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『隣の家の少女』がとてもおもしろかったし、ほとんど1日で読めたので、これは翻訳も原文も相性がいいはずだと思い、ジュンク堂でジャック・ケッチャムの作品を一気に買って来た。
そして、『オフシーズン』と、その続編である『襲撃者の夜』を読んだのだけれど、これがすこぶるおもしろかった。完全にハマった。一気に読んだ。90分のホラー映画を観てるようなスピード感と恐怖の連続だった。
ストーリーは6人/3組のカップルが、避暑地に遊びに行って、そこに住む人喰族に襲われるというシンプルなもの。物語は深夜から翌日の夜明けまでという一日のお話。
ジャック・ケッチャムという人は、ツカミがとにかくうまい。感想を一通り読むと前半がつまらないという人が多いが、ぼくは逆で、前半の郷愁感や、もっと言えばジュブナイル的な世界観にグッと引き込まれてしまう。この前半が絶対にケッチャム作品にはかかせないんじゃないかなぁと読んで思った。
読んでる側から『13日の金曜日』に『わらの犬』を足したみたいなかっこいい小説だ!と思ってたのだが、巻末のインタビューでは作者がアメリカのスプラッターホラーやゴアフィルムに影響を受けていると語っていた。ホラー映画以前だったら、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』と『わらの犬』の暴力描写に感銘を受け、あれを小説でやってみたかったと(実際『オフシーズン』には煮えたぎった油を敵にかけるという『わらの犬』と同じ描写が出て来る)。
『オフシーズン』は人喰族が出て来るだけあって、人間を喰らうシーンが執拗に描写されるのだけれど、ここが映画化出来ない最大の理由なんだと思う。読んででいぶかしげな顔になってしまうくらい強烈だ。女の人を逆さに吊るして、お股からナイフを突き刺し、そのまま首までかっ捌いて、丸焼きにするとか、ペニスと金玉を切り取って、生のまま喰らうとか(しかも女がそれをやる)、とにかくエグい。
そんな残虐描写が目立つ『オフシーズン』だが、ここで描かれるのは、『わらの犬』同様、暴力の本質と人間の善悪についての物語だ。
前半、登場人物の人となりが、別なキャラクターを借りてじっくり語られるが、後半のバトルシーンでは、その描写を覆すように、全員の人格、行動、発言などがコロっと変わってしまう。「人間は白でも黒でもない、状況によってどっちにもなる灰色の生き物なのさ」とケッチャムは語っているが、6人を通してそれが鋭く描かれていた。
ただ、人間の本質を鋭くえぐる物語よりも、ぼくが強く思ったのは、「人生はクソみたいにうまくいかない」ということ。
続編の『襲撃者の夜』になるとそれが顕著に現れるのだが、「あの時、ああならなければ、こういう結果にはならなかったよなぁ、でもそれこそが人生なんだよなぁ」ということをとにかく主張する。それを運命論とは違う、日常に根付いた普遍的な感覚で描きだすのだけれど、ある種、達観めいたものがスピード感溢れるバトルシーンにかぶさることで、残虐なだけじゃない、深い感動を呼ぶんじゃないかなぁと思ったりした。というよりも、残虐な描写が、それを呼んでるんじゃないかという話も。
その「人生なんてクソみたいにうまくいかない」ということや、「人間は白でも黒でもない、灰色」という肝になってる部分が『ロード・キル』ではさらに大爆発していて、これがまたトンでもない傑作だったのだが、それはまた別の機会に。
『隣の家の少女』の映画も東京で公開中ということで、もしかしたら軽いケッチャムブームがやってくるかもしれない。乗り遅れないうちに読んどけってな感じで、ぼくは激しくおすすめ。今日も夜中まで働くので、人生はクソみたいにうまくいかないと思いながら、これからなおじでラーメン喰って、スタミナつけて来ます。あういぇ。
- 作者: ジャックケッチャム,Jack Ketchum,金子浩
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