Hi-STANDARDの恒岡章が亡くなった。

Hi-STANDARD恒岡章が亡くなった。Twitterには書かなかったが、氷室と布袋やヒロトマーシーみたいな難波章浩横山健という、2人のカリスマの後ろでニコニコしながらドラムを叩く彼の姿が大好きだった。正直メロコアというジャンル自体明るくないというか、得意ではないけれど、ハードロックの良さがわからなくてもツェッペリンが好きなのと一緒でHi-STANDARDは特別な存在だった。特に「MAKING THE ROAD」はホントに大好きでいまだに聴いてるアルバムだ。

 

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少し前に難波章浩ツイッターで「ハイスタは死ぬまでやめない」と言ってたが、オリジナルメンバーでのHi-STANDARDはもうない。悲しい。とにかく悲しい。


活動休止したあと原盤権で告訴するだのなんだのあってもう2度と再結成はないだろうと思っていた。しかしHi-STANDARDは3.11をきっかけに再結成した。再結成後のライブの1発目に「DEAR MY FRIEND」を歌った。「オレたちはまた会える だからさよならなんて言わない」というフレーズの意味が震災後に変わってしまったが、また今回のことでもうひとつの意味が加わってしまった。


悲しい。とにかく悲しい。


ぼくはいまある病気にかかっている。脳神経内科の先生には半年後に何か起こるかもしれないし、20年後もどうなるかわからないと南海トラフ地震のようなことを言われている。自分がこうなってしまったいま、自分が好きだった人がこの世にはいないんだと思うとたまらなくなるのだ。


悲しい。とにかく悲しい。いまはそれだけだ。

禁欲をして真実の愛を見つけだせ!「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」

新潟もいよいよコロナ禍による自粛ムードが高まり、パチンコ店はもちろんのこと呑み屋もそこそこ閉まりだしたので、友達の家でNetflixを開き話題の番組「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」を酒飲みながら観た。しかも一度寝て復活し、深夜から朝方にかけて全部。
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番組を一言で説明すると“ヤリマンヤリチンだらけのテラスハウス”といったところでIQはかなり低め。

ある島に集められた世界各国のヤリ目的10人が1ヶ月同じリゾートホテルのような場所で共同生活しただけで賞金10万ドルというルールが最初に提示され。「こんな美味しい企画があるかい?」と大盛り上がりでイチャイチャしはじめるが、思ったのもつかの間。盛り上がったその夜、真の目的が番組から発表。それが「これから1ヶ月間禁欲生活」であり、キスはおろか、セックスは当然御法度。自慰行為も厳罰対象にあたる。誰かがそれを破る度に賞金が減っていくというシステムで果たして10人は禁欲して10万ドルゲットできるのか?というのが主な内容。

この辺りは宣伝でも見せていたし、もちろんそれを楽しみに観てたのだが、中盤からそのワクワク感は大きく裏切られることになる。

要するにこの企画は「セックスなしで男女は真実の愛を見つけだせるのか?」というWeezerの「Tired Of Sex」みたいな裏テーマがあり、セックス目的(見た目も含め)で集まった人たちが、どんどん悟りを開き「恋愛とはなにか?」「女性の価値とはなにか?」について深く考え、人間として成長をしはじめていくという方向に舵を切り始めるのだ。

ひとりはキリストのようになり、悟りまくった結果、逆にエロ要素が抜け落ち「ここまで悟ればオレはこの場所にいる意味はない」と去って行ったりするしまつでそのひとりひとりが達観していく様がおもしろく、最後はちょっと感動するようなところに着地。もちろん「こんなバカなことに付き合ってられない!オレはセックスをしにきたんだ!」っというヤツもいるし(というか、そういう理由で見始めた人は離脱するであろうというメタ視点もある)、アホなエロのくだりも散りばめてあるが、それすら箸休めに感じたくらい。

惜しむらくは細かいルールが決まっておらず、番組サイドもそれを伝えなかったので「え?それがありなの?」「それはちょっとないんじゃない?」と観ててノイズになる部分が多かったこと。あと番組の進行役にすさまじく権限があり、参加者の行動や人間性を否定したりするため「こういうコンプライアンスに縛られない番組が観たいのに企画自体にそんなコンプライアンスを注意する権限があるのはどうなの?」と思わせたのは結構この手のエンターテインメントとしてはマイナスかと。

とはいえ、これはかなり贅沢なクレームであり、バカとエロに関してはかなりフルスロットルで振り切ってることはマジで評価したい。そのルールをもっと整理し、参加者がシーズン1を観ている状態であれば戦い方は変わるはずで(「バチェラー」がそうであったように)逆にシーズン2が楽しみになったのは事実。故にある種“パイロット版”として割り切って観ることがおすすめ。もしこれが配信されればネトフリ入ってでも観るが……いつになるのだろうか……

Apple Watchを地方で使うということ

数日前にTwitterApple Watchのことをつぶやいたらバズった。10年Twitterしてるがはじめてのことだ。

なので、これにかこつけてというか、便乗して、前にフェイスブックに投稿したApple Watchの記事を改稿してこちらに載せようと思う。

半年ほど前にApple Watchを購入した。
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出た当初は、はいはいApple信者向けのおもしろアイテムねーくらいにしか思ってなかったが、シリーズが進むにつれとてつもない進化を遂げているという情報をyoutubeで知り、さらに幼なじみがシリーズ5を購入したことから火が付いて購入。買ったのはシリーズ3だが、9月にシリーズ5が発売されたと同時に4は廃盤になり、シリーズ3は1万引きで売られるというから、もし興味がある方はシリーズ3でも問題ないのではないかと思われる。

もうブログがややオワコンになっているこの時代、何がどう便利か?というのはyoutuberのだれそれが説明してると思うが、あえてぼくが使った印象を書く。

とにもかくにも便利なのだが、特に思ったのはスマホの画面を立ち上げるときのパスコードや指紋認証がなくてもある程度の機能が時計だけでいけるということだ。

LINEはもちろん、ソフトバンクからのどうでもいい通知を腕をかざすだけで全文見れるのはかなりストレスが軽減される。特にiPhoneがどんどん巨大化しているこの昨今、わざわざポケットから出して天気を確認したり、タイマーを起動させたり、それこそ時間やカレンダーを開くのは意外とめんどくさく、仕事にその動作が必要不可欠だったため、それがわずらわしくもあった。そこが見事にクリアされたのは使ってみてわかったことで、逆にいえばスマホをわざわざポケットから出すということがこんなにめんどくさいことだったのかというのは意外とスマホの便利さにかまけて気づいてない部分なのかもしれない。

そしてなんといっても運転しながら電話が取れたり、iPhoneのマップ機能が使えたりするのは相当便利で、ぼくの会社は各々が取引先の場所を把握して仕事をしているため、急に電話がかかってきて、「どこそこの商品を帰りに取ってきてくれ」なんてことがある。この時にさっと腕時計だけで電話が取れて、そのままSiriで地図を検索し、最短距離でスムースに行けることがここまで便利なのかと感動したくらいだ。

さらに意外と使うのがアクティビティ。自分がどのくらいカロリーを消費し、どのくらいのエクササイズをし、どのくらいの立っているのかがわかるという機能で、最初は「なんだこの無駄な機能は」くらいに思ってたのだが、これがやりはじめると意外と見てしまって。もしランニングとかジムとか通ってる方ならもっとうまく使いこなせるんじゃないかなと思ってしまったし、Apple Watchユーザー同士だけで使えるトランシーバー機能も、電話するまでもない用事でLINEで文字を打つのもめんどくさいなんてときは遥かにトランシーバーの方が楽しいし、簡単なので、もっともっとこれを使いこなしたいなと思った。

ただ、使ってみてわかったのは、これ、地方じゃなくて、東京みたいな大都市ならもっともっと使いこなせるだろうなということ。

例えば、地方はかなりキャッシュレス化は遅れているため、腕時計だけでお支払いできますというお店が恐らく東京よりもかなり限られている。いきつけの巨大スーパーはいまだにクレカしか対応してないし、もちろん先ほど書いたように、仕事にしてもプライベートにしても車社会なため、電車移動などほぼほぼなく、時計に付けれるSuicaが使えるチャンスは東京よりも激減され、そのありがたみはさほどないかもしれない。

さらに目的地にいくまでに駅から歩いて向かうスタイルが基本の東京人にとって、歩きスマホをしなくても地図が確認でき、Bluetoothイヤホンをつけて音楽の操作をApple Watchでしつつ移動するというのは地方モノにとってはある種の憧れのスタイルともいえる。実際、ぼくの会社の飲み会は新津というちょっと離れた場所なのだが、たかだか二ヶ月に一回電車で新津に行くだけのぼくのような人がいたとして、それしか乗らないなら別にキップでいいやくらいに思ってるからこそ、その意味で日本全国で普及させることは難しいんじゃないかなぁとすら思う(しかも、今は出向で内勤になってしまったため、その便利さはかなり封印されてしまっている)。

難点は、Bluetoothイヤホンがないと音楽が聴けないこと、Siriが使える範囲が狭すぎること(当然ながらネットはできない)、さらにLINE電話が時計単体でできないのは致命的ともいえるし、あとは値段がいくらなんでも高すぎる(シーズン3はまだギリ手は届きやすいが、一生モンと呼べない時計にあれだけの値段を出すのはちょっと…)とあるが、Amazonレビューに「なくてもまったく困らないけど、あると便利」って書いてあった通り、ホントになくてもiPhoneがあるから何ひとつ不便ではないけれど、あるとホントにめちゃくちゃ便利なので、興味があるなら是非に。

監督と脚本家を検索しても出てこない……『SAEKO』

どうも7ヶ月ぶりです。とはいえTwitterの話題から検索していただいてるのか、安定したアクセス数を稼いでおります。ありがとうございます。もしこれがyoutubeならそこそこの小遣いになっていることでしょう。

前にホワイト企業に入社できたと書きましたが、そこから5ヶ月前に出向になりまして、出向先がとんでもない仕事量のところだったんですが、その代わり15時は確実にあがれる会社で、さらに仕事に慣れた結果、ここ最近は実働時間6時間で14時あがりと、バイトかと思えるほどの環境にあいなりました。薄給ではありますが、今までが今までだっただけにここはダラダラと自分の時間を無駄に使いたいと思っております。つってもyoutubeとか「バチェラー・ジャパン」とか観てるだけだけど。

で、早速本題へ。

その出向先にて、ちょっと前に50歳の男性が取引先の紹介で入社した。普通に仕事をしていたのだが、あるとき映画の話になり、いろいろ話しているうちにある程度は映画が好きな人なんだなとお互いが認識し、いきなりその人が「カトキチさんって“狂い咲きサンダーロード”って知ってますか?」と言ってきた。

そこからは話が止まらず、いろいろな映画の話をしたのだが、おすすめの映画があると後日5本ほどDVDを借りた。そのなかに入っていたのが今回紹介する『SAEKO』なる映画だ。
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常盤貴子がブレイクする前の映画とだけ紹介されたのだが、ネットで調べてもほとんど情報は出てこず、監督名で検索してもフィルモグラフィはこの『SAEKO』の一本だけ、さらに原作と脚本を連ねる人物を検索しても同じくこれしかたどり付けず、その原作の名前も入力しても出てこないという謎だらけの作品。Twitterでは恐らくVシネではないか?という意見も出てきたが、Yahoo!映画には登録されているようなので、劇場で公開されたのだろうということで落ち着いた。

94年の作品であり、基本的に『眠らない街 新宿鮫』や『天使に見捨てられた夜』、『シティハンター』後の『不夜城』に連なる新宿を舞台にした探偵の話。人を探し出すこと「だけ」が信条の冴子がその信条を破って探し人を依頼者の元に送り届けたことから事件に巻き込まれていく。このあたり『トランスポーター』っぽいな。

ぶっちゃけ最初、演技もステレオタイプでバブル引きずってるチャラチャラした感じの喋り方がノイズになり、ヤクザの描写もおままごとのようでダサく、さらにエピソードも人を探し出して、助けて終わるだけの連なりで「おいおい大丈夫か?」と思ったのだが、これがなかなかおもしろかった。

ちょうど時代もあったのだろうが、演技指導はアレな分、演出がかなり濃厚で、描写も展開も容赦ない。さらに前半の部分が意外なところで繋がりを見せ始め、最終的には思いもよらないところへ転がっていくところも良い。逆に言ったらタイトで無駄がないためすべてのシーンが意味を持ってくるあたりもうまい。主人公たちの関係性が何一つ説明されないし、主人公の心情も出てこないまま話が進んでいくのだが、これも裏を返せばハードボイルドの定石通りであり、なかなか制作者たちも“わかってる”感が強い。

そもそもこの映画の中で描かれているのは女がダマされAVに出演させられ、路地裏で麻薬が売買され、BARには裏社会の人間が集まり、日々殺人事件が起きているオレが見たかった新宿である。ハードボイルドで重要なのは街が魅力的に描けていることだと言ったのは確か糸井重里だったと思うが、その土台がしっかりしてる段階でこの作品は及第点である。

何よりも素晴らしかったのが藤原組長こと藤原喜明の存在感だ。

不勉強ながら映像作品に出ていたことを知らず、こんな演技も出来るのかと驚いたくらいで、中盤以降は常盤貴子よりも目立っており、後半は彼を見るためだけに観ていたといっても過言ではない。なんならちょっと彼の演技にウルっときてしまったくらいである。

というわけで、絶対に観た方がいいとは口が裂けてもいえないが、何一つ情報がない作品だったのでこうして記事にした次第である。藤原組長のことを書いたが、常盤貴子がすこぶる魅力的で、彼女のキャピキャピした演技とハードボイルドの骨太さが化学反応を起こしてるあたりも見所だ。

中年の蹉跌『私の男』

『私の男』Amazonプライムにて鑑賞。
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DVDのパッケージかなんかでなんとなくどんな話か分かってしまうが、なぜかAmazonプライムの紹介文にはストーリーが伏せてあり、あの文面を担当してる人はなかなか苦心してるというか、そこまで作品に気をつかってるのがおもしろいと思った。その意味で信用できるかもしれない。

絶対に他人には知られてはならない「ある秘密」を抱えた親子がその秘密を他人に知られたので殺人を犯すという物語なので、松本清張の『砂の器』っぽいが、だからといってミステリーになることはなく、原作は直木賞を受賞したようだが、それとは別の純文学的な香りが漂う。うらぶれた極寒の港町が舞台で、階級的には下の方の人々が住んでいるわりに妙なスケールと重厚感があるのは、美術スタッフと監督の力量がなせる技であろう。そのリアリティと雪原地帯でなにがしが起こるという意味で神代辰己の『青春の蹉跌』がすぐに思い浮かんだが、その他にも今村昌平の『復讐するは我にあり』や長谷川和彦の『青春の殺人者』なんかも同じ系譜に入ると思う。よくよく考えたら『青春の蹉跌』の脚本は長谷川和彦だし、その長谷川和彦は元々今村昌平の助監督だったので、そういうところで作品というのはつながっていくもんだなと思った。だからといって熊切和嘉とは直接関係ないのだけれど。

今作はその雰囲気と共に役者の熱演が光る。しかもほぼほぼ会話がなく、その会話も無言な部分が多めで、間も長く取っている演出のため、それこそ役者の力量が試される部分が多いが全員見事だったと思う。浅野忠信はややミスキャスト感があるものの、90年代のエキセントリックな佇まいは封印し、良い感じで枯れた中年男を演じているし、なんといっても当時19歳だった二階堂ふみが文字通り身体を張ったアクション*1で観る者すべてを圧倒。決して恫喝しないが、それ以上に優しく諭しながら人間を追いつめていく藤竜也や、超絶なインパクトを残すモロ師岡など、久しぶりに役者の演技を中心とした映画を観たという印象が残った。全体的に長回しが多かったのもその印象を援護射撃したのだろう。

惜しむらくは『エンゼル・ハート』を彷彿とさせる血みどろセックスを前半に持ってきておいて、そのインパクトを越えてくるシーンが後半になかったこと。で、そのシーンにおいて二階堂ふみはかなりきわどいところまで演じているんだけど、下着をつけていた時間が長く、どうもそこがノイズになって没入できなかったということ。これは各々のセックス観があるためにどこにリアリティラインを引くかにもよるが、テーマに官能が深く関わってくるだけに、ここがそれこそ映画史に残る!みたいなシーンであったなら『ラストタンゴ・イン・パリ』レヴェルの名作にまでなったと思う。逆にいえば、それ以外が完璧な映画であったという極左でもあるのだが。

とはいえ、それはほんの些細なもので、ほぼほぼ傑作だと言ってもいいかもしれない。2時間越える映画で派手なシーンはひとつもないが退屈しなかった。ぶっちゃけ熊切和嘉監督作品は『アンテナ』以来ノーチェックで、毎回取り上げる題材が地味すぎて惹かれないというのもあってスルーしていたのだが、今作がかなりおもしろかったのでちゃんと観なきゃなと襟を正した次第。タブーを扱いながらも「いつまでも変わらない男と変わっていく女」という普遍的な男女の話に帰結させるあたりもうまいなと思った。すべての大人たちにおすすめしたい。

私の男 [DVD]

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*1:この場合は演技全体を指す