“狂った”邦画をいくつか観た

Twitterで知り合い、新潟に住んでるということで普通にプライベートでも仲良くさせてもらってる「映画悪ガキコンビ(たった今命名)」のghostboatくん(https://twitter.com/ghostsociety12)とまこーくん(https://twitter.com/Makoto_ucc)に「今まで観たかったんだけどレンタルなくて観れなかった映画」やおすすめ作品をいくつか借りた。「ホントにすごいですよ!やばいです!」と言われたのだけど、ホントにすごくてやばかったのでまとめて紹介したいと思う。タイトルに「狂」という字が入ってる作品がいくつかあるが、その名のとおり「狂ってる」としかいいようがない作品だった。

狂い咲きサンダーロード

狂い咲きサンダーロード [DVD]

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恥ずかしながらずーっと未見で必ず「観てない」というと「絶対に観たほうがいい!」と力強く言われるので映画ファンのはしくれとして少しばかりうっとうしいと思っていた。マッドマックスに影響を受けず、ウォリアーズ、ストリート・オブ・ファイヤーAKIRA、コインロッカーベイビーズ、さらば青春の光、ションベンライダー的に通ずる世界観なのに、そのどれよりも早い…もしくは同時期に生まれてるというのがすごい。たまに映画史においてこういう同時多発的なジャンルのムーブメントというのは起きるものだが、いわゆる東京流れ者とポイントブランクの関係性に近いのかもしれない。なのでこの作品を形容するとしたら「サイバーパンク深作欣二にやどるペキンパー魂!」といった具合になる。手にカギ爪がつくのはローリング・サンダーだろうが、まぁとにかく燃えた燃えた。それこそ上記の作品群が好きなら間違いないジャパニーズ・パンク奇跡の傑作。熱狂的なファンが多いのも納得であった。


狂った野獣

狂った野獣【DVD】

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強盗に失敗した二人組の男がバスジャック。しかしその運転手は心臓に爆弾を抱え、それを隠して仕事をし続けてる男で……というノンストップアクション。はじまって5分で乗車。そこからバスは延々止まらない。 超絶なカースタントはもちろんのこと、人間は極限まで追い込まれるとどうなるか?ということまでしっかり描かれ、舞台はほぼバスの中だけなのに話が二転三転する。 「ポリスストーリー」「ポリスストーリー3」「スパルタンX」などジャッキーの映画に出てくるようなシーンがあったが、いくらなんでもこれを観ているとは……『スピード』は『新幹線大爆破』の影響が大だと思われるがこちらもなにかしらの影響があったのではと思わせる。とにかく「やばい」という言葉が似合う大傑作だった。おもしろかった。オレが日本映画にもとめるすべてがあった。


狂った果実

狂った果実 [DVD]

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アリスの同名楽曲にインスパイアされて製作された作品で石原裕次郎出世作となったアレとはまったく内容的には関係ない。鬱屈した怒りをためこんだごくごく普通の若者がファムファタールと出会ったことで、それを爆発させ、その衝動が性と暴力へと向かう……という、いわゆる『タクシードライバー』的な映画であるが、物語の構成自体はノワール要素が強い。印象的なシーンが多いが、すべてにおいて映画的に盛り上がらないように撮っており、それが逆にリアルさをあおる。 クライマックスの襲撃シーンにしても、生々しく、本当にこういうところで、ああいうことが起きたらこんな感じになるんだろうなぁと唸った。ロマンポルノとして製作されたが、セックスシーンも含めて、すべてがしっかり機能している作品だと思う。


『人魚伝説』

人魚伝説 [DVD]

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冗談みたいだけど、夫を殺されたあまちゃん(海女)が100倍返しの復讐をするという話で、原発問題も含めて、改めて広く観られるべき映画だと思った。「半沢直樹」にそっくりなセットとかあってビックリした。 後半1時間はずーっとクライマックスであり、タクシードライバースカーフェイス丑三つの村、新・片腕必殺剣に匹敵するすごさ。空いた口が塞がらなかった。 あんまし詳しくないんだけど撮る側と演じる側に狂気めいたものを感じるという意味で『DOOR』に近いものを感じた。あの頃のディレカンってのはそういう空気感みたいなものがあったのかな。映像も筆舌に尽くしがたいくらい美しく、ヒロインの演技は神がかっていた。まさに「伝説」の映画だった。


『愛欲の罠』

愛欲の罠 [DVD]

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殺し屋のナンバーワンを狙う男が組織に翻弄されるというストーリーで鈴木清順監督の『殺しの烙印』とカブるが、監督の大和屋竺と脚本の田中陽造鈴木清順を中心とした脚本家集団“具流八郎”のメンバーということで、ある意味、姉妹編ともいうべき作品。オープニングで建物のシルエットが映し出されるが、これが「エヴァ」に影響を与えたかどうかは不明(34年間封印されていた作品ということで)。原色が細部にちらつくセットのクオリティがすばらしく、不能な凄腕の殺し屋を荒戸源次郎が怪演するなど、見所はたくさんあるが、この映画が唯一無二なのはこの殺し屋を狙う“人形使い”というキャラクター。なんとも不気味であり、これに似たキャラクターが他にでてこないのも不思議だった。「あっかんべー」というメタ的なラストも含め、カルト的な人気を誇るというのも納得。


江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間

何回「き○がい」っていうねん!とつっこみたくなるほど放送禁止用語連発で確かに地上派での放送は無理。というか、公開当時も成人指定でそのときから「これ実はやばくね?」という空気感が漂っていたようである。すんごい設定で狂ってるんだけど、全部伏線というか、ちゃんとそれなりに理屈が通ってるという部分でずっこけた。もちろん良い意味で。江戸川乱歩の諸作品の断片が組み込まれてるということで元ネタを知ってるともっと楽しめるんだなと思った。

レンタルにないものもあり、普通に購入すると高いので、こういう「手に取ることが出来にくい作品」を大手を振ってすすめるのは気が引けるのだが、大変おもしろかった。この他にずーっとソフト化されておらず最近レンタルが解禁された『殺しは俺のパスポート』も観たのだが、あまりに普通の映画でちょっと拍子抜けしてしまったくらい。