なぜNGT48の『青春時計』はへっぽこな“水曜日のカンパネラ”みたいになってしまったのかについての考察

立ち上げ時からローカル番組などである程度追っかけ、お披露目公演やイベントも行った程度には思い入れがあるNGT48がついに『青春時計』でメジャーデビューを果たした。

すでに代表曲としての評価も定まっており、リクエストアワードでも1位をとった『Maxとき315号』を何度も何度も聴いているだけにいやがおうでも期待は高まり、YouTubeでMVが発表されると知ってすぐに視聴。後日Type-Bをツタヤでフラゲ、Type-Cをハードオフで購入して聴いた。

早速だが、この『青春時計』かなり変わった構成になっている。

まず出だしだ。48Gの楽曲といえば印象的なイントロから転調に転調を重ねていくというのがお決まりのパターンであるが、『青春時計』にはイントロがなく、いきなり歌い出しが“水曜日のカンパネラ”的なけだるいラップになっているのだ。

もちろんそのようにコンペも行われたのかもしれないが、実はこの曲の振り付けも“水曜日のカンパネラ”を担当している人が振りつけており、そこまで深読みでないことがうかがえる。

曲はそのまま終わるわけはなく、Bメロからは『365日の紙飛行機』を彷彿とさせる60年代カレッジフォーク調になり、タイトル通り、青春を強調した歌詞がうたわれていく。秋元康といえば、吉田拓郎を敬愛している一方で、Daft Punkが『Get Lucky』でグラミーを獲れば『恋するフォーチュンクッキー』を発表したりと流行にも敏感だ。この最先端の音楽と牧歌的なフォークソングを融合させるというのも合点がいく。

とはいえ、なぜこのような変化球的な曲を彼が選んだのか?それについては引っかかるところもあった。ぼくはこの曲を30回以上聴き、なんでこのような構成の曲になったのか……正確にいうなら、なぜ秋元康がこのような曲をNGT48のデビューシングルにしたのか?について仕事をしながら考え続け、そして一週間ほど経ってついにひとつの結論に達した。

もしかしたら秋元康は新潟がどういう街なのか?というのを音楽を通して、そしてNGT48を通して、表現したかったのではないか?

出だしの“水曜日のカンパネラ”的なラップはある意味で現在の最新系の流行歌であるが*1、このラップの部分が政令指定都市になって以降の新潟を象徴しており、中盤からの60年代カレッジフォーク調は古き良き在郷としての新潟を象徴している………

つまり新潟という街は政令指定都市でありながら、少し車を走らせれば田んぼだらけの在郷で、その都市感と在郷の解離が異常に激しく、それが魅力であり、その魅力を外に向けてNGT48は発信していく……そんな決意表明があったのではないか?

「さしきた合戦」という番組のミニコーナーで地方出身のメンバーが集まり「新潟は私たちの住んでたところに比べると都会」とコメントしていたが、これがすべてを表しており、どこか新潟というのは水と米と魚だけの地方(田舎)であるというイメージがつきまとっているような気がする。しかし、いうほど田舎でもなく、魅力的な……それこそ歌詞を引用すると「美しいあの街」……それをそのまんま曲で表現した……それが『青春時計』が選ばれた理由なのではないか?

そう考えると、この曲をNGT48のデビューに持ってきた秋元康の手腕は優れていると言わざるを得ない。今までの48Gのなかで最も地方に密着したNGT48の門出に選ばれた楽曲はことばではなく、曲構成だけで新潟を象徴するというこれまでになかったタイプの曲。それが『青春時計』であり、その新潟を背負っていくアイドルとしての決意をも感じる。これこそがNGT48のデビューシングルに相応しい曲なのではないかとぼくは考えるのであった。



……いや、でもね。わかるよ。わかるんだけど、言ってしまっていいかな??



……この曲クソじゃね??


ここはあえて賛否両論を狙ったのだろうが、出だしの“水曜日のカンパネラ”調のラップは、トラックも含め、とてつもなくヘッポコな出来であり、アイドルが持つ魅力のひとつである“ほつれ”が表現できてない。言ってしまえば、元からほつれているうえにほつれが重ねられていて、聴いてて気恥ずかしくなるレヴェルだ。

そして突如やってくる『この広い野原いっぱい』や『あの素晴らしい愛をもう一度』的な展開もただ単に『365日の紙飛行機』のウケがよかったから入れただけという感じもする。サビ終わりの「感情こそが青春〜」という部分もそのまま「365日〜」と歌えそうだ。

「仏作って魂入れず」という言葉があるが、この『青春時計』にはそれしか感じない。むしろアイドル自体がそもそも仏作って魂入れずの状態なのだから、その魂は楽曲にあるのだ。故に近藤真彦の曲は山下達郎が作ったりしているのである。

ぼくはホントに秋元康に対して、なぜこの曲だったのか?の真意が聞きたい。それくらい『青春時計』には何も感じない。とはいえ、これはラブオアヘイトの話なので、他の人はどうなのかなとまとめサイトなどを見ると意外と高評価で絶望的な気持ちになる……

同じように48G推しのぼくの友人は「なんでこの曲を選んだのか?」と思っており、妹にいたっては「なんじゃこりゃ!チクタクーじゃねぇよ!ふざけんな!」というラインを送ってきた。そういう意見が多いと思っていたのだが……うーむ。井の中の蛙大海を知らずとはまさにこのことであった……

ちなみにカップリングではひなたんセンターの『純情よろしく』がよかった。ややアーバン寄りのK-POPって感じでMVもそんな感じで作られている。それでもめちゃめちゃおすすめはできないけれど……っていうか、デジパンクな曲だったり、クールな四つ打ちだったり、なんか曲のテーマというか、方向性が定まってないんだよな……

青春時計(TypeA)(DVD付)

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*1:これについてはいろいろ意見あるだろうが、秋元康のなかでそうなのだということを言いたい