黄金期に匹敵するアルバム/the pillows『STROLL AND ROLL』『NOOK IN THE BRAIN』

THE PREDATORSからの流れも多少影響しているが、the pillowsを聴きたくなり、聴いてなかった『ムーンダスト』と『STROLL AND ROLL』と現時点での最新作である『NOOK IN THE BRAIN』をレンタルした。

STROLL AND ROLL 初回限定生産盤 (CD+DVD)

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NOOK IN THE BRAIN (初回限定盤(CD+DVD))

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the pillowsは日本でいちばん好きなバンドだといえる一方『PIED PIPER』以降の三枚……『OOPARTS』、『HORN AGAIN』、『トライアル』がそこまで響かなくて、ああ、いよいよ山中さわおの才能も枯渇してしまったかと、そこでちょっと見限ってしまっていた。だからそこからはわりとスルーしていたところもある。ロックンロール仕様になってしまったり、わりと楽曲の幅も広くなってきて、それが『PIED PIPER』ほどのクオリティに達してないと感じてしまった。あと、どこかオルタナバンドとしてのthe pillowsが好きだったというのも加味してたのかもしれない。実際第三期the pillowsは『PIED PIPER』まで負けなしだったといえる。『PIED PIPER』からプロデューサーである吉田仁が離れ、セルフプロデュースになったこともあって、それがダメだったんだないのか?と邪推してしまう始末。

ところが、ぼくが見限っていた間の『ムーンダスト』と『STROLL AND ROLL』と『NOOK IN THE BRAIN』の三枚がすこぶるよく、the pillowsはまた新たな次元へと突入したのかと思った。特に『STROLL AND ROLL』と『NOOK IN THE BRAIN』の2枚に関しては黄金期the pillowsの作品群に匹敵する出来で、これなら新たなリスナーを獲得してもおかしくないなと思った。

『STROLL AND ROLL』は5人のベーシストをゲストに迎えて制作するというありそうでなかった企画で、それがカンフル剤となったのかライブ仕様の楽しいグルーヴだけが揃った強力なアルバムになった。演奏するのが楽しくてしかたがないというのがよくわかる感じで、圧倒的な疾走感である『デブリ』、『この世の果てまで』以降のハチロクナンバー『カッコーの巣の下で』、ストーンズのリズムで攻める『I RIOT』、ベーシックなロックンロールの『ロックンロールと太陽』、ザ・スミスやストーンローゼズを意識したという『エリオットの悲劇』、またまたベーシックなロックンロールのタイトルチューン『Stroll and roll』に間違いなくライブで盛り上がるキメがバリバリの『Locomotion, more! more!』を含む全10曲。曲の良さもあってすさまじい速さで駆け抜けていく。

『NOOK IN THE BRAIN』は2007年以降、ロックンロールに特化してきたthe pillowsオルタナ解禁ということで作られたアルバム。実際レビューでも黄金期the pillowsを彷彿とさせるサウンドという文章が並ぶ。ぼく個人としてはそれはあまり感じられず、あくまでロックンロールバンドとしてのthe pillowsオルタナ風味が加わったという印象。ロックンロールリバイバルのガレージテイストのバンドの感じがあって、ミニマムだけど、鋭い。アルバムの長さも全10曲で31分しかないというタイトさ。『STROLL AND ROLL』ツアー中にすでに8曲も制作されていたというから山中さわおもノリにのっていたに違いない。そのアルバム雰囲気そのままの『Hang a vulture!』、パブロック調の『Where do I go?』が気に入ったのだが、特に驚いたのが『BE WILD』という楽曲。ロックンロールにおいて歌詞はどうでもいいというぼくが、超久々に歌詞が飛び込んできて大げさではなく魂揺さぶられた。調べたらthe pillowsの大ファンだという女子レスリングの登坂絵莉選手のために書き下ろした楽曲ということで、内容もアスリートの奮起させるような内容。これはここ近年の楽曲で一番突き刺さったかもしれない。実際、仕事中はこれしか聴いてない。

あまりに『STROLL AND ROLL』が良すぎたので、このアルバムのライブBDも買ってしまったのだが、登坂絵莉選手がらみのエピソードを聴いて、『NOOK IN THE BRAIN』のライブBDも買おうかなと思ったほど。さらに黄金期アルバムをライブで再現するということを今やっていて、それを記念して『Please Mr.Lostman』と『LITTLE BUSTERS』がアナログ化。ぼくは前者を購入した。

自分がスルーしてたこともあって、ここまでthe pillowsが盛り上がっていたことを知らず、一気にその熱がまた蘇ってきたわけだが、ぼくみたいに見限ってた人も現時点でのthe pillowsを改めて体感してみるというのもいいかもしれない。しかも2018年は『フリクリ』の続編が制作される。もちろんthe pillowsにもお声がかかった。ぼくは恥ずかしながらthe pillowsのことは『フリクリ』で知ったクチなのでそちらも楽しみである。