オフィス北野騒動を予言していたかのよう『アウトレイジ 最終章』

もう去年の話になってしまったが『アウトレイジ 最終章』をレンタルBDで鑑賞。
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見始めて「しまった」と思ったのだが、なんとこの作品、前作である『アウトレイジ ビヨンド』の完全な続編であり、前作で死んでしまったキャラクターの名前や前作で生き残ったさほど印象に残らなかった人が重要なポジションになってたりして、その辺が頭に入ってなかったために、観てるあいだ多少混乱したことを告白しておく。なのでまだ未見だというぼくみたいな人はまずは『ビヨンド』を観てすぐにこの『最終章』を観ることをおすすめする(一応さかのぼって前作、前々作は見返しました)。

で、その『最終章』だが、まず花菱会の会長役であった神山繁が実際に亡くなったことである種の代役として大杉漣が久々の北野組に参戦。そんな大杉漣も直後に心不全で亡くなるとはなんという運命だろうか。

さらに脳出血で倒れた塩見三省とベッドから落下してケガした西田敏行のふたりがリハビリ中で立ち上がったり、歩くことができなかったという状況で撮影されたことが明かされた。しかし見終わってみるとそんなことを微塵も感じさせなかった。これは監督の配慮もあるだろうが、いかなる状況であってもしっかり仕事をするという、ふたりの役者のプロ根性みたいなものも見せつけられた。

そんな状況もあってか、作品自体は外様からきて会長になった男を気に入らず、なんとか大義名分を作り出して、会長から退けようとする若頭の話ということで『ビヨンド』の設定とほとんどかわらない。戦争のきっかけもホントに些細なことからはじまるというあたりも一作目とほとんど一緒。前作の加瀬亮のポジションを大杉漣が担い(演技のテンションもかなり似ている)、それにかり出されるのがビートたけし演じる大友ということで、これを観に来たからこれでいいみたいな感じというか、タンメンを食べるためにいきつけの中華料理屋にいったら野菜不足のため、野菜少なめで冷凍の海鮮の具材が入ったタンメンになってた。しかし、それはそれでうまかったとそういう映画である。

『最終章』ということもあって、一抹の寂しさみたいなものが映画全体を覆っており。誰しもが思ったと思うが、冒頭といいラストといい久石譲の音楽と沖縄の海がない『ソナチネ』になっていてファンとしては思わずニヤリといったところだろう。突拍子もないバイオレンスは鳴りを潜め、良い意味で『ビヨンド』同様、バカヤローコノヤローの応酬が覆い尽くす。故に前作にノレなかったという人は今作も同じようなことになるだろうし、前作が良かった人は今作にも満足できるのではないかと思われる。

といったわけで、このシリーズが終わってしまうのは惜しいが三部作としてまぁこうなるよなというオチも含めて、ちゃんと幕引きをしてるような文字通りの『最終章』となっている。『ソナチネ』とは違い、ラストに唖然としないというのも映画監督として老成したように思える。次の作品が楽しみなのだが、お家騒動的なことがあった今、次の映画はどうなるんだろう?その意味も含めて『アウトレイジ』シリーズはそのことすらも予言していたというか、メタファーになっていたのではないだろうか。