「伝説」から「神話」へ………『ダークナイト ライジング』

ダークナイト ライジング』を吹替版で鑑賞。

いわずとしれたノーラン版バットマンの3作目にして、完結編。前作から8年後、デント法なる新たな法が制定され、凶悪犯罪はへり、そのデントを殺害したという無実の罪によってバットマンの活動は鳴りをひそめ、ゴードン本部長ものほほんとした事件に精をだす日々をおくっていた。ところがそんなゴッサムにベインと名のる凶悪犯があらわれたのだからさぁたいへん。引きこもり同然だったブルース・ウェインはふたたびバットスーツを着こみ、ベインとの対決にいどむのであった……

ぼくはノーラン版バットマンの一作目である『バットマン ビギンズ』はまったくダメな作品だと思っていて、それこそスケアクロウは弱っちぃし、バットマンは忍者もどきに鍛えあげられてるし、渡辺謙はちょっとしか出てないし、あげくの果てにクライマックスの『フレンチ・コネクション』オマージュにしたって、「おいおい!あれは普通の自動車でやったからハラハラするんであって、そんな戦車みたいな乗り物に乗って追い回してたんじゃ、いろんなもん蹴ちらせるし、ちっともハラハラしないわい!」と憤慨していたのだが、いろいろあって、都合3回は見返した。『ダークナイト』や『インセプション』、『メメント』はホームランであったが、『プレステージ』や『インソムニア』など、三振もおおいノーラン作品において、この『ライジング』もそこまで過度な期待をせずに観にいったというのが本音である。

結論としては一本の映画としていかがなものかと思う部分も少なからずあるが、サーガの最終章として、これほどまでに完璧な終わらせ方はないという作品であった。『ビギンズ』をスモーカーに入れ、『ダークナイト』と『インセプション』のチップで燻したんだけど、数分でお手軽に食べれるように香りをつけただけなので、やはり中心の部分はまぎれもない『ビギンズ』だった……という感じだろうか。

あの偉大なるジョーカーを失ってしまい、一体どうなる?と危惧された*1ノーラン版バットマンだが、ベインという負けず劣らずの強力なキャラクターを造型することにより、『ビギンズ』の弱点だった「バットマンの相手役が弱すぎる」という問題点をクリア。というよりも『ダークナイト』に近づけたというほうがただしいかもしれない。

それだけでなく、○○○○○がワンカットの長回しで爆破されていくという予告編にもあった強烈なインパクトのあるシーンや、『インセプション』のクライマックスをそのまんま後半に持ってくるなど、見せ場に関しては大盤振る舞い。端からオチを決めてあったのか、大拍手を送りたいくらいのグランドフィナーレであり、それゆえに「伝説」を「神話」へと昇華させることに成功した希有な作品だといえる。

いままで、ブルース・ウェインとアルフレッド、フォックスのキャッキャ感みたいなものがシリーズを占めていたが、今作では女性の存在が大きなウエイトを占め、これまでになかった華を添える。特にアン・ハサウェイがすこぶる魅力的であり、あのバットマンを翻弄する「キャット・ウーマン」として登場。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットも『インセプション』に出演していたということもあって、新顔という印象はなく、いきなりこのシリーズになじんでいる。

正直、対話するシーンがやたら多く、そこでテンポが一気に急落するし、かなり物語に関係ないこともペラペラしゃべっているので、ところどころで退屈してしまう*2。ブルースは一度引きこもり、身体も精神もズタボロになり、そこから復活を遂げるのだが、後半でそれと同じような展開がもう一回来るので、その時点で辟易するなど*3、欠点もかなりあるが、それを補ってあまりある怒濤の見せ場と映像はスクリーンで観る価値おおいにあり。新潟にはIMAXがなく、むしろ、それを体験してないので、どんなものなのか分からないが、もし良い環境で観れるならば、是非そっちで観ることをおすすめ。

現代における「神話」の誕生に立ち会うがよい!

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『ビギンズ』と『ダークナイト』は公開記念なのか、スペシャルパッケージでの登場。こちらのほうがシンプルでかっこいい!

*1:というか、ぼくが勝手にしていた

*2:これは前作の『ダークナイト』でも見られた問題である

*3:あの牢獄はなんなんだ?とか地下からの復活が前半のそれに比べるとかなり劣るなど、言いたいことはいろいろある