新潟では『カメ止め』以上の盛り上がり?『ミッドナイト・バス』
『ミッドナイト・バス』をレンタルDVDにて鑑賞。
このタイトルを知らない新潟県人はいないと言っていいかもしれないくらい、新潟での知名度はバツグンであり、新潟日報社が制作していることもあって新聞広告や記事でもバンバン特集した結果、新潟のシネコンでは連日満員御礼*1だったという文字通りの地域密着型の作品。
この作品の見所はなんといっても「新潟」そのもの。満漢全席かフルコースかというくらいの登場量で、駅や街並、食事処、病院など出てくる風景はもちろん、朝食のシーンではいくらなんでも新潟県人は食卓には置かないだろうと思われる「かんずり」が置かれ、笹だんごに加島屋の贈答品はもちろん、飲む酒として吉乃川が置かれる。終盤、施設に入っているおじいちゃんを旅行に連れて行くはこびとなるのだが、そこも佐渡島でその段階でもお腹いっぱいなのに、ラストに「カーブドッチ*2」まで登場してトドメをさされた。これは新潟愛が強い地元民でも失笑するレヴェルなのではないかというくらいに徹底している。
さらに娘がご当地のアイドルとして活躍しているという設定だが、この軌跡自体がNegiccoのそれとかぶっているのも興味深かった。どの程度参考にしたのかはわからないし、原作がそうなっているのだが、新潟県人が観るとどうもそういうどうでもよい深読みまでしてしまう作品となっている。
もちろん新潟の良い風景だけを映しているので、カットがつながらないような部分も散見されるが、これは大林宣彦でいうところの“尾道三部作”のようなものであり、新潟という中途半端な地方都市を美しく幻想的に切り取っているということでもある。監督のことは失礼ながらなにひとつ存じ上げなかったので調べてみると、大林宣彦の助監督をしてたことがわかり、ちゃんと師匠の教えはどういう形であれ顔を出してくるんだなぁと思った次第だ。
話としては典型的な家族崩壊からの再生を描いていて、小津安二郎の『東京物語』や山田洋次の『家族』をもっと現代寄りにしたような感じでそれ以上でもそれ以下でもない。にも関わらず、なぜか2時間36分もランタイムがあり、どう考えても無駄が多いように思えるが(とはいえ『東京物語』や『パリ、テキサス』は長いけど)、意外とこれが観られるのは監督に腕アリといったところだろうか。ものすごく淡々と話が進むにも関わらず、これがちょうどいい高揚感というか、それこそタイトル通り高速バスに乗って移動してるときの微妙な退屈感や孤独感、時間経過感が音楽の使い方も含めてぴったり合うというか、そういう映画である。役者陣も豪華で、特に主役を演じた原田泰造が思ったことをクチに出さない寡黙な父親を演じていて、これが高倉健の風格が漂っていてよかった。半分ロードムービーのような映像とあってたのかもしれない。
フィルマークスではマークしてる人がかなり少なく、ホントに新潟県のみでのヒットになったんだなと思ったが、言うほど悪くなかった。2018年は仕事が変わって時間がそこそこできたため、ここ数年見逃してた作品をDVDやAmazonプライムでそこそこの本数を観たが、そのなかではかなり上位の出来。というか『バーニング』しかり、ぼくはこういうジャームッシュとかヴェンダースのような、対して何も起こらない純文学のような作品が好きなのだろう。
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