映画作家時代の終わり『天国の門』

火曜日にシネウィンドにて『天国の門』を観てきた。

シネコンに慣れ切ってる世代なので、シネウィンドという映画館は観る環境としてはよろしくなく、できることなら足を運びたくないのだが、あの『天国の門』がスクリーンで観れるならというのと、最近仲良くしているまこーくん(19歳もうすぐ二十歳のややシネフィル風味)に誘われ重い腰をあげた。ちなみにシネウィンドに来たのはジョニー・トーの『エグザイル/絆』以来である。

まずシネウィンドだが、音響のシステムが変わって音が格段によくなっていたのには感動した。デジタル上映で映写機がないと騒いでいたが、なんとかなったようで映像もバッキバキである。

さて、カルト的な映画であり、マイケル・チミノと言えば熱狂的なファンも多く、あまりこういうことを書くと「お前はわかってない」だとか「何まとはずれなこといってんだ」と言われそうだが、せっかくなので映画を観て思ったことを素直に書くことにする*1

この映画長くね?

というよりもこの手の大作は観てる間に「うーん、長いな……まだ一時間経ってないかな……」とか少しでも思わせたらダメな気がする。ぼくの感性の問題なのだろうが、それでも前半一時間は長く感じてしまった。ハッキリいえば冒頭の卒業式のくだりとかいらないんじゃないか……そんなことまで思ってしまった。少なくても『ベン・ハー』や『アラビアのロレンス』みたいに「え?もう終わりなの?」というスピード感はなく、前半だけでいえば体感時間は恐ろしく長かった。美しき男同士の友情やアメリカの暗部がどうしたというのにもっともっと興味が沸くような描き方であれば楽しめたかもしれない。

もっといえば肝心の映像もスクリーンで観たのに迫力がそこまでこっちに伝わってこなかったのだ。人がいっぱい出てるとか機関車が走っているというのはわかるのだが、それ以上の何かを感じられなかった。いわゆるキューブリックとかテレンス・マリック、レオーネの作品のような圧倒的な映像の力みたいなものはつかみ取れなかった。改めて画像検索すると絵画的な美しさを誇るカットがいくつもでてきたのでアレだが、もしかしたらぼくはマイケル・チミノという監督とセンスが合わないのかもしれない、そういえば『ディア・ハンター』も苦手な映画だったことを見始めてから思い出したのである*2

とはいえ、クリストファー・ウォーケンが出始めてからは時間を気にせずに観れたし、クライマックスのダイナマイト!ヒューン!ドカーン!ドカーン!はさすがにテンションが上がったけども。

見終わってからまこーくんちでいろいろ調べたり、Twitterにちょこっと感想を書いたら、同じように思ってる人がふたり居て、さらにソダーバーグが非公式で編集しているものがホームページにあがっており、それを観てみたらなんと1時間47分と約半分の短さになっていて、あげく最初の卒業式のシーンが丸々なく、いきなりクリストファー・ウォーケン牛泥棒を撃ち殺すところからはじまっていた。ぼくと同じように「良いシーンはたくさんあるんだけど、全体的に長いよなぁ……」と感じてる人も少なからずいるということである。実際この作品は短縮版が作られてそれが公開された。逆にそっちの方が観たいなと思ってしまった。

しかし結果的にこの作品は当たらなかったことで「映画作家時代の終わり」を映画史の中に刻み込んだものになったといえる。いまでこそ『ジャンゴ』のような映画が作られヒットしているが、当時ベトナム戦争の傷が癒え切ってなかった時代に塩をすりこむような内容で全体的にレイドバックされたような作風が受け入れられるはずはなかった。故にぼくはこのような感想を持ったが、今でこそ映画史を代表する作品として観る価値があり、スクリーンにかける意味もあるだろう。

もしかしたらおっさんになったら胸に染み入る作品になるかもしれないので、また10年後くらいに見返したいと思う――――なんかフワっとした感想ですいません。実際はいまだに掴み切れてないのであります。しかし、新潟は絶賛公開中なので、一応記事として残しておきました。

*1:ちなみにこの作品。昔WOWOWかなんかで観た気がするが、なんの印象もないのであった

*2:でも「サンダーボルト」はおもしろかったな。ちなみに「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」は観ていない