マーケティング重視なキャスティングとは思えない/『破門 ふたりのヤクビョーガミ』

『破門 ふたりのヤクビョーガミ』鑑賞。それにしてもこのクソだっさいタイトルなんとかならんのか……

原作は個人的に“ナニワのエルロイ”、“ナニワのレナード”と呼んでいる黒川博行直木賞受賞作。センテンスは短く、セリフはおろか、それ以外も関西弁で書かれており、軽快でノリがよく、キャラクターの掛け合いで話を転がしていく文体が特徴。タランティーノが『パルプ・フィクション』をエルモア・レナード風に仕立て上げたように、この映画版の『破門』も、「文学を映画に移し替える」ということをしており、作品のテンションは結構似ている部分があっておもしろく観た。

自主規制が当たり前になった昨今のメジャー邦画では珍しく、タバコをスパスパ吸い、登場人物の8割くらいはヤクザ。長回しによる執拗なエグいバイオレンスもあり、これにおっぱいが出てればいうことないという感じ。

何よりもこの映画の最大の魅力はキャスティング。マーケティングを重視しつつ、関西出身で固め、北野武とは真反対の関西弁のみで奏でられる小気味良いセリフ回しで魅せていく。二宮役の横山裕はもちろん、イケイケヤクザの桑原はちょっとインテリ寄りに変更されるもキレたら豹変するという設定で、その変貌ぶりを佐々木蔵之助が見事に演じている。さらにしぶとく逃げ延びる小清水の橋爪功、その愛人に橋本まなみ、気が強い関西のねーちゃんっぽい北川景子、二宮を息子のように想う國村隼などほぼほぼ原作通りで感動。 さらに黒川博行もサプライズで出演している。

大阪でロケしてるわりに泥臭さがなく、スタイリッシュな感じに仕上がっていて、全体的に軽く、安っぽいのが残念極まりないし、原作から丸々シーンを抜くのではなく、ひとつのシーンから少しだけぶっこ抜いているので、まったく繋がってこないシーンもあって、話がわかりにくくなるのではないか?という懸念もなくはないが、元々小説自体が軽快なエンターテインメントだけに、その軽さやスピード感も含めて及第点はあげてもいいのではないだろうか。とはいえ、傑作でもないので、強くおすすめはしないけれど。

破門 (角川文庫)

破門 (角川文庫)