ジャケは白いが中身は黒く/Negicco『ティー・フォー・スリー』

Negiccoの『ティー・フォー・スリー』を聴いた。

Twitterでお世話になっているイシダドウロ(@Tarumizizou)さんが神戸からわざわざ新潟競馬場でのイベントとサイン会に参加されるということで、もしお会いできるようであればアルバムをお渡ししますよと言われ、ご相伴にあずからせていただいた。どうもありがとうございます。

いきなり感想を書くとconnie氏の嗜好がそうなってきたのか、ファンクでディスコな曲が目立ち、一曲目に「ねぇバーディア」をもってくることで、その歌詞*1の内容を曲にしてアンサーしたような流れ。

「RELISH」は“黒い「中央フリーウェイ」”という感じだし、「マジックみたいなミュージック」はアースにヤマタツの「FUNKY FLUSHIN'」を混ぜ込んだようなかっこよさ。そこに打ち込みに傾倒したくるりっぽい「江南宵唄」と「虹」という外部のコンポーザーによる踏み込んだ楽曲もあり、この4曲に完全にやられた。

「カナールの窓辺」は渋谷系っぽく前作でいえば「サンシャイン日本海」のポジション。「SNSをぶっとばせ」はOKAMOTO'Sらしい勢いのあるモータウン。直球のナイアガラサウンド「土曜の夜は」に、しっとりと聴かせる「おやすみ」と「私へ」で締める。

バラエティに富んでいた前作に比べ、今作は4曲がディスコ仕様ということで、かなりトータル性が強くなった。こういう書き方は田島貴男氏に怒られるかもしれないが90年代渋谷系ムーブメントから80年代シティポップスの流れに逆行した感じ。

実はぼくはこのアルバムに先駆けて発売された、さかいゆう作「矛盾、はじめました」にそこまでハマれず、クオリティが高いのはあいかわらずだが、このアーバンなテイストをNegiccoに……もっといえばアイドルに求めてないんだよなぁという感想を抱いた。イシダさんにお会いした際「今回のはもしかしたら気に入らないかもしれません、“ねぇバーディア”が浮いてるくらい、かなりマニアックなことになっている」と言われ、もうアルバム全体がこのテイストになってしまったのかなと出来を危惧した。

しかし、聴いてみると、なんてことない。ぼくの感覚でいえば前作からの延長線上にあるアルバムで『リボルバー』から『サージェント・ペパー』になったようなそんな印象で文句なしの傑作じゃないかと安心したし、現在進行形のNegiccoの良さみたいなものを再確認できた形になった。そもそもアイドルがどうしたとか抜きにポップアルバムとして極上である。前作以上にヘビロテ必至だ。おすすめ。

ティー・フォー・スリー

ティー・フォー・スリー

*1:「ねぇバーディア」の歌詞はアース・ウィンド&ファイヤーの「セプテンバー」のオマージュになっている