上は映画だし、ぼく自身「映画とは見世物小屋である」というのをわりと信条にしてきたので、どういう形態であれ、お客さんが満足して帰ればそれはそれで映画として成立しているんだと思うが、この『キス我慢選手権 THE MOVIE』はバラエティ番組の企画がスクリーンに映し出されているだけで、それ以上でもそれ以下でもない。

「映画版」を揶揄するときに「これだったらテレビで充分」という常套句があるが、それがそのまんまこの作品には当てはまってしまう。だってテレビなんだもん。これまでは「ドラマの最終回のボーナストラック」や「テレビアニメ版のダイジェスト」だったり、ギリギリ映画っぽい体裁をのこしてはいた。しかしこれはバラエティの企画である。そういったいままでの「THE MOVIE」を遥かにすっ飛ばした別な「何か」がこの『キス我慢選手権 THE MOVIE』であり、これを「映画」といってしまったらどうなるのか……というようなことまで考えてまともに楽しめなかった。

なぜこのようなことを思ったかというと、その本編が「かつてテレビでやってたけど今は規制などが厳しくなってやれなくなってしまったこと」を映画のなかでやっているからなのだ。もっといえば「バラエティ番組がそのままスクリーンに映し出されているけど、それは『ゴッドタン』では決してない」ということでもある。

単純に『キス我慢選手権 THE MOVIE』はテロップがいっさいでてこない。

今でこそタレントが話していることが文字になるというのは当たり前になっていて、それとは別にテレビに映ってない人の声やディレクターが個人的にツッコみたいことなども表示されるようになった。これは昔のテレビではありえなかったことだが(逆に明石家さんまが企画に携わってる番組はテロップが一切出ず、それはそれですごいことだと思う)、今回この『キス我慢選手権 THE MOVIE』は映画として公開してしまったことにより、そういったテレビでは当たり前の演出、編集がなされてないのである。

ぼくは『キス我慢選手権』は大好きですべて観ているが、正直、映画になったことによって、いままでの『キス我慢』と違うことをしていることにかなり戸惑った。確かにそこには「バラエティ番組の企画がそのまま映し出されている」が、ではそれが『ゴッドタン』ではないとするとなんなのか?

金はかかっている。出演者も深夜番組の企画とは思えないほど豪華だ。ロケもして爆破もある。特殊メイクもすごい。考えられないことだがおっぱいもでる。しかしそれは規制が厳しく、制作費もあまり出なくなってしまっただけのことであって、かつては『お笑いウルトラクイズ』や『ドリフ大爆笑』でも行われていたことなのだ。

『キス我慢選手権』は企画としておもしろい。それは認める。しかし、あれは今の規制だらけのテレビのなかでやってるからおもしろいのであって、映画にするべきではない。むしろそれをテレビでやってこそみたいなところがあるのではないか。ちょっと皮肉な言い方かもしれないが。なぜテレビでやってたことが映画でしかできなくなってしまったのか。それが不思議でならない。文句いわれたっていいじゃない。テレビでやりなさいよ、テレビで。

実は来年『ゲームセンターCX』という人気番組も映画化される。これはよゐこの有野晋也がフジテレビの会議室で難攻不落のゲームをクリアするだけの番組だ。DVD-BOXを所有しているくらいファンなのだが、これもいったいどんなことになるのやら……っていうか、映画ってこれからどうなっていくの……