三人の生徒が三人の先生を!?!?『先生!、、、好きになってもいいですか?』

『先生!、、、好きになってもいいですか?』をレンタルBDにて鑑賞。
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恋は雨上がりのように』のアニメ版についてブログに書いたが、基本的に年をとったことによって「世間から手放しで祝福されにくい恋愛している人」に「甘酸っぱい青春の要素」が加わった話が最近好きになり、当然ながら「女教師と男子中学生の恋愛」を主題にした『中学聖日記』も酩酊状態で布団にくるまり悶絶しながら観てたりする(実はブログのネタとして書いたのだが、8話進んだ段階で、自分が指摘したことが構成上のネタ振りだったことがわかりボツにした)。

で、その流れもあって「女子高生と高校教師の恋愛」を主題にした『先生!』も借りてきて観た。

この手の映画はおっさんになってからハマったクチなので、改めて観て驚いたのだが、キャストのヘアメイクはまるでお人形さんのようで走っても激しく乱れることはなく、天候を表現する照明もテレンス・マリックかというくらいすべてが包み込まれるような優しげな雰囲気を醸し出す。美術に至っては汚しや傷みたいなものはいっさいなく、清潔感の極地みたいにピカピカで、端的にいってこの世のものとは思えない、なんなら天国ってこういう感じの世界なのではないのか?と思うくらいの映像。もちろん甘酢を引き立たせるための画面設計なんだろうが、浮世離れしすぎて気持ち悪いというか、ブルーレイの高画質もあいまってファンタジーのようであった。三木考浩監督の作品は『ソラニン』しか観てないんだけど、知らない間に「胸キュン映画の巨匠」に登り詰めていたようで、その手腕はこういうところに発揮されていたらしい。

と、最初は度肝抜かれたんだけど「いやいや、オレはこういう映画を求めてレンタルしたのではないか、それこそインスタ映えするようなスイーツを食べるために来たのに“え?餃子とかないの?”」と怒るバカはいないと襟をただした。

映像はとにかく話もなかなかぶっとんでいる。

端から「先生と生徒の恋愛話」であることは百も承知で、それが観たいから借りてきたわけなのだが、はじまって早々、三人の生徒がそれぞれ三人の別な先生に恋するという禁断の恋愛のメガ盛り状態。で、そんなスタートなので、なぜ彼女たちが先生のことを好きなのかは描かれず、そのなかのひとりは若い過ち的なことなのか、その恋愛に対して早々に離脱する。で、残されたふたりはそれぞれに小さな恋を育んでいくのだが、広瀬すずはどこのきっかけでその恋が燃え上がっていくのかよくわからない。いや、別に好きに理由なんてないからいいのだけれど、じゃあそこに理由がなければならない生田斗真はどうかというと、これもまたよくわからない。その点、そこにしっかりと観客が納得する理由をつけていた『恋雨』はやっぱりよくできた作品だったということになる。

1時間話が経過すると、予想を超えた(といってもあらすじに書いてあるが)展開になり、その様子が運悪くSNS上で拡散。どの程度の社会問題になったのか画面上ではでてこないが、生田斗真側に責任ありとされ、彼と広瀬すずは離ればなれになってしまう。がしかし、彼らはそんなのどこ吹く風といった具合で何一つ傷を負わずにあっけらかんと日々を過ごしていく。

それに見かねた別な先生に恋をしていた親友ふたりがふたりのケツを叩き、お前らは一緒にならんかい!と激を飛ばし、ようやくふたりは本来の気持ちに気づいて、一緒になってめでたしめでたしという感じで映画は終わる。

とまぁ話の流れはこんな感じなのだが、いまツッコミを入れた以上に問題だらけの話である。

生田斗真は社会的な制裁を受けなければならないのにいうほどそんなことになってなく、SNSに晒されたにも関わらず、なんか自分からその処置を発案したかのような口ぶりで、しかも彼女からの「逃げ」だと見なされているし(『中学聖日記』でさえ、淫行疑惑で退職まで追い込まれているのにである)、そもそもタイトルに書いてあるように一方的に想いを寄せてていいか?と彼女側から譲歩しているわけで、先生もちゃんとした大人である以上、そこ止まりにするべきだった。実際、広瀬すずは先生とのある約束を境に、もう先生の周りをウロウロすることはしないと決意しているのである。つまり中盤であんなことをしたのはそれこそ「魔が差した」と思われても致し方ないし、劇中の言葉を借りるなら「弁解の余地」もなく、彼女への想いをみんなの前で独白するシーンも説得力に欠け、それが「胸キュンなシーン」とはどうもなりにくい。

ふたりのことを説得する親友もムチャクチャで、本人たちが納得し、それぞれの道を歩もうとしていて、その理由と行動に説得力があり、むしろこれで終わればキレイに収まるのに、『アウトレイジ ビヨンド』の小日向のように余計な理屈で引っ掻き回しはじめ、それが完全にノイズになっている。なんというか、ハッピーエンドに無理矢理もっていくための設定というか……

とはいえだ。そんなことを許容してこその甘酢ムービーなのだ。その意味でこの『先生!』は甘酢をこれでもかとぶっかけまくった濃厚なスイーツであり、特に前半はどこを切っても甘酢しかないような展開でキュンキュンしたし(メガネのくだりとか、先生に数学手伝ってもらうとか、雨のなか想いを叫ぶところか!)、正直、後半とかガッツリ観ながら泣いたりしてるのも事実。それをあっさりと平らげることができたのはなんといっても広瀬すずの清涼感!そしてその演技のうまさ!表情のうまさ!であり、彼女がやってればなんでもいいやとさえ思えるくらいであった。あとスピッツのエンディング曲な。

といったわけで、そういう緩い部分も含めて、ぼくはこれからこういった甘酢ムービーを『エクスペンダブルズ』を同じように楽しんでいくんだと思う。なんなら甘酢シーンだけしかないとかそういう映画作ってくれないだろうか。『パシリム』みたいな感じで。