『8 1/2』+『NINE』=9

『NINE』を鑑賞。

フェリーニの『8 1/2(ハッカニブンノイチ)』のミュージカルリメイクなのだが、予告編を見てもそんなことは一切言っておらず、ぼくがそれに気づいたのは映画が始まる直前だった。ジーザス!

8 1/2』は、9本目を撮ろうとしていたフェリーニが「うおー!9本目のアイデアがうかばねぇから、そのままそれを映画化しちまえ!」という勢いのまま撮ったような作品。ストーリーは著名な映画監督グイドが私生活では女に手を焼き、さらに現場では映画が撮れないことから妄想の世界に逃げようとする。ところが、妄想の世界もグイドを逃がしてくれない。実生活も妄想の世界もどんどん破綻していく。これは「ここから逃げたい!でも逃げてしまったらどうなる!」という監督のジレンマなんだとぼくは解釈した。みんなもあるでしょう「こんなシフトにしやがって、バイトばっくれてやろうかしら。でもバックれたら、その後が大変じゃねぇか!」みたいなことは。

『NINE』は『8 1/2』に出て来る妄想シーンがぜーんぶミュージカルになった作品だった。しかも、監督の幻想世界、映像のコラージュみたいなものは一切なく、登場する女が踊り狂って「ねぇ、ハニー、もう私は濡れ濡れなの、早く抱いてー」と言って来て、それが男の妄想大爆発みたいでかなり好感が持てた。

しかも『NINE』はミュージカルになったことでオリジナリティが出てるかと言われるとそんなこともなく、かなり原作の『8 1/2』に忠実な作品でもある。まるまる同じシーンも出て来るし、言ってしまえば展開もほぼ同じで、交通整理されて分かりやすくなったくらいだ。オリジナルで印象的だったラストシーンをアレンジして冒頭に持って来るという大胆な構成もなされているが、『8 1/2』のその後も映画には出て来て「あ、あんとき現実世界ではこんなことになってたのね」ということも教えてくれる。内容はまるで違うが、『8 1/2』が『エヴァ』のラスト1、2話だとすれば、『NINE』は『Air/まごころを、君に』といった具合。

グイドを演じたダニエル・デイ=ルイスはハマり役で、それ以外の女優の美しさは予告編の通り。個人的には浜辺の娼婦を演じたグラマラスなファーギーにノックアウトされた(オリジナルでも豊満なボディの女優さんが演じてて、うひょー)。

というわけで『8 1/2』を観てよく分からんかったなぁという人は『NINE』を観ると補填されるだろうし、『NINE』を観てから『8 1/2』を観ると、グイドは内面であんなに悩んでたのかという風に映ると思うので、両方観るとより楽しめる気がした。もちろん豪華絢爛なミュージカルシーンはスクリーンで観るのが圧倒的におすすめです。あういぇ。

あ、あと今回ばかりはイタリアが舞台なのに英語で喋ってるのが気にならなかったよ。歌がよかったからね!

8 1/2 普及版 [DVD]

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NINE

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