『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』をUK盤BDにて鑑賞。
未公開映画を多く紹介しているブログ“Tinker,Tailor,Soldier,Zombie”にもレビューがあがっているが、まったく同じ感想を持った。
前作はヒーローになりたいボンクラと父親によって生まれながらに殺人マシーンへと育てられた少女がたまたま出会ったことにより、ギャングと対峙することになるというストーリーで、その後に公開された『スーパー!』同様、結局ヒーローも犯罪者であり、殺人犯と変わらないという、スーパーヒーローの是非を『ウォッチメン』とは違うやりかたで問うた作品だったが、前作のように主人公がふたりいるという部分は割愛されているのでそこまでストーリーは入り組んでおらず、むしろ、キックアスによって父親を殺された息子が今度はキックアスに復讐するという設定で『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』よろしく、主人公のキックアスが復讐される側にまわる。
前作もそのような部分があったが、今作は完全なヤクザ映画である。アメリカだからというのもあるだろうが「仁義」などひとつもなく『アウトレイジ』のごとくやられたらやりかえしまくりの倍返しまくりで、いってしまえば縄張り争いをするカラーギャングの抗争がそのまんまコスプレしたヒーローになっただけの話。ここにノレるかノレないかで評価は別れそうだが、前作のような入り組んだストーリーがない分、ドラマ部分がかなり多くなり、キャラクターの掘り下げ方は前作よりも遥かに深い。しかもその分バイオレンスも激しめで、血は前作以上にブシュブシュと飛び、さらに観る人によっては不快になるような美女の○○○○シーンもあり、その辺はすごく楽しく観れた*1。
そういうパワーアップしたシーンや掘り下げによってヒットガールが魅力的になったのは満足っちゃ満足なのだが、今作の最大の欠点は前作のようなキャッチーでポップなアクションシーンが一切なくなってしまったことであり、それゆえ各見せ場もいまひとつ盛り上がりにかける。クライマックスもクライマックスなんだかよくわからないような展開になり、わりとあっさりと終わってしまう。演出もキレがない。そもそもキックアスがヘナチョコではなく、そうとう鍛え上げて戦っているためにその辺のハラハラ感もゼロに等しい。ヒットガールは端からちょー強いし。
とはいえ、女ドラゴンへと成長したヒットガールの登場シーンはやはり燃えたし、なんといってもマザーロシアという超強力な新キャラクターはインパクトがあり、その辺は前作以上の魅力といえる。とりあえず前作を観た人は観て損ない映画だと思うのでスクリーンで観ることをおすすめしたい。良作。あまり構えず観たほうがいいかも。
*1:Tinker,Tailor,Soldier,Zombieでも書かれていたが、恐らく同じシーンを指してると思われる