黒いのはダークナイトの影響か?『ロボコップ』

ロボコップ』鑑賞。

この監督が以前撮った『エリート・スクワッド』は未見なのだが、業界的にこういう人をしっかり引っ張ってくるハリウッドの懐の広さみたいなものを改めて感じた。ハイコンセプトが主流だった90年代から2000年代はリメイクだらけになってしまったが、そんな中、なんやかんやいっても世界的に評価されてる映画は当然チェックしていて、その企画のなかで新しい才能をどんどん使って良い映画にしていこうという志はあるのかもしれない。

真っ黒い鋼鉄の男ということで『アイアンマン』と『ダークナイト』を掛け合わせた感じにしたかったのかなというのはぬぐえないが(しかも黒くする理由がまた……)、それが映画会社からのオファーだったとしてもその方法論で『ロボコップ』をやるのはアリなんじゃないかなと思った。バイオレンスは控えめになったが、両者の良いとこ取りによってアクション映画として動きが早く、観てて楽しい。

タマフルで宇多さんも言っていたが、アメリカという国を第三者の目線で見るというのは奇しくもオリジナルと同じで、ニュースキャスターを使って外側の情報を提示するのも良いし、画面内の情報量の多さをキチンと整理して分かりやすくしているのも好感をもった。まぁそりゃ無感情になっていくマーフィーだ。多くを語らない分、その辺で補ってくれないと困る。

政治的でありながらもプロットはわりとシンプルで主人公の復讐はあっさり達成されたり、結局この会社欠陥品作ってね?ってくらい設定があいまいだったりで、本来はエモーショナルにならなければならないのに、そのせいでおいおいと思ってしまうところもある。機械として生まれ変わった主人公が人間らしくなるというオリジナル版と真逆にしてしまったせいで、いまひとつ燃えさせてくれないところも気にはなった(残された右手にしても……うーん……右手にそんなに意志があるかと思ってしまった)。

しかし、この作品が素晴らしいのはその合間に散りばめられてる魅力的なシーンの数々。

冒頭のテロシーンにはじまり、脳みそと肺がむきだしなマーフィーは押井守が言いたかったことをビジュアル一発で見せてるようで感動した。『ダークナイト』よろしく夜の街をバイクで駆け抜け「攻殻機動隊」のように一人(いや一体か)でアクロバットにかちこむ。観る前は忘れてたのだが、サミュエル・L・ジャクソンの演説にしっかりマザーファッカーを言わせ、映画ファンにとっての決まりごとも忘れない。エンディングでかかる名曲も作品の内容に合っていて音楽のかっこよさもあいまって鳥肌立った。

田んぼでダッシュするというのは賛否あるかもしれないが、新潟は基本的にイオンの裏が田んぼだから画的にすごく親近感を覚えたということだけは言っておきたい。

というわけで、オリジナル版とは違うのは当然としても、これはこれで楽しく観れた。DVDで見返すとかはないかもだけど。気になってるならば観てもいいかも。Rotten Tomatoesでは大半が「思っていたよりもずっと良い出来栄えだったが、原作より良い訳ではない」という評価だったらしいが、一語一句同意である。